第85話 資金源
クレソン商会に着くとフェリクスは、マリアンヌを執務室に呼んだ。
「ディスガルド帝国が負けて、その後の統治権を一時的に貰った」
「・・・緊急通信を使ったので何かあるとは思っていましたけど、何をしたんですか」
「ちょっと、ダンジョンの大量発生を処理して来ただけだよ」
「さらっととんでもない事、言わないでください、」
「まぁ、そう言う訳だから、暫くディスガルド帝国、行ってくるよ」
「分かりました、また、荒稼ぎしそうですね、副会頭なら」
「親父もいるからね、どうなるか、俺にも分からないよ」
「商人としては恐ろしい限りです」
「あ、そうだ、一応、聞くけど、影響がない程度で、動かせる金ってどのぐらいある?」
「それなら、白金貨10枚ぐらいでしょうか」
「まぁまぁかな、もしかしたら、必要になるかもしれないから、準備だけはしといてよ」
「そんな予感はしていました。準備しておきます」
「うん、お願いね、それじゃ俺はもう行くよ」
「いってらっしゃいませ」
フェリクスは机の横にある背嚢を背負うと転移結晶を砕いた。
転移するとフェリクスが出た場所は、レオンハルト国のクレソン商会だった。そこには前回と違い、転移魔法陣にはコナーが待っており、フェリクスを迎えた。
「お疲れ様です、副会頭」
「ありがとう、コナーさん」
「ディスガルド帝国の話は何処まで進んでいる?」
「その件なのですが、少し問題が発生しているようです」
「問題?どんな」
「ディスガルド帝国の軍が壊滅していたので、帝都を制圧するのは簡単だったらしいのですが、王がため込んでいる筈の金品が一切なかったそうなのです」
「あのアースガルドの事だ、たっぷりため込んでないとおかしいな」
「ですから、何者かに盗まれたのではないかと」
「アースガルドが怒っているのが目に浮かぶな」
「調べた所、アースガルド王も軍に参加していたようで、既に亡くなっているらしいですぞ」
「そうか、あの中にいたか」
フェリクスは、コナーの情報を信じていたが、内心意外だった。
「あの臆病で有名なあいつが戦場に出ようとしたのか」
「恐らく、例の兵器がすべて片づけてくれるとでも思ったのでしょうな」
「だとしても、危険には変わりないけどな、いや、ただ蹂躙を楽しみにしていただけの屑か、どちらにしてももういないなら関係ない、それよりも問題は、金品だな」
「はい、そうですね、私たちは、その金品を元手に動こうとしていましたら、他の支部から捻出するにしても、すぐに集まる金額など少額ですし、どうしますかな」
コナーは顎の髭を撫でながら、現状について教えてきた。
「俺の個人資産を少し削れば、大丈夫だよ」
「まぁ、そんな所だと思いました、やはり、この商会はすごいですな」
「大丈夫、すぐに倍にして返して貰うから」
「ほほほ、末恐ろしいですな」
本気で言っているフェイクスにコナーは乾いた笑い声しか出て来なかった。
「それじゃ、俺はアベルとディスガルド帝国に行くから、後、よろしく」
「わかりました、副会頭、さっきの話、会頭にも話しておきます」
よろしくと言った後にはもうフェリクスは、かなりの距離を離れており、遠くから声だけが鳴り響いた。
「おねがいね~」
フェリクスが城に着くと、馬に乗ったアベルが迎えてくれた。
「馬で行くの?」
「ああ、そうだ、何か不安か?」
「いや、走った方が早いなと思って」
「それはお前だけだろう、他の人達は違うんだ、出来れば合わせてくれるとありがたい」
「合わせるから安心して」
フェリクスは口ではそう言った心の中では遅くなるから、嫌だなと思っていた。兵士がフェリクス用の馬を持ってきてくれるとフェリクスはお礼をいい、馬に跨った。
「それでは出発だ」
アベルが盛大に声を出すと後ろの兵士たちも呼応して声を出した。それが終わるとフェリクスたちはディスガルド帝国に向けて出発した。
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