第70話大切な宝物の様な時間
しかし、今のわたくしの服装が珍しいのか人の視線は王都にいた時以上に感じる。
「奥方様、あそこの店で御座います」
そんな大勢の人の視線を浴びながらルルゥとミヤーコに案内されて、わたくしは今雑貨屋に来ていた。
王都にいた時は貴族御用達といった大きな店にいつも行っていたので、今日案内された店の様な小ぢんまりとした店に行くのは実は初めてだったりする。
しかし、確かに王都の貴族向けの店と比べると一回り以上は小さいのだけれども、店内へ入ってみると販売している商品の数は小物こそ多いものの意外と品数に関しては揃っており、むしろ王都の貴族向けの店よりも多い様にすら思えて来る。
貴族向けの店と違い空いてるスペースを見つけるのが難しい程に品物が所狭しと並んでいる光景はある意味で新鮮で、圧迫感すら感じるのだが、それはそれで面白い体験だと思えて来るし、こういう場所で買い物をするというのはそれはそれで選び甲斐があり今から既に楽しさが溢れて来る。
「ここは駐車場から一番近い店で、一番品揃えが良い店ですよ、奥方様」
「ええ、所狭しと品物を並べられている所を見る限りそうみたいですわね。それだけでワクワクして来ますわ」
「買い物は女性にとっては楽しみの一つで御座いますからねー。むしろそそくさと目的の物を買ったら後はもう用はな無いとばかりに店を出て行く男性達の気が知れないですね」
そして三者三様に思い思い喋りながら各々品物を物色し始める。
「こうやって見るだけでも楽しいですものね」
「そうですよね奥方様っ!それがつまらないって言うんですから私はそれだけでもう人生の半分は損していると思います」
「まぁ、私達は私達で男達の言う『ロマン』や『決闘』といったモノの良さは分からないのだからおあいこですかねー。あ、この手提げ鞄可愛くないですか?」
「可愛いですわっ!」
何でしょう?この様に親しい者達とこうして雑談しながらお買い物をするというだけなのに、物凄く楽しく感じてしまう。
以前までならばこういう事は出来ないしさせて貰えなかった事を考えるとこの何でもない時間が私にとって大切な宝物の様な時間に変わっていく。
それに、とわたくしは思う。
こんなに晴れやかな気分で一緒にお買い物が出来るのは昼間の一件のお陰であると。
「本当ですね。コレなら日本へ持って行ったとしても大丈夫そうですねー」
「やはり、『にほん』という国は今わたくしは着ている着物の様に着ている物や身につけている物は目で見て分かるくらい違うものですの?」
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