第184話 いつものトラブル
タウロとエアリスが冒険者ギルドに到着すると、丁度ギルドから冒険者が一組出てくるところだった。
よく見るとタウロ達『黒金の翼』の対抗意識を強く持つ『漆黒の剣』のリーダーでナイト持ちのナシルス、同じくナイト持ちのイラツーク、盗賊職の上位スキルである追跡者持ちの紅一点ビチナだった。
そこに、後からルメヤとシンの彼女のレンとユウが付いて出てきた。
「……なんかまた、厄介な組み合わせだね……」
タウロがちょっと呆れてエアリスにぼやいた。
どうやら、『漆黒の剣』と一緒にクエストをやるようだ。
意気投合してるようなので、そこがまた怖い。
「関わらないようにしましょう」
エアリスもタウロと同じ事を思った様だ。
「──だから、……うん?これはこれは、『黒金の翼』のリーダーさんじゃないですか!このダンサスの村を数か月留守にしてる間に、我々、『漆黒の剣』はE-ランクに昇格しました。追い越すのもすぐですよ」
リーダーのナシルスが金色の前髪をかき上げながら早速、タウロ達に気づいて絡んできた。
この絡みは『漆黒の剣』がこの村にいついてからずっとだったので、タウロはスルーする事を身に付けている。
「良かったね」
と、言うとそのまま、エアリスとギルドに入ろうとする。
「ちょっと待て!君らが留守にしてる間に黒金に入ってたこの二人を追い出したそうじゃないか、最低だな!前衛の連中も不満らしいじゃないか!」
イラツークが、言う機会を伺っていたのだろう、勢いよく噛みついてきた。
「そうよそうよ!仲間の彼女である女性二人を自分達の都合で、住んでいた家からも追い出すとか最低だわ!」
紅一点だったビチナが追い打ちをかける。
レンとユウは被害者とばかりに、泣く演技をしている。
なるほど、この二人の筋書きでは、そういう事になっているらしい。
形だけでは、微妙に合っているだけに、タウロも否定する気にはなれなかったが、ここまで言われて放置してると冒険者ギルド内で聞き耳を立てている他の冒険者達に誤解を与えかねないので反論する事にした。
「そもそもそっちの二人組が、僕達が戻る間だけ家を借りていただけだよ?戻ったから移動して貰った、それだけなんだけど?なぜその話が拗れて君達の耳に入ったのかは追求しないけど一方的に、片方の意見だけを鵜呑みにして他人の問題に口を出すのは感心しないよ?」
「そうよ!それにそこの二人組は勝手に『黒金の翼』のマークを使用し、リーダーのタウロの許可なく名乗っていた時点でどっちが正しいかなんてはっきりしてるじゃない!…まあ、放置してたシンとルメヤにも責任の一端はあるけど……」
タウロの正論とエアリスの尻すぼみな追い討ちで、『漆黒の剣』は何も言えなくなった。
レンとユウも旗色が悪いと思ったのか黙って反論しない。
「じゃあ、この問題は解決でいいかな。勘違いしてたみたいだから、僕達もこれ以上は君達を責める気はないよ」
いつも都合よく解釈するナシルスもこう言われると、言い返せないらしく黙り込んで、これから一緒にクエストをする二人組に視線を送る。
レンとユウはその向けられた視線から目を逸らすのだった。
「じゃあ、クエスト頑張ってね」
タウロは『漆黒の剣』にそう言うとギルドに入って行くのだった。
ギルド内に入ると、冒険者達が突如ざわざわし始めた。
やはり聞き耳を立てていたらしい。
「みなさん、お騒がせしました。今日からまた、『黒金の翼』をよろしくお願いします」
タウロが頭を下げると、エアリスも慌てて頭を下げる。
「おう!お帰りな!てっきり、チームを抜けたのかと勘違いしてたぜ!」
「本当そうだぜ!」
「戻った早々、災難だったな!がははは!」
「俺は二人がよその国に逃避行したと聞いてたんだが違うのか?」
「馬鹿、それ、酒の席での冗談じゃねぇか!」
「俺は、夜逃げだって聞いてたぞ?」
「それ、『嘘つきのソウ』の奴のでまかせだよ!」
どうやら、留守の間に冒険者の間で酒の肴にされていた様だ。
あの時は急いでたからこうなる事は予想のしようもなかったが、こうなるまでシンとルメヤは放置してたのかとちょっと呆れた。
そう言えば、たまに送っていた手紙はどうしたんだろう?この感じだと読んでいなかったのだろうな、と思うタウロであった。
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