第二節:黒い戦士

「セイラン他はまだ来るか?」と私はセイランに聞いた。


「は、はいまだ来ます赤いのが総数十機そうすうじゅっきとさらなる未確認機みかくにんきが三機」とセイランは確認に入った。


「さらなる未確認機も赤いかな?」と私が聞き構えを改める。


赤一あかいち黄一きいち黒一くろいち、の三機ですイニングシアありません」とセイランが詳細なデータを告げる。


「こりゃ大物おおものれたぞ、各機注意。赤だけでなく黄色と黒も居るらしい」と私はいった。


「各員注意せよ」とさらに告げた。



「二番隊は到着次第エージェントを中心に背水の陣を頼む」と私はエージェントのガードを二番隊に任せることにした。


「支部隊隊長突っ込み過ぎないでくださいよ」とはジーンの声だこちらを気遣ってのことだった。


「トルネード斬りを試す、この剣あって初めてできた技だからな。前方の十機はもらったぞ」と私が切れ味をためすかのようにいった。


「対象の雑魚ザコおぼしきヤツの得物は両刃のハンドアクスにスモールシールドだがめてかかるなよ」と私の通信が部隊全部に飛んだ。


「支部隊隊長側に黒と黄色が行きました赤の残りは半々に分かれていますアラワシⅢ側に赤のトップと五機、黒と黄の背後に赤五機」とセイランが告げる。


「アラワシⅢへ手は要るか」と私が聞いた。


「増援は少し欲しいです」とアスカ嬢が正直にいった。


「四番隊の残りをアラワシⅢの背後に回します」とセイランがいった。

 アラワシの後ろに四番隊八機を展開させた。



「このまま次元斬ディメンジョンスラッシュに移るテスト代わりだ。黒か黄色が受けられ無かったら後ろの奴らごとズッパリ切れる筈だ」と私はいった。


 事実ここで次元斬が当たればかなり戦局的にも影響は大きいハズであった。


「こちらアラワシⅢ、敵隊長格てきたいちょうかく一機討いっきうちを行います」とアスカ嬢が宣言せんげんした。


「四番隊、各機は他の赤色が突っ込んで来たら対処たいしょしてください」とアスカ嬢が続けて四番隊の各機に対処願いを出した。


私が「次元斬ディメンジョンスラッシュ!!!」といって一気に踏み込み斬りを行う、直後黒が真上まうえに飛んだ、黄色はしゃがみ込むが遅く頭が斬れて吹き飛ふきとんだ。


 結果を見ずにき、私が若干じゃっかん後退する。


 黒はそのまま降りてきて黒い漆黒しっこく大剣グレートソードを抜いた。


 黄色は頭には何も詰まって無かったらしいがセンサーが半分以上っているため後退せざるを得ない様だった。



「私だセイラン他に敵機の姿は!」と私は焦りかけていた黒の運動能力が怪しかったからでもある。


「今のところ他に敵機見えず……絶えず確認報告いたします」とセイランはサポートに回った。


「アラワシⅢの方は!」と私は得物えものを腰だめに構えながら横構よこがまえを無意識むいしきのうちにしていた。


「アラワシⅢの方速くて見えません!」とセイランがいった。


「五番隊出撃用意MM戦だ!」と私が叫んだ。


「こちらアラワシⅢ相手の得物事対象えものごとたいしょう右腕みぎうで寸断すんだんしました」とアスカ嬢からの敵の一部破壊報告が入った。


「赤色のトップ後退します。アラワシⅢの一撃が見事に入り右肩腕みぎかたうで損壊そんかいした模様もよう」とセイランは状況を一刻々と変わる状況を伝えてくれる。


「アラワシⅢも若干後退します」と続ける状況報告を続けるセイラン。


「支部隊隊長は無事ですか?」とアスカ嬢が聞いた。


「今はな……敵の黒とにらみ合いの真っ最中だ」と私がつぶやいた。



「黒騎士でもいるんですか?」とアスカ嬢が聞いた。


「の様だよ、マーキングこそ消してあるが剣の腕で分かる。アレは十四代目の黒騎士だ!」と私が緊張した様子で答えた。


「黒と黄色の後ろに居た五機は隊長の次元斬が直撃し全機大破です」とセイランが続きを報告した。


「黄色は現在戦線後退中、頭がありませんな」とセイランが追加する。


「アラワシⅢに損害は?」と私が状況を聞いた。


「アラワシⅢは特に損害無しです」とワルキューレ嬢が答えた。


「昔とは違うんだ……」と私が呟いた。


「隊長? どうしたんですか?」とアスカ嬢の声が遠くに感じた。


「いやなんでもない大丈夫だ」と私がいって横構だったものを正眼の構えに戻す。



 すると今度は黒騎士がじりじりと後退し始めた。


 こちらの持つ気迫きはくに押されている様だった。


「分身からのVCヴァキューム・カットで追い詰めてみよう何か変だ……」と私がいった気配けはいが違うように感じられたし以前ほどの迫力はくりょくが無かった。


「確かに以前の黒騎士では無いようですね」とセイランも何かを感じ取ったようであった。


「黒騎士なら基本はサシでくるし何よりマーキングが塗りつぶされている点が解せん」と私がいった、あれじゃ黒い戦士でしかないとも思ったからだったが、戦法を切り替えることにした。


「最大分身で行く! クララサポート頼む!」と私がいった。


「了承しました御存分ごぞんぶんに!」とクララ嬢がバックアップ体制を即時に整えた。


 というとミヒャイルⅡの姿が画面から書き消えるくらいの高速戦闘に飛び込む。VCも全分身体からインパクトブレイドをクロスさせた後に二撃ずつVCを放ち“十字架磔剣クロスソード”と全四十五分身からそれだけの技を同時に放つ。


 流石サスガに十二回分は回避したが残りの三十三発をらった様であった外装がいそう外装装甲がいそうそうこうはもうほとんど落ち切っていた内装ないそうも黒いが内装装甲ないそうそうこうも弾け飛ぶ寸前までいっていた。



 これ以上は動けないであろうことは誰の目にも明らかであった。


「支部隊隊長の方も今のは消費がはげしかったのでは?」とセイランから状態確認が来た。


「ああスタミナをかなり持っていかれたが私はまだ大丈夫だよ」といって一旦刀を収めるが、そのまま無想剣ソードレスの構えに入る。


 黒騎士が持っていた漆黒の大剣しっこくのグレートソードを泥の上に落とす、そしてゆっくりとくずれて行って擱座かくざした。


 立ちあがる気配はないようだった。


 ゆっくりと崩れていくついでに残っていた内装装甲もボロボロと泥の上に落としていた。


「あれから二十年か……」と私が呟く黄色と赤色は既にカメラの範囲外まで撤退した様だった。


(無想剣は格納状態かくのうじょうたいから抜き切る大技おおわざである)



 部隊を前進させてくれ以降の指示はジーンに預ける、と指示を飛ばすと。

 

 一旦オオイクサノダチから手をはな擱座かくざした黒騎士ブラックナイツの方へ向かう。


 そして黒騎士の前で片膝かたひざをつく。


「指揮小隊、アラワシⅢとエージェントが残ります」とアスカ嬢がジーンに告げる。


「FPT一台お借りしても宜しいですか?」とアスカ嬢が追加した。


「最後尾のヤツをお貸しします」と五番隊隊長ライアルドがいった。


「アラマキ機も残って救護きゅうごを」とライアルドがいった。


「了承しました」とまだ若い十歳くらいの若い騎士が残った。


「パイロット部分だけオープン」とクララ嬢に告げる「了承しました」とクララ嬢。


 黒騎士ブラックナイツのコクピットハッチはすでに割れていた。


 隊長機の右後ろ側でFPTがハッチを空けていた、中から若い騎士を左手に乗せたギルデュースが現れた。


 そして、

「隊長たちの会話を真摯しんしに聞いていた」


 私は「クララ、黒騎士のコクピット前にミヒャイルⅡの手で足場あしばつくってくれないか」とお願いした。


 すると「行ってらっしゃいませ」とクララ嬢がいって対応する。


 アラワシⅢも左側に同じように片膝をつき右手をその足場に接触させていた。アスカ嬢が白い応急処置おうきゅうしょちボックスを持って降りてくるのが分かる。


「ワルキューレは、そのまま周囲監視しゅういかんしを続けて」とアスカ嬢がいって腕をつたってけていく、ミヒャイルⅡの両手まで。



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