第60話 全滅寸前…

 すぐにタウロは村に戻って待機するボブに知らせた。


「ナイトが単独で今、食料を探して森をうろついてます。チャンスです!」


「お、おう!ついに来たな」


 いざその日がくるとボブも緊張したが、タウロにゴブリンナイトのいるところまで案内される間にその緊張も解けた。


「あそこに居ます」


『気配察知』でナイトの居場所はすぐわかった。

 木の実を取ろうとしてるのか木に登ろうとしていた。


 二人は目配せをして頷くとタウロは矢を射、ボブは斬りかかった。


 タウロの矢は鉄の鎧に妨げられ鉄の甲高い音と共に弾かれた、やはり威力は子供のそれだった。


 頼りのボブの剣はゴブリンナイトが手にする小さい盾に紙一重で防がれた。


「じゃあ、これなら」


 タウロは精霊魔法を唱えると闇魔法で靄を発生させるとゴブリンナイトの視界を一時的に奪った。

 ボブはチャンスとばかりに左肩の鎧の間に剣を突き刺した。


 ギャッ


 ゴブリンナイトは悲鳴を上げよろめくが、剣を振るってボブと距離を取った。


 畳み掛けようと、タウロも小剣を抜き放った時だった。


 うん?背後から何か急速に近づいてくる!


 タウロは『気配察知』で気づくとふり返る。


 シルエットに見覚えがあった。


 ゴブリンソーサラーだ!


「ソーサラーがこちらに来てます!」


「え!?」


 ボブがこちらに意識を取られたのをゴブリンナイトは見逃さなかった。


 上段から鉄の剣をボブに振り下ろした。


 うわっ!


 左肩から右わき腹にかけて斬られた。


 タウロは間髪を入れず、血飛沫を上げて倒れるボブにポーションの中身を投げると同時にゴブリンナイトに駆け寄り、小剣を正面に構えると下から鎧の隙間を狙って突き上げた。


 だが、ゴブリンナイトはその攻撃を盾で辛うじて防いだ。


 しまった……!


 やはり非力な自分では攻撃が簡単に防がれる。


 ゴブリンナイトは命を取ったとばかりに飛び退るタウロに距離を詰めるとお腹に剣を突き立てた。


 タウロは剣をお腹に刺され、内臓を傷つけられた事で血を吐いた。


 手に伝わる感触にゴブリンナイトは勝利を確信した。


 だがしかし、タウロはこの絶体絶命な瞬間を狙っていた。


 力を振り絞り小剣をゴブリンナイトの喉に突き立てたのだ。


 ゴフッ!


 油断していたゴブリンナイトは躱す事が出来ず、致命傷を受けて絶命した。


「めちゃくちゃ痛い!」


 タウロは座り込むとお腹に刺さった剣をすぐに抜くが、痛さにのたうち回った。


 そこに、ゴブリンソーサラーが現れた。


 ゴブリンソーサラーが目撃した光景は、自分の右腕であったゴブリンナイトが絶命し倒れ、大きな人間も仰向けに倒れ、小さい人間はのたうち回っていた。

 そして、その小さい人間のお腹に空いた大きな傷が塞がっていく光景に驚いた。


「バケモノ……!」


 ゴブリンソーサラーにバケモノと言われたタウロだったが、これは牢獄から奇跡的復活を遂げた際に得た能力『超回復再生』だった。


 痛みに涙を流していたタウロだったが、ゴブリンソーサラーにバケモノ呼ばわりされた事に心でも涙を流した。


 苦労して手に入れた立派な能力なのに……。


 ショックは尽きないが、ゴブリンソーサラーがショックを受けて呆然としてるのはチャンスだ。


 早く傷治れ!


 激痛にタウロも動けない、時間が欲しかった。


 タウロは側に倒れるボブにさらにポーションを投げかけて治療すると同時にゴブリンソーサラーに闇魔法で視界を遮る。


 ゴブリンソーサラーはそれには構わずタウロに向けて火魔法を唱えた。

 タウロはその飛んでくる火球を転がって紙一重で躱した。


 危ない!


 タウロは精霊魔法による土魔法『石礫』で攻撃した。


 石礫はタウロの『精密』を活かした攻撃で正確に頭部に直撃し、軽い脳震盪を起こしてふらつかせた。


 タウロはまた、念の為ボブにポーションを再度投げかけると転がり続けてボブと逆の方向に移動した。


 ゴブリンソーサラーにかかった闇魔法は数秒で解けた。

 見ると小さい人間が転がって逃げようとしているのがわかった。


「ニガスカ!」


 今度は土魔法を唱えるとタウロのいる地面から岩の槍がタウロを突き刺そうと次々に生えてくる。


 タウロは続けて転がり続けて躱すと、


「よし、痛み引いた!」


 と言うと立ち上がりまた、石礫をゴブリンソーサラーに投げつける。


 だが、ゴブリンソーサラーは予測してたのか簡単に躱した。


 立て続けに飛ばすがやはり躱した。


「コンドコソアテル!」


 ゴブリンソーサラーが火魔法を唱える。


「そこまでだ……!」


 ゴブリンソーサラーの背後にボブが立っていた。

 言うと同時に振り向く猶予も与えず、ゴブリンソーサラーの首は宙を舞っていた。

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