第19話おっさんの本能とスパルタな師匠

 ★師匠宅


 今日の分のスライム10体を狩り終え、師匠の元へと帰る。


 スライム討伐の件は良いと言うまで内緒だそうです。

 かなり念を押されましたからね。言わないでおきましょう。


 そういえば魔石は換金すると、師範が回収していきましたが、あれを持った時『融合』に反応があったんですよね……。

 まぁいずれ試してみましょうか。


「師匠。勇者のヒジリくんが、急に魔法を使うようになっていたのですが、勇者って急に魔法が使えるようになるのですか?」


 今日の訓練中にふと疑問に思った事を聞いてみる。


 考えられるのは、勇者万能説ですね。

 元々全属性を使える勇者が「これが俺の力か!」というセリフとと共に自分の力を認識して、あっという間に全属性使えるようになる。異世界物では定番ですね。


 あとは魔道書でしょうか。

 一回読んだら二度と読めなくなる魔法の本。

 それを読めばどんな人でも魔法使いに。これもテンプレですね。


 それとも王道でしょうか。

 この世界のルールに則り。魔法のスキル持ちに師事して魔法を教わる。


 んー。でもこれは違うような気がしますね。

 これならば、同じタイミングで複数の属性を使えるようになるとは考え辛いです。


「ん?魔法かい。勇者ヒジリとやらの。あやつらスキルブックを持ってったからの。まったく気に食わんよ。あんなんでお手軽に覚えさせて何になるんだい。邪道じゃ邪道。」


「スキルブックですか?」


「あぁスキルブックさ。ちなみにそれが私がここにいる理由さね。スキルブックは強制的に師弟関係、指導、実践を省略して魔法スキルを取得させる本さね。それこそ只の人にもね。作れる者は少ないからね。私が呼ばれたんだよ。 基本属性4つと光属性の5属性だね。あーやだよやだよ。」


 なるほど、理解できました。


 正解は2番だったみたいですね。

 しかも複数の属性を一気に取得できる魔道書ですか。

 そんなもんを作れる師匠の方が驚きですが。

 それならば私も使えば魔法を使えるんでしょうかね。


 くれませんかね……


「まだあんたにゃ早いよ。」


 おや?また顔に出てましたか。

 そうですよね。くれませんよね。邪道っぽい感じでしたし。


「ろくに魔力操作もできないうちはね。楽して覚えた魔法なんて、極められるものじゃないのさ。結局は才能があるから力押しで何とかなっちゃいるがね。魔法がなんたるかも分かっとらん者が、スキルという補正の力で使えるようになっただけだからね。あんたにゃその辺バシバシいくからね。楽はさせないよ。」


「はい。師匠。よろしくお願いしますね」


「そうじゃ。その意気じゃ。私に任せななのじゃ。」


 のじゃっ娘師匠が椅子の上に乗り、腰に手を置き胸を叩く。そうしないと私より小さいですからね。危なく頭を撫でそうになります。我慢です。我慢。


 いや実のところ失礼とは分かっていましたが、一回だけ本能のままに撫でたら、真っ赤な顔して部屋を出て行ってしまったんですよね。


 それ以降、必ず胸を張る時にはこんな感じで、高い所に立って胸を張るようになってしまいました。


 残念です。


 顔真っ赤にして、ほんと可愛らしいのに。


 それにしても、どうやらうちの師匠はスパルタのようですね。この後がさらに大変そうです。


 あと9日しかありません。生き残る為です。頑張りましょう。


「では今日は昼を食べた後は、魔物についての講義じゃ。」


 毎日の実施される師匠の講義。

 この内容は、薬草の判別方法から種類、調合の仕方から始まり、周辺国家と種族とこの国【アルグレント王国】の関係。そしてスキルについてと多岐に渡り私の常識を常識以上の教養によって埋めていきます。


 まあ国家と種族については、さし合ったって関係はなさそうなので、今は控えましょう。


 魔子族や小人族がいるくらいですからね。

 いますよ。

 エルフやドワーフ。龍人に獣人。

 ちなみに、オークやオーガなどの人型の所謂モンスター類はこの世界でも魔物の部類だそうです。


 魔物=敵みたいな感じだそうです。

 ただ数は少ないですが、魔物使いや、召喚師などの使役モンスターもいるのでその辺はちゃんと従魔の証を確認が必要らしいですが。


 そして今日の講義は、魔物についてですね。


 魔物

 それは、魔素の濃い場所に発生する魔の者を指す。

 これらは例外はあれど一様に瞳は紅く、体内に必ず魔石が存在する。

 これは核、やコアなどとも言われ、通常魔物の弱点ともなり得るが、冒険者にとって魔石が最も高値で取引されるためここを破壊して倒すスケルトンやスライムなどは実入りが少ないと討伐の依頼は、人気がないらしい。


 スライムですか……。

 あれ?魔石残して倒しましたけど?やはり貴族のご子息のLv上げ用の魔物だから弱いんでしょうね。


 そして魔物には進化個体も存在する。

 ゴブリンで言うところの、ホブゴブリンやゴブリンソード ゴブリンメイジ ゴブリンジェネラルやキングと言った者がそうだ。

 ある一定の魔素を吸収した個体は進化し、格段にステータスが上昇する。

 ちなみに、魔物にとって人間は非常に濃厚な魔素を有しているハイリスクハイリターンな相手らしいです。


 私なんか魔物にとっては、ボーナスステージですよ。


 まったく。

 ホントにこの世界は私に厳しいですね……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る