第74話 急報
フェリクス達が授業を受けていると突然、その情報が飛び込んできた。
レオンハルト国がディスガルド帝国の侵略を受けたと。その情報に一番衝撃を受けたのは、アベルだろう。その報告を受けたアベルは直ぐに転移結晶によって、本国に帰っていった。
ただの友達に過ぎないフェリクスは、ただその様子を見ていた。流石に、何かやるにしても現地の商会がやっているはずなので、フェリクスの出番はなかった。
しかし、フェリクスがたまたま商会で聞いた情報により、状況は変わった。
「もう一回言って、マリアンヌさん」
「ですから、レオンハルト国は謎の兵器により、かなりの劣勢に陥っていると聞きました。聞き返すなんて珍しいですね、副会頭」
フェリクスはアベルの事が気になって情報だけは探らせていたが、思わぬ情報が入ってきた。
「その謎の兵器ってどんなのか?分かる?」
「いえ、兵器の詳しい事までは、ただ、獣の様なものが兵士を無差別に襲っているとの事です」
情報は少ないが、もしかしたら、自分が探している兵器なのでは、フェリクスの頭に不安がよぎる。
「レオンハルト国に行ってくる、学校には休学届けを出しといてくれ」
マリアンヌにそれだけ言うとフェリクスは、転移結晶でレオンハルト国のクレソン商会に飛んだ。
「休学届けまで出しといてなんて、そんなに兵器が気になったんでしょうか・・・」
フェリクスの反応に違和感を覚えたマリアンヌは、とある所に連絡を入れた。
レオンハルト国に転移したフェリクスは、周りの状況の把握に急いだ。転移したフェリクスに気づかないほど、商会は忙しい状況らしい。転移魔法陣を出ると、商会には多くに前線から避難してきたと思われる人たちが大勢、詰めていた。
そこでフェイリクスは周りを見渡し、代表であるコナーを探した。しかし、一般に開放されている場所にはコナーの姿はなかった。それが分かった、フェリクスは商会の奥にどんどん進み、一番偉い人がいる執務室の部屋をノックした。
「どうぞ」
中かコナーの声がして、フェリクスは声に従って中に入る。
「フェリクス君、どうしてこちらに」
中に入ったフェリクスを見るとコナーは驚きの声を上げる。
「ディスガルド帝国が使っている兵器について知りたくて来たんだ」
「なるほど、それが知りたくて来たんですね」
コナーの脇にはアランが控えており、コナーの仕事を手伝っている様だった。
「具体的にどんな兵器なのか、教えてほしい」
「こちらで分かっている情報は、敵で使われている兵器がオオカミの様な獣の形をしている事と、その体が鉄の様もので構成されていることだけですね、それの兵器は無差別に人を襲っていて、ディスガルド帝国は、それが分かっているのか、兵器だけをレオンハルト国の駐屯地に放つ使い方をしています。そしてことごとくそこに駐屯している兵士たちは皆殺しになっているそうです」
「その鉄のオオカミは傷ついても再生するか、分かるか?」
「すみません、そこまでの情報は分かりません、何分生存者がいないもので」
フェリクスはコナーの情報にまだ確信が持てないでいたが、もし精霊を使った兵器だった場合、さらに被害が拡大してしまう。
「その兵器は今何処にあるか、分かりますか?」
「恐れらく、ディスガルド軍が回収をしていると思われます」
この状況でフェリクスはディスガルド軍に殴りこむと言う選択肢が取れない。戦争に無関係のフェリクスがティスガルド軍を攻撃すると、クレソン商会全体がレオンハルト国の味方をしていると他国に思われかねない。国との取引もしているクレソン商会にとって、それは余りよろしくなかった。しかし、このままだと兵器の正体が分からないままだった。
「今まで襲われた駐屯地と襲われていない駐屯地の場所は分かるか?」
フェリクスがコナーに聞いた質問は国の秘密と言ってもいい情報だったが、コナーはアランに言って地図を持ってこさせた。
「なるほど、副会頭は次に襲われる場所を知りたいのですな、今まで襲われた駐屯地は国境近くのものばかりです。次に襲われるとしたら、恐らくここでしょうな」
コナーは地図にすらすらと駐屯地の場所を羽ペンで書き記していく。そして襲われた場所にバツの印を入れた。最後に次、襲われるであろう場所を指で刺した。
「確かに次、襲われるとしたら、そこだね」
地図を見たフェリクスもコナーと同じ結論に達した。
「くれぐれも気を付けて下さい、首を突っ込み過ぎるのは副会頭のいい所ですが、悪い所でもあります。兵器の正体が分からない以上、最大限の注意をお願いします」
「心配ありがとう、コナー、気を付けて行ってくるよ」
「無事の帰還を待ち望んでいますぞ、いってらっしゃいませ、副会頭」
フェリクスは必要な情報を聞けたとそのまま執務室を出て行った。
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