第10話 おっさんのオリジナルスキルと胸張る師匠

「それにしても、『融合』持ちなんて200年振りくらいかね。久々に持ち手が現れたよ。まったくこの国の奴らは、ろくな事をしやしない。」


 どうやら師匠は、『融合』持ちという話を聞いてからすぐに《魔子族》に伝わる資料を探してくれたらしく、そのスキルの特性上、酷い目に合うだろうと予想してくれていたらしい。

 本当に良い師匠ですね。見た目は幼女ですが。


「あの。師匠。実は気になっていたのですが、私の『融合』も勇者である誠道くんの『聖剣』にもLvの記載がなかったのですが……。どう言う事でしょう」


 先程疑問に思った事を聞いてみると、師匠はそう言えばと言う表情を浮かべ説明を続ける。


「おぉそうじゃったな。その説明もせんとな。Lvの記載のないスキルは、その者のオリジナルスキルと言っての、通常のスキルよりも強力で、それだけは教えても取得させる事はできんのよ」


 おぉなるほど。たしかにスキルを引き継がせることのできるこの世界で、『聖剣』なんてスキルが量産なんてされたら世界が崩壊しかねないですね。


 はて…みんながみんなオリジナルを持って生まれるのでしょうか?


「ふふ。ヌシは顔に出やすいのう。全員が全員オリジナルを持って生まれるわけではないさ。普通にLv付きのスキルを先天的に与えられる者の方が多いの。ちなみに私も持っておる。内緒だがの。」


 そう言って悪戯をした子供のように師匠は笑う。


「顔に出てましたか。なるほど師匠もオリジナルスキル持ちなんですね。しかし、オリジナルスキルなんて周囲にいないような状況で、どうやって使うんです?私達は当たっているかは別にして、他者から教えてもらったわけですし。」


 例えば農村や辺境の地など、調べる手段がないときはどうするのだろうか。まさか儀式の担当者が全てを把握しているわけでもないでしょうに。


 ただ。思い当たる節はあるんですよね。私の『融合』もそうですが、薬草と水を持った時、これは融合できるなと感じるあれです。

 “直感”と言うのでしょうか。ビビッとこう脳に刺激がくるといいますか。んー難しいですね。


「その答えはもう出ているんじゃないのかい?」


 む。また顔に出てましたかね。ほんと鋭い師匠です。


「何となくですが、スキルを使うのに直感のような物が働くのではないかと推測していますね」


「なんだ。正解じゃないか。つまらない弟子だねぇ。そうさ。オリジナルスキルはそのスキル名さえ知っていれば、意識すれば何となく発動する条件が閃くのさ。だから勇者は聖剣を生み出せるのじゃよ」


 なるほど、そう言う事でしたか。

 それならば、これからもっと自分のスキルを理解できるようになると言う事ですね。


 さすがに、薬草と水の組み合わせだけだったらどうしようかと思いましたが、まだチャンスは残っていましたか。


「それよりもじゃ。ヌシはまだ魔法の一つも使えないからね。さっき言った通り少なくとも魔力操作は完璧にしてもらうよ。そうしなければ基礎の魔法すら使えないままだ。どうだい。結構厳しいが魔力の特訓を受けてみるかい」


 そう問い掛ける師匠の右手がポッと光を帯びる。

 その瞬間。淡い光が、師匠の右手から腕を通過し左手に移る。

 先程まで見えなかった魔力であろう力。それが途中右手に多く集めたり、足だけに集中させたりと。光の強弱で視認される。


 これが魔力操作。


 さすが見事なものですね。移動に一切の淀みがありません。早くこうなりたいものです。


「はい。よろしくお願いします」


 基本的に師匠が勧めてくれた事は、断るつもりはない。

 私の為に考え提案してくれているのだから。断る方がもったいないと言うものです。


「何だい。素直だね。厳しいと言っているんだから、少しは躊躇したらどうなんだい。ではその覚悟に免じて、これから特訓の開始と行こうかね。時間。ないのじゃろ?」


 そう言われ、始まりましたが実際何をするんでしょうか。師匠は立っていた椅子からおりて少しスペースのある場所へと手招きした。


 室内でも出来る訓練だとは思うのですが。


「さて。これが見えるかい。今私は、全身に魔力を回している状態さね。さっきのとは違い色はつけてないがね。何か視えるかい?それとも何かを感じるかい?音でも、匂いでも何でもいい。五感六感に訴えるものはあるかい?」


 そう言って師匠はこちらを見ますが、正直何も感じません。ただ足を肩幅に開き手を横に“大”の字で立っている。

 まさにハグを求めている幼女の姿しかありません。うん歴代の勇者には見せられない姿です。


 本当に何かやっているのかさえ疑わしく思えるほど、何も感じないですね。


「ふむ。なる程のやはりそのレベルかね。となると無理矢理やるしかなさそうだね。おそらくだがヌシと一緒にきたヒジリという少年ならば、視る事も感じることも出来るだろうね。それが輝度の違いさ。」


「すみません。師匠」


「何謝ってるんだい。現状の客観的事実を述べてるだけじゃないか。視えないなら視えるようにすればよし。感じられないなら感じられるようにすればよし。何も問題ないよ」


 自信満々に胸を張る師匠。小さな子が威張っている感じで可愛いですね。


「むっまた余計な事考えおって。何じゃその父親が子を見守るような目は!私はヌシの師匠であり、歳上の保護者じゃぞ。まったく」


 すみませんね師匠。

 私が卑屈にならないのは、この人のお陰なんでしょう。

 この人が出来ると言うのなら出来るそれだけです。


 私はそれを信じるだけです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る