第127話 尋問からの……
尋問室に連れていかれた沈黙の男は部屋に入ると、
「先に話した方が助かるんだよな!?ほな話すから、その前に減刑する事をまとめて契約書にしてくれや!」
と、急にしゃべりだし、要求してきた。
命が惜しくなったというより闇耐性の男がしゃべるかもしれないという不信感が強い様だ。
その程度の関係性という事だろう。
タウロは尋問室の横の部屋から小さい窓の様な大きさの格子越しに尋問室の様子を見せて貰う事になった。
本当なら尋問に関わりたいくらいだったが、さすがに子供にそんな事はさせられないと却下されてしまった。
じゃあ、見るのはいいのかと思うのだが、そのツッコミをいれると絶対見る事も出来なくなるので大人しくしておく事にした。
エアリスもそれを察したのか静かであった。
「俺らは人攫いの現場リーダーのルヒに声をかけられて雇われた。ルヒは元冒険者で噂では元Cランク帯だったと言われとるねん」
「Cランク帯!?」
警備兵達はどよめいた。
責任者が、どよめく警備兵を注意して静かにした。
「それも、Bランク帯になる話もあったが素行の悪さで冒険者ギルドから永久追放になったって話や。ともかくルヒはヤバい野郎やねん。仲間にも容赦ないのは現場にいたガキもわかってるはずや」
格子の先からこちらを見てるタウロ達に視線を送りながら証言した。
「そのルヒの事はわかったわ。じゃあ、雇い主は誰やねん」
責任者は本題に斬り込んだ。
「それはリーダーのルヒしか知らんはずや。ただ、この街で商売してる奴だとルヒが酒の勢いで漏らしてた事がある」
「攫った子供達はどのくらいやねん?」
「まだ、八人や。数が集まったら船に乗せて国外に運ぶ手筈らしいねんけど、まだそこまでは知らされてへん」
「子供達はどこに閉じ込めてるん?」
「港の貸倉庫をルヒの名義で借りとるけど、もう引き払ってると思うで」
「お前達、至急、向かうで!」
責任者は、部下に命じるとタウロ達を他所に急いで詰め所を後にした。
「そのルヒという人は、この街のどこの出身者ですか?」
タウロが格子の窓越しに尋問室の男に質問した。
「貧民区だと思うが、それがどうしたっちゅうねん?」
「いえ、ほとぼりが冷めるまでじっとしてるなら、自分がよく知ってて警備兵が滅多に来ない場所に逃げ込むと思ったので。貧民区ならその場所として適してますね」
残っていた警備兵がはっとして、視線を交わした。
八人もの子供を急遽隠せる場所は限られる。
雇い主のところはまず、危険過ぎてありえない。
貧民区なら、警備兵にわざわざ訴えるまねをする者はほとんどいないだろう。
自分もそういう場所に数年居たからわかる。
あそこは後ろ暗い者にとっては良い場所だ。
逃げ込むのにも丁度よく、出身者なら申し分ない。
「エアリス、僕達も出来る事をしようか」
「助けに行くの?」
「さすがに僕達だけで乗り込むのは無謀すぎるけど、ルヒの顔を知ってるわけだし、見張って発見できれば警備兵さんに通報できるでしょ?」
「わかったわ。シンとルメヤも呼ぶわね」
エアリスは善は急げと詰め所の外に出ると、空に向けて雷魔法を派手に放った。
続けて火魔法を二度放つと空中で花火の様に破裂させた。
タウロが、この広い街で離れ離れになった時、場所を知らせるのにエアリスを目印にしようと考えた方法だった。
エアリスの行為に近くにいた人々はどよめいたが、
「あんた目立つ事するやん!」
「私も魔法使えるなら、やりたいわー」
おばさん達が、感心して寄ってきた。
エアリスがそのおばさん達の相手をしてる間にシンとルメヤが息を切らせて走ってやって来た。
「本当にやるとは思ってなかったから、驚いたよ!」
「説明されたの昨日だぜ?マジでびっくりだよ!」
シンとルメヤはど派手な合図に笑いながら待っていたタウロに感想を言うのだった。
タウロはシンとルメヤに事情を説明すると、二人は納得した。
「じゃあ、行くよ、エアリス」
おばさん達に囲まれているエアリスに声をかけると四人は貧民区に向かうのだった。
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