第139話
サイド:ゼロ
バチカン宮殿内システィーナ礼拝堂。
監視カメラで方舟地上部分の状況……いや、惨状を目の当たりにしてウチは頭を抱える。
周りの転生者……みんなも顔面が蒼白で相当にショック受け取るみたいやな。
そして、天井に描かれている絵画に忌々し気に向けて、ウチは忌々し気に吐き捨てた。
「ミケランジェロの最後の審判……こんままやったら裁かれるのはウチらやないかい!」
「……」
「神様気取りで人類の人口調整! 最強のリュート=マクレーンを手に入れてノリノリ状態ヒャッホーイ! 後はゆりかご発動させて理想郷! そのはずが気が付けば量産型がボコボコにされて絶体絶命のピンチでこっちが危ない。うんうんそんなことも良くあるよね、ありがちだよねーマジウケルよねー……ってなんでやねんっ!」
うん。
ウチのノリツッコミもまだまだ捨てたもんやないな。
「さて、モーゼズ兄やん? どない責任取るつもりなんや? こんままやったら敗色濃厚やで? 転生者を総動員してもアレに勝てるとは思えへん! あいつら無茶苦茶やで!? どないすんねんなっ!」
そこでモーゼズは眼鏡の腹を中指で押し込み、不敵な笑みを浮かべた。
しかし、ウチはモーゼズのコメカミに汗が伝っているのを見逃さない。
おいおい、余裕ぶってますけどめっちゃ狼狽してますやん。ほんまに大丈夫なんかいな。
「最終手段です。地下に隔離している外なる神に憑依して私が出ます」
「ほんまに滅茶苦茶やな……方舟そのものすらも焼き尽くしかねん荒業やでそれ」
「ですから、最終手段と言っています」
と、ウチはしばし考えて、モーゼズに尋ねた。
「でも、それをやってもうたらアンタは死んだも同然ちゃうのん?」
「ええ、モーゼズという肉体は死に、私は外なる神の肉体に憑依しますからね」
「コーデリアちゃんはどないすんねんな?」
「生殖という夢は潰えますが、仕方ありませんね」
「ただ、お生憎様や」
「どういうことでしょうか?」
「調整が済んどれへん。あんたがアレに憑依するには直接接触する必要がある、つまり冬眠状態にせなあかん。アレは人間を見かけたら死に物狂いで殺しにくるさかいな。寝かせるにも準備が足りとれへんわ」
「そのような報告は……聞いてませんよ? 計画のスケジュールでは既に外なる神は冬眠状態で……」
「いいや確かに遅延の連絡はしたで? ボケとんちゃうか? ああ、そりゃあもうあんたさんはリュート=マクレーンを手中に収めた時点で有頂天やったもんな? 計画が成ったとばかりに上の空……で、このザマや。ほんまにアホらしい」
と、モーゼズは踵を返して出口に向けて歩き始めた。
「どこに行く気や?」
「地下です。外なる神に……」
「せやから、憑依するには触れんといかんねやろ? 特殊能力特化のあんたさんに外なる神に近づけるだけの力があるんか? それこそリュート=マクレーンでも無理ちゃうか?」
「ぐ……」
初めて、そこでモーゼズ……いや、クソ眼鏡の顔色が変わった。
「はは、はは、はははっ!」
「どないしたんや?」
「何故なのです、何故なのです、何故何故何故何故!? ゆりかごを用意した! 村人も洗脳した! 量産型も1万体用意した! 万全の態勢! 鉄壁の布陣だったはずです!」
あ……とウチは大口を開いてしまった。
「はは、はは、はは……はははは! はははははっ! どこで、どこで間違えたというのです!」
「おい、モーゼズ兄やん?」
「はは、はは、はは……はははは! はははははっ! はははははははっ!」
眼鏡がズレて、唾を垂らして、鼻水も出とる。
あかん。
こりゃあかんわ。これやから陰でコソコソ系のメンタル弱い引きこもりの童貞は……。
いざという時にクソの役にも立たへん。
「このクソ眼鏡……壊れてもうた。やってもうたな……ついていく大将を間違えたでしかし」
・作者からのお知らせ
新作始めました!
いじめられっ子スタートからの速攻復讐劇で、ざまあ系から始まる異世界無双譚です。
生身で巨大ロボットをボコボコにしたりするような無茶苦茶ド派手な無双でもあります。
騎士学園カースト最下層で虐待レベルのイジメを受けていた僕に、魔王が降臨しました。魔王様は容赦ないので泣きわめいて見苦しく命乞いをしても今更遅いと思います。 ~神装機神の落第操者~
キャッチコピー:伝説の魔王、虐待レベルのイジメを受けている無能学生に転生し華麗に逆襲す
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