3

 魔王という存在を知っているだろうか?

 奴は神をも超越した力を持ち、今も人類を脅かそうとしている。

 そしてそんな魔王が認め、部下を持つ事を許された幹部の存在。

 魔王ほどではないにせよ、偉大なる騎士が束になっても赤子のように足払うことができる力を持つ。

 そんな幹部の内の一体が率いる魔王軍は今__


「えーと、ドローン視点視点っと……、お! 繋がった」

「うわぁ……城内パニックじゃない……」

 

 俺が作った爆弾ドローンによって全滅の危機に晒されていた。


「いやしっかし我ながらすごいもんだなぁ。見ろパソコンに映されし映像を。ドローン全てに火薬と火属性の魔法石を8と2の割合で自爆システムに組み込んだら、魔法防御の結界関係なく焼き殺しちゃってるよ」

「た、大した結果にならないと思ってたのに……これ異常すぎない?」


 一機一機が爆破し、窓から太い火柱が出てくるたびに、俺の側にいるエクレシア達の顔が青ざめてく。

 今の状況で言えば、古城のあらゆるフロアにて、俺達が解き放ったドローン達の自爆特攻に魔王軍はドローン達に対して攻撃を開始。

 鎧モンスターの剣による斬撃。

 ローブまとったモンスターによる魔法攻撃。

 アンデッドモンスターの捕食と、色々とやってきたよ。

 けど触れた瞬間爆発して、誘爆対策したドローン達を除いた全てのモンスターが一方的に燃やされ灰と化している。

 中には自身に防御結界をかけ、弓矢で攻撃するモンスターもいたが、節約のために火薬も混ぜたのが影響かわからないけど、爆炎が結界を透き通ってモンスター全員を焼き殺していく。

 意外な発見だなって我ながら呑気に考えてたよ。


 剣と魔法しかないこの世界で、チリらの種族の高度な科学技術を用いて作成した俺のドローン爆弾で魔王軍幹部を倒す。

 なんかこそばゆい気分だ。

 そんな俺の思いをよそに、エクレシア達に続き、ネコマタまでもが震えだした。


「なんやねん……儂に向け撃ちまくった変な鎧小手といい、城に放った小さい鉄塊といい、おまんは悪魔かいな??……儂がまだ天界でバリバリ働いとったら、ツクルはんは間違うなく最重要討伐指定人に認定するで……物騒という概念を超えとる……!」

「まあ、ここまで雑魚を蹴散らせば問題ねえか。よし、次は各フロアにいる中ボス共を爆殺するとしようか。進路をこうこうこうっと」


 ドローン達に中ボスがいる各フロアに向かう最中、偶然鉢合わせたモンスター達が泣きそうな顔で逃げ出していく。

 まあ、恐れを知らないうちのヒロインズが見てるだけで涙目でビクビク震えてるのを見れば逃げたくもなるわ。そんな顔にもなるわ。

 ちなみに正門や窓、至るところから青ざめた魔王軍が飛び出して来るが、空中には機動機関銃を装備したドローン、陸には自動機関銃を配置させてるため、出てきた瞬間全員蜂の巣にして倒している。


 __やがて一部のドローンが例のフロアに到着した時……。


 玉座もどきっぽい椅子に座っている、強者オーラ溢れ出してるオーガを発見した。


 全長も3メートルほどあり筋肉質。

 今までの連中と違う空気を醸し出すからして、まさに中ボスにふさわしい感じだ。

 画面越しでわからないが、そのオーガは何か呟いた後、ドローンに向かい悠々と歩いて行く。

 そして距離が数メートル付近になった瞬間、全てのドローンの映す箇所がバラバラになった。

 おそらくオーガは、目に見えない速度で何かしたんだと思う。

 すべてのドローンの視点が一気にズレたことを考えると、回し蹴りか?


 ……っと、俺達に考える余裕すらなくドローンは全て大爆発。

 オーガは消し墨になった。


 ……よし、次にいこう。


 無言で他のドローンの視点に映し変えると、もう一つのフロアに到着。そのフロアの奥に。


__似たような玉座もどきが置かれており、そこに今度は騎士感溢れるデュラハンが座っていた。


 見るからして、漆黒の鎧で身を固めており、見るからして何人もの戦士達を、肩にぶら下げている大剣で斬り落としてきた感がプンプン感じる。

 デュラハンはドローンを見つけた際に椅子から立ち、怒り震える手で大剣を抜き持ち。


『………、……………!! ………………』


 怒り任せにベラベラと喋り……って言うより怒鳴ってるのか?

 パソコンに移されているモニター越しのため聞き取れない。

 マイクやスピーカーでもつけとけばよかったかしら?

 それはさておき、俺はこの隙を突くように一機のドローンを手動操縦に切り替え、こっそりと鎧の内部に潜ませた後。


 ……どかーん!! っと爆破させ、デュラハンは鎧の破片だけ残し消しとんだ。


 「ククク…… 計画通りッ!!」

 「本当の魔王って、こいつじゃない?」


 アリスの一言と、みんなの視線が、超痛々しいです。


 ……と、とにかく中ボス二人目も倒し、最後のフロアに到着するドローン達。


 __そのフロアの玉座椅子に座っていたのは………見た目を確認せずにドローン達の特攻によって爆殺する。


「どうせまたあっさりやられるんだから瞬殺しといたとして、後は柱全部爆破してヴァンパイア幹部ごと魔王軍全員城に生き埋めじゃ!!」

「「「「お、お気の毒に……」」」」


 失敗した時のために中ボス全員倒したことで、残ったドローン全てを、本来の目的である古城を支える五本の柱へ均等に向かわせる。

 そしてある程度のドローンが柱に張り付いた時、魔物達は恐慌状態に陥った。

 モニター越しでは聞こえないが、魔物達が言っていることは大体わかる。

 

 __冒険者どもめ!! なんつう物騒な物を置いていったんだ!?

__柱が爆破される!! あれを止める術なんかあるわけない!! 早く逃げないと!!

__っていうかなんなんだあの虫の大きさ程度の兵器は!? なんで魔法結界さえもすり抜けることができて上級魔法並みの威力の自爆を!? 人類の魔道具舐めてたわ!!

__お、お家に帰りたいぃぃぃ!! お母さーーーーん!!!


 ……とでも言っているに違いないだろう。


 ある程度ドローン達が張り付いたところで、俺は自爆スイッチを取り出し。


 __無言無表情でカチっと押したのと同時に城が大爆破。


 空に向かって火柱が上がり、消えた時にはその場は石炭の山に近い状態に変化していた。


「……本当に木っ端微塵になっちゃったわね」

 呆然としているアリスと、仏顔のまま無言のネコマタ。


「これが本当の、邪神の一撃かもしれません……」

 命乞いするかのように涙目で俺に祈りを捧げてるイリス。


 目を真っ白にして思考停止中のエクレシアに、耐性がついたのか地下手に寝転び◯SPで遊んでいるチリ……。

 このカオスな空気をどうにかしようと考えてたら、石炭の山と化した古城の残骸から生き残ったモンスター達の腕や顔が生えて来るのを見たため、迎撃用のドローン全てをモンスター達の中央に移動させ。


「……ポチッとな」


 俺はすぐさま自爆スイッチを押した。

 押した瞬間、全てのドローンが徐々に赤く発光していき。


「「「もう勘弁してくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」」」


 泣きっ面の魔物達の降参宣言と共に大爆発。

 石炭の山とかした城ごと、跡形もなく消し飛んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る