第21話夢物語
「では、早速で悪いが奴隷契約を行う」
「は、はい」
そして旦那様はわたくしの了承を確認すると早速奴隷契約を始めると言う。
本来で有れば、奴隷契約するには周囲には何もなさ過ぎるのだが契約範囲が狭すぎるのでそこまで大掛かりにする必要もないのであろう。
「ではまずこの用紙にサインして下さい。 一応念のために契約内容はしっかしと確認して下さいね」
ルルゥがわたくしの前に奴隷契約用の書類を出し、その内容をしっかし読んでからサインをする様に言ってくる。
騙すつもりがない事は奴隷契約使用時の書類を確認させてくれる事からみても間違いない様である。
その証拠に奴隷契約使用時の書類には先程旦那様が仰った通り、シノミヤ家の秘密を保持する内容だけであった。
そしてわたくしは奴隷契約使用時の書類へ自分の名前を書き記す。
恐らくこの名前を書く事もこれで最後であろう。
「ではこちらが予備の写しですので一語一句間違いがないかご確認を」
「…………………はい、間違いありませんわ」
「それでは、この針で傷を付けてサインの横へ血判をお願い致します。 …………はい、確かに。 一応このアルコールを染み込ませたガーゼで傷口を拭いて下さいね。 それでは、奴隷契約を始めます」
そしてルルゥさんが紫色の炎でわたくしのサインした方の書類を燃やしていく。
「はい、これにて奴隷契約は終了でございます。 そして、ようこそ。 四ノ宮家へ」
呆気なく終わった様に思えるのだが、コレで奴隷契約は終了らしく何だか拍子抜けである。
「これで四ノ宮家の家内を安心して案内出来ますので、長旅終わりでお疲れでしょうし今日は身体の汚れを流した後奥方様のお部屋でしっかりと休んで下さいね。 ではまずお風呂場からご案内致しますのでこのルルゥの後をついて来て下さいな」
「は、はい」
成る程、早速わたくしとの初夜を行うという事ですわね。
貴族の妻の役目は子を成すこと。
この家に着く前から覚悟はしていたし、ずっと前から想像もしていた。
ただその相手がシュバルツ殿下ではないという違いはあるのだが、今更どうしようも無いし別段シュバルツ殿下を愛していたわけでも無ければ、かと言ってわたくしの旦那様であるソウイチロウ様へ一目惚れをした訳でも無い。
貴族の娘として生まれた以上愛した人と結ばれるなど唯の夢物語である事くらい理解している。
愛した男性と人生一度は、と思った事ないと言えば嘘になる。
そういう所は平民が羨ましいと、愛する人もコレと言っていない癖にわたくしはそんな事を思うのであった。
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