第十四節:魔人対人

「アスカはどこか?」というと「こちらです!」と直ぐに検問官が案内してくれた。


 テント内に居るのは分かったが、人でないモノの気配が複数あった。


 ショートソードを引っこ抜いてすぐに念を込める、ショートソードが何かに反応しサイズがロングソードサイズまで拡大し光が青白く光った!


「ロイヤルガードを全員この場に集合させろ!!」と一緒に付いてきた検問官にいうと、そのテントの中に飛び込んだ。


「ステルスもそこまでだ!」といって薄絹を斬るように薙いで行く。


 五匹は薙いだであろうか。


 明らかに人と異なるものの気配が膨れ上がった。


 闇が一気にテント内に膨張する。


 だがそれに直ぐ反応しフラッシュを展開してやる、魔力を過剰出力にした分である。


 さすがにそれには耐えられなかったか、闇が音もなくはじけた!


 アスカ嬢は目の前に倒れていた、その近くに一人屈みこんで今正に触ろうとしていたところにロングソードでそいつを逆袈裟で斬り上げてやる。


 流石にその一撃は受けたくないのか、触るのをやめて数歩テントの幕側に飛び下がった。


「そいつは無しだぜ!」といってアスカを背中側にかばった。


「アスカ!!」と背面向いたままだが声をかける。


 しかし意識は無いのか反応がなかった。


 テントの外に数名魔法を使える奴が来ていたが、ロイヤルガードでは無いようだった。


 仕方が無いので庇ったまま、ソイツに剣を突きつける。


 離れているので効果はないがソイツ以外はただの幻影だったのだろう。


 テント自体の灯りが復活して、ソイツを照らしていた。


 異形ではない、だが異質さを感じられずにはいられなかった。


 姿形はロイヤルガードの衣服をそっくりまねたものと思われた。


 顔はあるが無表情であった。


 目だけ深紅であった。


 そのまま向き合ったままの状態が続いた。


 剣では届かないが、次元斬は危険だった。


 味方まで斬ってしまう確率があった。


 ロイヤルガードが外に揃った様だった。


 神域を展開する詠唱が聞こえた、三人ほどで同時に展開するようであった。


 流石にこれはうっとおしかったのかソイツは背面側を右手で薙いだ。


 その瞬間テントが裂け真空刃と似たような効果が表れた。


「お前! 人ではないな!」と断言した。


 テントの入り口側からロイヤルガードが三人入って来た。


「カリン! そいつは人ではない! 直接渡り合わないとまずそうだが、アスカの状態がおかしい。私はここを動けん!」といった。


 カリンは聖剣を抜いた物理的に清められているのだ。


 ミラセスとアイラも聖剣を抜く。


 三人で包囲陣を敷く、ミランが遅めで入って来た。


 ルート上こちらまでのラインが確保されていたので、直接こちらにやってくる。


 マントの一部に斬れた後があった。


「ガィロ大尉とイリアス中尉が負傷しました。今は二人とも無事です」といってアスカの近くにしゃがみ込んだ。


「精神干渉系魔法ですね。少し解くまでに時間が要ります」とソイツには背を向けたままアスカに術式を掛けていく。


「少し任せる」と静かに言うと表情を硬くしたまま、そいつをにらんだ。


 ロイヤルガードをものともしない癖にこっちにはかなり気を割いている。


 神域エリアオブゴッド!と過剰出力したまま掛けた。


 流石に不意打ちには弱いらしい。


 今のでそれなりに体力は減ったようだがロイヤルガードだけでは辛そうだった、包囲こそ狭めてはいるが戦闘能力的に劣っているのが分かってしまうのである。


 三対一でそれなのだ。


 心眼を使ってみることにした、軽く目をつむる。


 そして心で見るようにする、対象が手を空間を通してアスカに触っているところが見えた。


 その個所を正確にアスカが傷つかない様に薙いだ。


 流石に腕を一本斬り落とされたのは痛かったらしい。


 のた打ち回らないだけマシだったが、明らかに敵意は私に来ていた。


 やりにくい相手だと思った。


 斬り合ったほうが速いだろうが、それをすると裏からアスカを攫われそうな気がするわけで私はここを動けないのであった。


 流石に気配がおかしいのが居るのが分かるのか白騎士ガーシュタイン卿と師匠黒騎士ひじりを連れて来ていたのである。


 概要は外に居たロイヤルガードガィロ大尉とイリアス中尉に聞いたらしかった。


 師匠がいった「なんかややこしいやつとやり合ってるじゃねえか! ヒジリ出番だ!」と聖に声を掛けた。


 ガーシュタイン卿は外の負傷したロイヤルガードを守っていた。



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