第55話子供扱いされるのは何でか知らないけれども嫌なのだ

「確かに御座いますがそれはパスタはパスタでもオレキエッテの様な、耳たぶの様な形状の物で麺状では無いため私は初めて食べた時とても珍妙な食べ物だと思いましたしお湯を入れるだけであそこまで完璧な料理が一品完成する料理など見た事も聞いた事も御座いませんでした。 それに何よりカップ麺にはカップ麺でしか味わえない魅惑的な美味しさが御座います」

「なるほど、それに餅は餅屋と言うしな、グラデリア王国の事はグラデリア王国の人に聞くのが一番って事でカップ麺にしようか。 シャーリーもそれで良いか?」

「は、はいっ! お湯を入れるだけで完成する料理って聞くだけでもう今すぐにでも作って食べてみたいですわっ!」


 あぁ、お湯を入れるだけで完成する料理など、一体全体どの様な料理なのだろうか?もう既に食べてみたいと言う衝動を抑えきれない。


 そして興奮を抑えきれないといったいった感じのわたくしを旦那様は微笑みながら見つめ、頭を優しく撫でてくれる。


 そう、まるで王都で何度か見かけた子供の相手をする父親の様に。


 わたくしのお父様は、わたくしの頭を撫でてくれた事など今思い返せば結局一度もなかった事を思い出す。


 だからだろうか?他の子供達の様に父親に頭を撫でられてた回数分を取り戻そうかと思える程に旦那様にもっと撫でて欲しいと思ってしまうのは。


 そして、不思議なのが撫でて欲しいと思えば思うほど子供扱いして欲しくないというわたくしが顔を出してくる。


 こんな感情は初めてで、どう処理して良いか分からない。


 この感情を旦那様に言えばどう対処して良いのか教えてくれるのだろうか?


 恐らく旦那様はわたくしが出会って来た大人達と違ってわたくしの事を『シュバルツ殿下の婚約者だから』という理由で、そんな事くらい自分で対処しろとは言わないと、思う。


 だからこそ子供の様に甘えたいし、撫でて欲しいと思ってしまう。


 でも、子供扱いされるのは何でか知らないけれども嫌なのだ。


「どうしたシャーリー。 大丈夫か?」

「す、すみません。 少し考え事をしておりましたわ。 もう大丈夫ですので早速噂の『かっぷめん』とやらを作りに行きますわよっ!!」


 そして、急にわたくしが黙ってしまったからなのか旦那様が心配そうに声をかけてくれるので少し強引にテンションを上げて問題ない風を装う。


「それなら良いが………。 とりあえずカップ麺を作ろうか。 朝からカップ麺などいつぶりだろうか? 何だかいけない事をしている様でワクワクするな」

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