第180話だからご主人様は唐変木
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休憩の為一日どこにも出かけない日もあったのだが、この一週間という短い時間でここ日本を少しでも気に入って貰えただろうか?
そんな小さな不安が頭を過り、その感情を誤魔化すために深夜一人自室でウイスキーをロックで飲んでいた。
初めは濃かったウイスキーも今では溶けた氷の水分でかなり薄くなってきているのだが、この変化こそロックの醍醐味でもあると言え、ゆっくり飲むのならばやはりこの飲み方だろう。
そして俺はグラスを傾け、薄くなったウイスキーを口に少しだけ流し込むと下の上で一度転がし、鼻から空気をゆっくりと出しながら飲み込む。
そして広がるウイスキー独特の香りと味を堪能した後、飲み込む。
ショットやハイボールも良いものだが、やはり俺はゆっくり味わって飲めるロックが良いと再確認しながら俺の元へ半ば強制的に身一つで嫁ぎに来た俺の嫁、シャーリーの事を思う。
もし俺が逆の立場だったら、彼女のように日々笑顔で立ち振る舞い、使用人たちへ八つ当たりする事も無く仲良く過ごせるだろうか?
おそらく一生家族を恨み続け、他人を信用できなくなっていてもおかしくないと、俺は思う。
そんな境遇のシャーリーを思い、もちろんカイザル殿下に狙われている彼女の身の危険から彼女を守るという意味もあるのだが、それとは別にこれを理由に日本へ来て良い気分転換なってくれればという思いも少なからずあった。
この方法がシャーリーに合ったかどうかは分からないのだが、ここ最近のシャーリーの俺に対する反応がよそよそしいというか、さり気なく避けられているというか、そんな気がするのだ。
勿論彼女の立場からすれば売られるように嫁がされた先の旦那など、避けて当然なのだが、やはりというか何というか、そう思うと少しだけ心が痛むのである。
一応ミヤコにもシャーリーの事を聞いてみたのだが、嫌われているというかむしろその逆だと言うのだが本当であろうか?
そしてシャーリーの事を聞いた後は決まって「だからご主人様は唐変木だと言われるのですよ」と言われてしまうのだがこれに関してだけは違うと異議と唱えたい。
確かに感情は薄いためよく怒っているとは勘違いされてしまうのだが、俺は昔から気が利く方であると自負しているし、今もこうしてシャーリーの事を慮って気にしているではないか。
そう言い返した所で倍になって反論が返ってくることは分かりきっている為、わざわざ言い返したりはしないのだが、代わりにこうして飲んで忘れる事くらいは良いだろう。
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