第133話お酒が入っているから

そしてわたくしは目を瞑り意を決して生の魚の肉を、周りの皆様と同じ様に黒い水『しょうゆ』という調味料を付けて「コレは生の魚の肉では無い」と自分に言い聞かせて口に入れる。


「無理はするなよ?ダメそうだったら出しても怒らないからな?」


そして旦那様は、まるでこれから戦地へ赴く様な雰囲気を出して食べるわたくしを見て再度

「無理そうなら出しても良い」と言ってくれる。


その優しさが、何故だか知らないのだがわたくしの中の生の魚の肉に対する苦手意識が和らいで行く様な感覚になる。


そうなると、苦手意識が強く邪魔をして嗚咽を我慢する必要も無くなり、自然と生の魚の肉の味を味わえる様になってくる。


「お、美味しい…………美味しいですわっ!!」

「お、おう………それは良かった」

「旦那様っ!旦那様っ!奥方様が生魚を食べれる様になったのでしたら明日はお寿司が良いですっ!!」

「そうだな、流石に明日はこの大人数を予約するのは無理だし、明日予約している店に前日キャンセル入れるのも流石に失礼だしな、一応明後日には寿司二郎を予約してるからそれで我慢してくれ」


そして、生の魚の肉を食べて素直に美味しいと言うと、ルルゥやララがわたくしの手を取り、他の使用人達も集まるときゃいきゃいと「お寿司お寿司」と言い始め、旦那様がお寿司は明後日だと言うと、使用人達はまるで子供が産まれて新しい家族が増えた時の様に皆喜びを爆発させる。


その反応を見てわたくしは、使用人達がここまで喜ぶ『おすし』という食べ物が今から楽しみで仕方がなくなってしまう。


「そんなに騒ぐ程のモノでは無いぞ?美味しい事は美味しいのだが、その刺身をお酢を混ぜたご飯の上に乗せただけの料理だ。いや、シンプルな料理だからこそより高い技術が必要なのも事実ではあるのだが、明後日行く店は回転寿司だしな。恐らくアルコールも入っているからテンションが高いだけだろう」


そして旦那様は周りの騒ぎ様を見て、まだ見ぬ料理に期待を膨らますのだが、旦那様が「ここまで騒ぐのはお寿司を食べれるからでは無くお酒が入っているからだと言う。


「そうなんですのね。確かに皆様お酒を嗜んでおりますし、しかしながらそれでも皆様が揃って喜んでいるのには変わりないですので、それだけのポテンシャルがある料理なのは間違いないのでしょう?」

「まぁそうだな。一応ここ日本を代表する顔の様な料理だしな。それに回転寿司と言えども最近は馬鹿に出来ない程美味しくなって来ているから、お刺身を美味しいと思えるのならばまず間違いなく美味しいと思える料理ではある事には間違いない」

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