第178話好きが止まらない



そしてわたくしは夢の様な一日を過ごし、今現在わたくしに宛がわれている部屋には様々な動物のぬいぐるみが増えていた。


キリンにゾウ、カワウソにパンダ、サイにトラ等、それこそ全種類を揃える勢いで買ってもらい、反省中でもある。


わたくしは旦那様、並びに四宮家に対してお返しできる物など何も無い居候のような立場であり、毎日良くして貰ている立場であるにもかかわらずぬいぐる一個じゃ飽き足らず何個も買うなどという我儘な行いをしてしまい、数多くのぬいぐるみを手にした嬉しさと罪悪感で変な気分である。


それでも旦那様は怒る事も無く「ぬいぐるみをねだられるくらいだったら可愛い物だよ」と優しい声音で肯定してくれたあと頭を撫でられた事を思い出してレッサーパンダのぬいぐるみを抱きしめながらベッドの上をゴロゴロと転がったり、足をバタバタとさせたりしながら悶える。


はしたないとは思うものの、そうしないと溢れ続けて来る温かな感情を許容できないのである。


思い出すだけで大洪水状態であり、感情を行動に移して発散しないとどうにかなってしまいそうなのだ。


その感情は旦那様の事を異性として好きだとはっきりと分かったその時から日に日に強く感じるようになり、とどまる事を知らないみたいである。


そしてその感情を何とかゴロゴロバタバタと発散しながら再度、思うのだ。


わたくしは旦那様の事が好きだと。


最早この間、旦那様への好きが止まらない。


きっとわたくしは今、人様に見せられない顔をしていることであろう。


そしてわたくしは『ぼすん』と火照った顔を枕に埋めた所でノックが聞こえて来たので返事をするとミヤコは入って来る。


「み、みやこぉーっ」

「あらあら、どうしたのですか?お嬢様」


そしてわたくしはミヤコの顔を見た瞬間ひしっと抱き着くと、今思っている感情を全て吐き出す。


この感情は安奈でも、サオリンでも、他の誰でも無く、ミヤコにしか言えない。


わたくしにとってミヤコは命の恩人でもあり、おばあちゃん的な存在でもあり、優しく包んでくれる母親の様な存在となっている。


恥ずかしい事も素直に話せる、そんな存在だ。


「あらあら、青春ですねぇ奥方様。懐かしいですね、奥方様のお陰で私にもそんな時があった事を思い出しました」

「ミ、ミヤコにもわたくしと同じような感情になった事がございますの?」

「それはもう、私も若い頃はお転婆娘のじゃじゃ馬娘ではありましたが心はれっきとした乙女でしたもの。好きな人から優しくされれば幸福過ぎて悶えたり、今思うとどうでもいいようなほんの些細な事で嫌われたのではないかと不安にかられたりしましたよ」

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