第27話 ※亜香里視点 わたしの過去


「お姉、みんな、待ってよぅ。置いていかないでよぅ」


小学一年生の時、わたしは口下手で、ドジで、お姉ちゃんとその友達と遊んでも、いつもわたしだけ独りになってしまっていた。


お姉は二人きりで遊ぶ時はずっと一緒にいてくれる。だけど、お姉は人気者だ。だから色んな友達と遊ぶ。わたしは仕方なくお姉について行くのだけど、


「おせーよ。先行くからな」


「あっ、待ってぇ〜」


大抵、取り残されるのだ。


お姉が盗られるなら、友達なんていらない。そんな風に思っていた。


そんなある日、いつも通り取り残され、泣いていたわたしに話しかけてくる男の子がいた。


それが水谷颯人。わたしの幼馴染。


「あかり!ったく、しょうがねぇなぁ」


「えーん、はやちゃーーん」


どんなにわたしが転んでも、起き上がるまで待って手を差し伸べてくれた。わたしは嬉しくて、ずっと颯人と一緒にいるようになった。


「おまえ、ずっとおれといるよな。友達いらねーの?」


「いらない!でも、はやととけっこんしたいな」


「けっこんはダメだ。テレビでげいのうじんがふりんするから、ダメだ」


「そっかぁ。でも、はやちゃんとずっといっしょにいたいよ」


「じゃあ、おれがおまえのお兄ちゃんになってやるよ」


「やったぁ!これでずっといっしょだね!お兄ちゃん!」




ーーーーーー





「わたし、はやちゃんのことが好き!」


小学四年生の時、お姉に言われた、衝撃的な一言。


「だめだよ!お兄はわたしのお兄なんだから!」


「知らないの?わたしと颯人が結婚すれば、亜香里は颯人の義理の妹になるんだよ?」


「ギリの妹?」


「そう。だから、わたしのこと応援してねっ」


「う、うん。わかったよ、お姉」


あの時、お姉の言葉通り、わたしはお兄とずっと一緒だと信じていた。


だから、一生懸命勉強して、


わたしは首席でお兄とお姉がいる高校に入ったんだ。


お姉は学年一位だけど、わたしだって学年一位です。負けません。


マネージャーをやりたかった理由は、お姉がお兄をバスケ部に入れようとしていたから。


これで、お兄のお世話ができると喜んでいた。


でも、実際はそうじゃなかった。


お兄がどんどん友達を作って、遠い人になっていく気がした。


お姉だって、隙あらばお兄と二人きりになろうとしている。


それはいいんだけど、


いつまでわたしは我慢すればいいの?


お姉がお兄を好きだと言って、6年も待ってるんだよ。


お姉、さすがに6年は長すぎるよ。


わたしは疲れ切っていた。お兄が心配するから友達っぽい人を作ることも、わざと口下手にしてお兄の気を引くことも、料理できないフリをすることも、


お兄のことが好きじゃ無いって嘘つくことも。






ーーー

作者より。望美と亜香里、どっち派ですか?

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