第55話 俺の相談役に幼馴染はいらない。


バスケ部が緊急ミーティングをすることになったらしく、なぜかそれに呼ばれない俺、望美、亜香里以外は、昼休みに体育館に集合させられたらしい。


望美は重症なようで、まだ俺を直視することができないらしい。柊にそう言われた。昼休みはとことん二人で恋バナするらしい。


そしてなぜか薫に妙に気を遣われて、俺は屋上で亜香里と二人で、購買で買ったパンを食べていた。


「お兄は早く、わたしにちゃんと告白するべき」


「昨日はどうかしてたんだ。許してくれ」


「むー。最低な言い草だけど、確かに昨日はお兄、変なテンションだった。わたしに、気を遣った?」


こいつはエスパーか何かだろうか。


「おまえも昨日、真也さんに対して怒ってたよな。珍しい」


「お兄、ちゃんと答えて?」


「あー。・・・そりゃ遣うよ。あのまま何も亜香里に相談しないで五橋家に行ったら、おまえは勘違いすると思ったんだ」


「勘違い?」


「おまえの両親に、望美をくださいって言う流れだっただろ?亜香里がそう勘違いをすると考えた俺は・・・うん。おまえを悲しませたく無くて、咄嗟にあんな告白をしたんだ」


「結果、わたしは傷ついた」


「すまん」


「お姉と付き合ってもいないお兄が、娘さんをくださいなんて言わない」


「だよな、だからすまん」


「わかった。一度だけ許してあげる。でも、お兄、しっかりしてよ。お姉に同じようなことをしたら、いくらわたしでも許さない」


そう言った亜香里の、少しの怒りを込めた瞳。


「お兄のこと、全て受け止めてあげたい。でも、ダメ人間を作ってる自覚はある。


だから、わたしはお兄の相談役を辞めたい」


「おう。俺も、いつまでもおまえに頼ってたら、嫉妬癖直らなそうだからな。そうしてもらっても、いいか?」


「お姉を救って、お兄はちょっと自信ついたみたい。昨日と大違い」


「うん。昨日までの俺は、必死だったけど、それだけだった。今はちょっと思考がクリアになった気がするわ」


「そう。じゃあ、クリアになったお兄に言うね。わたしと、付き合って」


「前に言っただろ?俺は・・・」


「お姉がポンコツのうちに、わたしがお兄を強奪する」


「ほんと抜け目が無いな」


「こんなやりとりを、お兄とずっとしてるだけで、亜香里は幸せ」


亜香里が悲しそうに笑う。幸せって言ってるのに、何でそんな顔すんだよ。


「だけど、わたしは欲張りだから、きっと、もっともっと、お兄を欲しくなる。だから、今のままじゃ、ダメ」


うん。そりゃあそうだ。幸せを噛み締めたって、目に焼き付けたって、ちょっとしたことですぐに忘れてしまうから。


だからちゃんと誰かと一緒になって、幸せの上書きを続けないといけない。


「だから、ちゃんとね、お兄。約束だよ?」


「もう後に引けないな」


「情けないこと、言わない!」


俺は亜香里とこの日、こいつと最後になるかもしれない約束をした。


屋上の風が強くなる。次にここに来る時は、告白する時なのかもしれない。そう思いながら、手に持った牛乳パックを潰した。













ーーーーーー


作者より。批判、重々承知です。

最低の告白の件、いらないんじゃないかと思う方、いると思いますが、主人公の若さと成長の対比で使いたくなりました。

それでは、今後も宜しくお願い致します。







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