第133話 山村の名物作り
タウロは村長の許可を取り、村の中を見て回らせて貰った。
村の奥には斜面に洞窟があり、そこを塞いで出入り口を設置し、保存庫として利用していた。
今は保存するものがほとんど無くてがらんとしているが、一年中温度が安定しているらしく、とても使い勝手は良いそうだ。
「この壺は何が入ってるんですか?」
タウロが保存庫の奥にあった壺に目が止まった。
「これは、お酢です。その横にあるのが、ほとんど家畜の餌ですね」
「お酢を作ってるんですね。あ、それにお米がある!ここでも、家畜の餌扱いなんですね」
タウロがこちらの世界でのお米の扱いがまだ低い事に残念がった。
「お酢は保存食を作るのに使えるのでこの村では作ってます。米は家畜の餌として沢山安く仕入れているのでまだ、これだけ余ってます」
バンディが米を覆っている藁布をめくって見せた。
「このお米、美味しく食べる方法があるので、後でお教えしますね」
「家畜の餌を食べるんですか!?」
バンディにしてみると、先程のジャガモーもだが、食べ物から除外してたものをタウロが勧めてくるので、正直困惑していた。
「ええ、まあ。あ、じゃあ、家畜は何を飼っていますか?」
タウロはバンディの困惑に気づいたが、あとで調理して食べさせないと理解が追いつかないだろうと思い、一旦スルーした。
「あ、はい。一応、村全体の所有は山モーモー五頭、これは、乳を取る為なので食肉用ではありません。主にチーズを作る材料にしてますが村で消費してます。あと、山シャモ二十羽、これは卵を取る為なのでこれも食肉用ではありません」
山モーモーは前世で言うところの牛だが、この山モーモーはもっさりした毛に覆われているが、お腹の部分には毛が全く無く、乳を搾る為にもっさりした毛もお腹にかかるところはあらかじめカットしてある。
山シャモは前世の鶏の事だが、こちらは見た目は鶏のまんまだが、トサカが山シャモ特有の緑色だ。
自然に溶け込む為の色なのだろうか?
「お酢に卵に……、植物油はありますか?」
「ええ、油は少しですが、村で作ってますけど?」
「わかりました!」
タウロが考えたのは、この村の特産品作りだった。
トメート(トマト)や、トモロー(トウモロコシ)、カラシン(カラシナ)もうまく栽培できれば、売れるだろうが、ひと手間かけて、この村のものでないと!と思わせれれば最高だ。
そこで考えたのが調味料だ。
カラシンはマスタードの原料になる、そして、卵と、お酢と油、これでずっと奥の手として残していたマヨネーズが作れる!
マスタードとマヨネーズを合わせてカラシマヨネーズにもなるし、色んな料理にも使えるはずだ。
前世ではマヨラーではなかったが、マヨネーズが嫌いな人はそういないはずだから商品化すれば絶対売れる自信があった。
タウロの提案に村人達はいまいちピンときてなかったが、商人であるリーダはタウロの提案なので期待感は大きい。
この山村はオサーカスの街に行く途中なのだから、必ずうちの商会が立ち寄ればいい。
その時に仕入れてオサーカスの街で売る形が出来れば、うちの利益が上がる事になる。
村人と商人の思惑を他所にタウロは村長宅で台所を借りると、ジャガモーを蒸かしたものや、短冊切りにして油で揚げたフライドポテト、ついでなのでタウロが薬草採取で培った目で山菜も集めるとお米を潰して作った米粉で天ぷらを作った。
お米も炊き、塩むすびにし、マヨネーズも作って蒸かしジャガモーに添えた。
簡単な調理だが、集められた村人達にもわかり易かった。
タウロが食べる様に薦めたが、ジャガモーは毒があるというのが常識だったし、天ぷらはただの雑草という先入観が村人にはあって手を付けようとしないので、タウロがまずマヨネーズをつけて蒸かしたものを食べてみせた。
「美味しいですよ。このマヨネーズを付けて食べてみて下さい。フライドポテトも塩を振ってあるのでそのままでも食べれますし、マヨネーズをつけてもいいですよ。お米のおむすびは塩を振った山菜の天ぷらをおかずに食べてみて下さい」
村人達は、中々手が出なかったが、若者達のリーダーのバンディがタウロを信じて最初に手を付けた。
「……ジャガモーがホクホクで、このマヨネーズがそれに合って、もの凄く美味しい!」
続けてフライドポテト、天ぷらと塩むすびも食べてみた。
「どれも美味しいぞみんな!この天ぷら、ただの雑草だと思ってたけど、サクサクしてほのかな苦みが癖になる!お米もモチモチとしてほのかに甘く、腹持ちが良さそうだ!」
村人達はバンディの言葉を信じて、食べ始めた。
一口食べると村人達はその美味しさに驚き、口々に前向きな感想を漏らすのだった。
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