第四節:虹騎士団の新型機とギルドの整備員事情

 大男がいった「次は新型の件だ、全機新型で統一する。本来幽霊セブン用のフレームだが簡素にできているため虹でも扱えるだろう」


「それはまたありがたいことだが、幽霊に何かあったのか?」と刺青の男が聞いた。


「聞いてくれるな、情報が漏れたんだよ、少なくとも幽霊には使えなくなった、幽霊は極秘でないといけない。どんなに少なくとも情報が漏れたという事は頭に留めておいてくれ。幽霊七はもう一度作り直しだ」と大男がいった。


「最新の情報が入った、例のところに配属されている部隊は三百機をオーバーしたらしい」と刺青の男がいった。


「なんだと! また増えたのか、で増えたのは何なんだ?」と大男がいった。


「そこまで情報が洩れてこないので分からん」と刺青の男が答えた。


「魔動機が増えただけならセブンで対応はできるはずだ、しかしそれ以外が増えたならセブンでは対応できかねる、セブンは魔動機だからな」と大男がいった。



「ポコポコ増えやがるな、ギルドも本気ってわけか」と刺青の男がいった。


「悪魔騎士は作るなよ、定数がギリギリなんだ」と大男が釘を刺した。



「ダメなのか?」と刺青の男がいった。


「ダメだ、実質石がねえ。枯渇しやがった」と大男がいった。


「それじゃあしゃあねえなぁ」と刺青の男は黙りこくってしまった。


「新兵でもいいからナイツを回せんのか?」と刺青の男は半強制的に口を開いていった。


「新兵ったって、セブンを操れんぞ、あれは幽霊用だから新兵には酷な相談だ」と大男はいった。



「そういえばスパイナイツから報告が上がって来なくなったな」と大男がいった。


「基地のセキュリティーが今まで以上に異常に上がったらしい」と刺青の男がいった。


「魔導機か、しかしあれはそう簡単に数は作れないはずだ……」と大男が何かを考えるように言う。


「手間とコストが半端ないはずだ……そう簡単にできるものか!」と刺青の男が嘲笑あざわらった。






 時節は戻りに戻ってギルド側。


 ギルド側では、最初より機数が上がったためてんてこ舞いしている部隊があった。整備員の部隊である、警備には出なくてよくなり、煩雑さも少なくなった。


 また基地警備局の人員増加によるミクロチップ対策への参加もほぼ講義だけになった。


 だが、しかし人員が完全にそろっていないところもあった、急増された部隊である、整備班長ことミノル・オオヤマは困っていた。


 三中隊ほど増えることになったので人員をギルドから補充するとはあったが、誰をどこに回したら効率がいいのかで迷っていたのであった。


 整備員は効率が命と教え込まれてきたミノルにとっては今の現状は地獄であった。


 だが自身が指揮大隊の整備班長なのだ、外すわけにはいかない、そう思って作業していた。



 支部隊隊長は良い人で、整備員の一人ひとりの苦労までねぎらって考えてくれるマメマメしい方であることもわかっている。


 その恩を仇で返したくないのであった。


 直接的に上司には当たらないが、ノイン技術准将にはよく相談していたのである。


 今回も頼むのがいいのかと思ったのであった。


 直接だと頼みにくいので作業中にサカナをもって相談しに行くのである。


 このサカナは最近だと軽量氷冷庫の出番もあってタイヒラメなどの白身魚に変わっていた。


 そこにキンキンに冷やした冷酒と氷冷ともいっていいほど冷えた醤油ショウユを持っていくのである。


 ちょうどこの時間は作業が一段落している時間だ。


 そういう時間帯を狙うのである。


 普段はサケを飲まないノインだが差し入れとなると話は少し変わってくる。


 丁度、蒼穹ソウキュウのバランス調整を終えたところであった。


 だが先客がいた、というかすでに始まっていた。


 支部隊隊長とその奥方様であるアスカ技術大佐であった。


「虹はどう出てくると思う?」とアスカ閣下がおっしゃった。


「最近動きがありませんな、新型でも作るのにくるくる回ってるんじゃないですか?」とノイン閣下はいった。



「そちらでかしこまってないで、こちらへ出てきて一緒に話をしたほうが捗りませんか?」と後ろからアスカ技術大佐の声がやってきた。


「ヒィィィッ!、すみませんすみませんすみません!」と思わず一礼して去ろうとするが回り込まれてしまった。


「どうした? ミノル君、整備の人員の話カナ? 無理を言って悪かったね、中隊規模を三隊増やすというのは仕事に触れてしまったかな?」とアスカ閣下がおっしゃられた。



「イイエ、そんなことはありません、人員配備の件でノイン技術准将にお話を伺いたかっただけですので」と近くに寄って行き、六畳程の茣蓙ゴザを広げて座り話をしているノイン閣下の右隣でクララ中将の隣に小さく座り込んだ。


「これもどうぞ」と軽量氷冷庫を差し出した。


「まあ、サカナですね、ちょうどおつまみも尽きたことですし、ちょうどよかったではありませんか」とアスカ妃殿下がおっしゃった。


 アスカ閣下も笑顔だ。


 アスカ技術大佐が妃殿下と呼ばれるのには意味がある、アスカ閣下が公爵で皇位継承権第十一位であらせられるからでもあった。


 我々からしたらとても雲の上の方でもあるが、この方々はこの部隊には外せない、そんな感じがするのだ。


 そして私の相談が始まった。




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