第94話 山の美味しいもの
「あれ、なんか忘れているような」
「それは多分、俺の事だろう」
フェリクスが頭を捻っている中、いつの間にか、門にはアベルが寄りかかっていた。
「戦闘はなかったようだな」
「見てのとおりね」
「ならいいか、そちらのお方は?」
「ここの貴族のアンバーさん」
フェリクスの言葉に、アベルは身構える。
「多分、アベルが身構えるような事は無いから安心して」
「本当か?」
アベルは今まで見てきた経験から、アンバーに疑いの眼差しを向けていた。
「まぁ、父のしてきた事を考えれば仕方がないでしょうね」
「そういえば、気になったのですが今、鉱山業はどうなっているのでしょうか?」
「父が戦死したと聞いてから、働いていた全員、家に帰しました」
「・・・それはいい選択肢をしましたね、出なければ、今頃、ここは民衆で囲まれていたしょう。さて、これからはお前たちの仕事だぞ、親父にやることは言われているだろ」
フェリクスは商会員たちの背中を押し、屋敷の中へと誘導した。
「はい、任せてください」
「手始めに何をするのか、教えてくれると嬉しいな」
アンバーはフェリクスに一緒に仕事をやってみてはどうかと言われた手前なので早速、仕事内容を聞いてみた。
「まずは、ここの貯蓄額を確認して、それから民衆に3年間の税の免除を通達します」
「3年もかい?それはまた、太っ腹だね」
「今での税収がおかしいんです」
「それはすまない」
話し合いが始まった所でフェリクスは屋敷の出口に向かって歩き始めた。それに気が付いたアベルもそれに続く。
「彼らは大丈夫なのか?」
「まぁ、大丈夫だろ、後は彼らに任せて、俺たちは町の様子を確認しようか」
「そうだな」
街の様子は鉱山の金属類を加工する仕事が多いのか、そこら中で煙がモクモクと空に登っていた。
「さてと、俺は鉱山に行って見ようかな」
「なら俺はここら辺の住民の様子を見ておこう」
「了解」
そう言って2人は分かれた。
鉱山に近づき、何の鉱物が取れているのかとフェリクスが確認しようとした時、突然、小人精霊がフェリクスの前に現れた。
『こっちにいいものあるよ』
小人精霊が指したのは、鉱山ではなく、鉱山の上の山だった。小人精霊に言われたのでフェリクスは迷わず、山を上り始めた。
『ここだよ』
暫く進むと、林の根元にたくさんのキノコがある所で小人精霊は現れた。
「これはアライタケだな、それもこんなに」
『毎年ここでたくさん、食べれるよ』
「めずらしいキノコなの?」
シルフは気になったのか、本から出てきて質問してきた。
「高級とされるキノコの一つで、1個で金貨1枚の価値があるよ、ふふふ、良い情報だな、お前ら」
『フェリクス、悪い顔してるー』
「そんな、まさか、ここを独占できるだけでかなり安定した収入が期待できると思っただけだよ」
「それが悪い考えなんじゃないの?」
「こういうのは先に見つけた者が勝ちだからね、鉱山に目がくらんでいたこの町の人間が悪い」
『あくどい―』
「ちゃんと真っ当な商売なんだから、文句は言わないでほしいものだね」
こうして、フェリクスは小人精霊が教えてくれた2つ目の美味しいものを見つけ、順調に商売の繁盛の道筋を思い浮かべるのだった。
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