第二七節:巻き込み

 そしてフロント・クラークから五〇〇一の鍵を受け取ると超高層階用のエレベーターで一気に五十階まで上がると一応魔導式探知をフロア全体にかけ何もいないことを確認すると五〇〇一の鍵を開錠し、そして扉を用心のため横から開けた今日は大丈夫そうだったので鍵を抜いて先導しながら部屋に入って中を確認し大丈夫であることも確認すると部屋の電気を付けた「OKだみんな入ってくれといって」と私がいって。


「さて楽な格好に着替えるか、といって今日もある意味扶桑風だから楽な格好で良いぞ」と私がいって颯爽と着替えに部屋に飛び込んでいく。


 本日は白の浴衣ではあるが紋の入るところに風陣雷陣図がデカデカと刻印されているもので魔法的な効果もあるものだった帯は黒帯でこちらもオリジナルの刻印術式を組んだものが入っているいわば特製だった、


 その上からショートソードを帯剣し零番は外しておく。


 で部屋の戸を開ける前に前に誰もいないか確認してからゆっくりと開けるその後閉めて、ダイニングに行く一応時間を確認すると一五:四七だった大分時間が有るのを確認してダイニングにある固定電話からルームサービスをバトラーにお願いする上質玉露で出したアイスティーとその御代おかわりの分計十人分と甘さ控えめだが和菓子が有るか聞いてそれを四人前二種類をチョイスする。


 で皆が着替えて出て来るのを待った少しワクワクしながら。みんなの様装も楽しみの一つでもあるのだ。


 最初にアスカ嬢が出て来た本日の浴衣は鮮やかな萌黄色を基調に朱の帯を締めていた、私が頷きながら「綺麗だ」と正直にいった。


 背に団扇も挿しておりそちらには紅で風鈴が大きく描かれているものだった。


 こちらはどちらが表で裏という造りではない両面表という造りのものでそこには風陣紋と反対側には雷陣紋が刻印してあるものだった。


 アスカ嬢から聞かれる「市販されていないモノですよね?」と。


「確かに市販されている部分は白地の浴衣と黒帯という所までであるからだが、残りはオリジナルの技法だよ」と答えるにとどめておいた。


 今日はサヨリ嬢が迷っている様であった。


「お待たせした」とヒジリがいって出て来た西方風味の和模様といった感じの服になっていた、それは私も見たことが無かったので「何処の服だい?」と聞くことに成った。


「まぁ西方といっても地元の民族衣装だ」とヒジリがいって「和のテイストも有るから着てみたんだが」と続けた、「思いの他似合っているし、良いものだな」と思ったので正直に感想をいった。


 サヨリ嬢は本日は赤の浴衣で帯に桃色をあしらっていた、これはこれで凄くインパクトが有った。


「綺麗だな、似合っておいでだ」と私は正直に感想を述べることにしたのであった。


「扶桑茶のアイスティーと和菓子を呼びつけてあるからそろそろ来ると思うが」といった矢先にインターホンが鳴った。


「俺が受けよう」といってワゴンを取りに行った、「毎度済まないな」というと「これが務めですゆえお気になさらないでください」まぁ確かにと思いながらまたワゴンの交換をした。


 ワゴンを持ってダイニングに入るテーブルの上にアイスティーのデカいポットを置くと和菓子をそれぞれが座る前に置いて行った小さなカトラリーも付けて。

一杯目のアイスティーは既に入っているので、それも皆の前に置いて行く。


「さて食べながらになるが話を聞こう」というと、技術書の話が出て来た然も何方かといえばアスカ嬢の分野であった為「俺の意見よりも間違いなくアスカ嬢に聞いた方が良いぞ?」と私がまじめに冗談抜きに話した。


「商社の専務なんぞをやっていても基本的な技術のそれはスペックデーターだけの話ならいざ知らず。基礎魔導式技術は第一人者に聞くのが一番早いんだ」と私がまじめにいうと。


「アスカ嬢はその辺が手広てびろいからな」といって誤魔化ごまかしながら答えたのである、流石にデザイナーなんだとは口が裂けてもいえないんだが最終日までには。


 事実MLLIを付けて無い時の技術者は私用かそれ以外だから知っていてもその手の話をしないというのがマナーだった緊急時を除くが……で今は緊急時ではないし美味しいものに舌鼓したづつみを打ちアイスティーを美味しそうに飲んでいるアスカ嬢の邪魔をしたくなかったのでその様に答えるしか無かったのである。


「まぁ俺は技術者では無いからな。答えれなくて済まん」と私がヒジリに謝ったのを見たアスカ嬢が声をかけてくれた「どの程度の技術的な話なんですか?」と興味を持ってくれたらしかった。するとヒジリが『データパッド』を取り出し「此処なんですが」といって見せた技術書の端っこ当たりの図面の端の記号類が読めないようだった。


 あーそれは俺にも読めないなと思いながら聞いているとサイズとか縮尺の記号は私にも分かるが。


「此処はこのように読んで内容はこうです」という様に大系列別に教えている様であった、不意に質問が飛んできた「アスカ専務、明日で時間が一から二時間位取れる時間帯ってありますか?」とアスカ嬢がいった。


「明日の昼を食べてそれの後なら時間は取れるぞ二時間位なら行ける筈だが」と私が時計を見ながらいうと「その時間に今日の書店に行くことは可能ですか?」とさらに質問が出たので私がその問いに答えた「明日の昼は外で食べるから行くのは問題ない」といった。


 とお茶が無くなり御菓子を食べ終わったのは一八:三〇だった。


 まぁそれでもヒジリからの質問は止まらず、サヨリ嬢に私が聞いて見た「何かに夢中になるといつもあんな感じかい?」と私が聞くと「夢中になっているのは久しぶりに見ました、ここ最近は魔物の襲来における所謂いわゆる警備員状態でしたから」と厳しめに見た実情を語ってくれた。


「それは丁度良かったかもしれないな。二人でさらに大きく力を付けて帰ると良い」と意味深にいいながら軽く笑顔にして見せた。

「それはどういう意味でしょう?」とサヨリ嬢がいったが「最終日まで隠させてくれ」とサヨリ嬢に私がいった詰まり軽く巻き込んだのではある。


「聖ワイトラウド国王陛下とヒジリに出来る精いっぱいの恩返しがしたい」といって頭を下げることにした、「頭をお上げください卿」とサヨリ嬢がいった「その代わり最終日までは遊ばせてくれないか」と私がいった。


 とこちらのことは気になっていないヒジリと、それに対して熱心に教えるアスカ嬢の姿が有った。


そして時計を見る一九:三〇になっていた。


「ちょっと遅くなったが夕食にしよう。アスカ切れるか?」と私が聞くと「大丈夫ですよ」というアスカ嬢の返答が有った。


「今日は極上のシャブシャブだといった」アスカ嬢のテンションが少し上がった様であった。


「薬では無いから安心してくれ」と二回目の注意を行う羽目にはなったが。


 エレベーターホールで△を押し直ぐに待機しているエレベーターで五十二のボタンを押し上がる、因みに先導方式は昨日と同じ方式である普通に手を繋いで歩くだけというモノではあったが。


 五十二階で降りて扶桑食肉料理とデカデカと書かれた暖簾のれんをくぐりいつもどおり「五〇〇一のアスカ・ジークレフ」と伝えるだけで本日も極上の席に連れて行ってもらえた。



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