第105話 過去の遺物

フェリクスたちがカトリーナ国に出発しようとしている時、シーラ大聖堂では怒声が響いていた。


「聖剣と勇者様は何処に消えたのだ」

「すみません、ザルツブルグ様」

「ええい、言い訳は聞いていないのだ。そんなことを言っている暇があったら、聖剣と勇者様を探してこい」


ザルツブルグは部下に当たり散らしながら、今後について考えていた。


(せっかく、聖剣の事や勇者の事を隠していたのに、すべてが無駄になってたまるか)


「早く、捜索隊を編成して付近の町を探索してこい、勇者様の事だ。そう遠くには行っておるまい」

「はい、只今」


ザルツブルグの言葉を聞き、部下たちはそそくさと部屋を去って行った。


カトリーナ国、シーラ大聖堂から山2つほど、離れた山奥


「確か、ここら辺のはずだぜ」

「なら、軽く魔法で掘ってみますか」


フェリクスが指を動かし、魔法を何回か、使うと土が掘り返され、遺跡の入口が現れた。


「本当にありましたね、フェリクス君」

「俺が嘘つくと思っていたのか、このお嬢は?」


エクスの案内で来たので勿論、エクスは本の外に出ている。


「いえ、そう言う訳では・・・」

「なら、どういうつもりで今の言葉を言ったんだ?」

「そ、その」

「エクスもアリサをいじめてないで早く中に入るよ」

「今、いいところだったのによ~」


フェリクスはさっさと2人を置いて遺跡の入口に入って行った。


「あ、待ってください、フェリクス君」


入口に入るとフェリクスは火魔法を使い、辺りを照らしていく。


「そうだ、アリサ姫、罠があるかも知れないので気を付けて下さいね」

「そんな罠があるなら、エクスさんに聞けば、いいんじゃないですか?ここの場所も知っていたようですし・・・ガチャン」


アリサが床の仕掛けらしきものを踏んだ。


「これって・・・」

「おう、それが仕掛けてある罠だな」


2人の目の前から、視界を埋め尽くすほどの矢が飛びだしてきた。アリサ姫が一人で慌てているが、フェリクスが防御魔法を張って事なきを得た。


「すみません。ご迷惑をお掛けしました」

「最初はそんなもんですよ。気にしないで下さい」


それから、エクスの指摘もあり、何とか罠をかいくぐりながら、2人は遺跡の最深部へ到着した。


「ここからは俺は何も出来ねぇ、自分たちで試練を乗り越えてくれ」


エクスの不穏な言葉でこれから何が起こるのか、不安が2人の胸を過った。鞘が納められていると思われえる棺の前には精霊のような半透明の人が立っていた。


「汝らは、いかなる覚悟を持ってここに来たのか、我に現わしてみよ」


その言葉を皮切りにその人物はフェリクス達に魔法を放ってきた。その防御魔法をフェリクスは展開していくが、段々と相手の魔法速度が上がっていく。


「流石にきついな」

「手伝います」


アリサも見かねたのか、フェリクスのフォローに入る。アリサも防御魔法を使うがそれでも徐々に押され始めていた。


「何故、汝らは力を欲する」


同じ質問をしてくるが2人は魔法で防御している為、答える余裕がない。ついに2人の防御魔法が間に合わなくなり、2人が魔法によって捕まえられた。


「何故、汝らは力を欲する」

「くっ」

「何故、汝らは力を欲する」

「そんなに答えて欲しいなら、答えてやる。だらだらしたいからだ」

「こんな時に何を言っているんですか?フェリクス君」

「力が無いとな、平和を謳歌する事すら許されないんだ。だから、俺は力を欲する」


フェリクスが目一杯叫ぶと周りの光景が一瞬で様変わりした。2人とも部屋の入口で立っていた。魔法で受けた傷は跡形も残っていなかった。


「え、これは?」

「・・・幻術ですか」

「ええ、そうです。貴方たちを試す為にそうさせて貰いました」

「俺も簡単に幻術にかかるとはまだまだですね」

「さぁ、貴方の気持ちは理解しました。ほしいと言うなら、その棺に眠っている私の所から鞘を持っていきなさい」


透明の人物が棺の方を手で指すと、棺がゆっくりと何かの力によって開いた。


「貴方が鞘の精霊ではないんですか?」


フェリクスはてっきり幻術を掛けた透明な人物こそが鞘の精霊だと思っていた。


「いえ、私はただの過去の遺物、本来、この時代の人に関わるべきものではないのです」


フェリクスは言葉の意味が分からずにそのまま棺まで行く。そこの人物が言っている意味が分かった。棺に入っていた人物がその透明な人物、その人だった。棺には名前が掘って有り、そこには勇者と一緒に戦った人物、騎士アスナと書かれていた。アスナが持っている鞘をフェリクスが触ると、アスナの体は砂になり崩れ去った。


「鞘の効果で命を繋いでいたのか」


フェリクスはそれが分かると棺に向かって一礼をした。


「アンタが次のご主人様って訳ね、ん、エクスもいるじゃない」

「おうよ、久しぶりだな、シース」


シースと呼ばれた鞘の精霊は活気に溢れている少女と言う印象だった。


「改めてよろしくね、シースよ、ご主人様」

「自分はフェリクス、別にご主人様とか、そんな風に呼ばなくて自分の呼びたいように呼んでいいよ」

「そう、ならフェリって呼ばせてもらうわ」

「そう呼びたいならそれでいいよ。所でここに勇者が帰る時に使った魔法陣があるって聞いたんだけど、その場所は何処なの?」

「それなら、その奥の扉にあるわよ」


棺の奥には大きな扉があり、魔法陣はそこの先にあるみたいだった。フェリクスは鞘を持ったまま、扉に向かった。

しかし、そこにあった魔法陣は半分以上が風化によってかけていた。


「と言うことでもう少し精霊語についてから勉強をしてから、魔法陣を作るのでそれまではこの世界で自由を謳歌してください」

「まぁ、それはしょうがないですね」

「安心して下さい。軽く話して貰った情報だけでも、万金にも勝る価値があります。生活に不自由は指せないとお約束します」

「こっちの魔法は誰にも使えると聞いたので使えるようになりたいと思います」


こうして勇者こと光は暫くこっちの世界で生活するようになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【天才】ダラダラしていたら、家を追い出されたけど、結局、王都の学園で無双する スリーユウ @suri-yuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ