第7話 盗賊団

 車列はゆっくりと走る。

 地形が大きく変化した為に主要な幹線道路の多くは寸断されている。

 当然ながら、道路の復旧は殆ど、出来ず、通行不可能な場所を迂回する。

 田中は厄災前からトラックに乗っていたベテランだ。

 慣れた感じにハンドルを回す。

 「昔は高速道路であっと言う間に名古屋でも大阪でも行ったもんだがな」

 カーオーディオからは演歌が流れる。若手演歌歌手だったらしいが、厄災の時に亡くなったらしい。

 「しっかし、今更、女子高生を見るとは思わなかったし、エルフとはな」

 「エロい目で見たら撃ち殺す」

 紗季は冗談交じりにそう言うと、田中は笑いながら「こおぇ」と言う。

 地形の変化はすさまじく、アスファルトは盛り上がり、割れて、草木が生えている。建物も倒壊が多く、水道管もガス管も破裂している為、全ては止められてる。すなわち、都市機能は完全に失われ、食料事情の問題から、都市部に人は住んでいなかった。その中を車列は進む。

 「何度通ってもかつての東京とは思えねぇな」

 田中は感慨深く景色を眺める。

 「昔の東京ってどんな場所だったの?」

 紗季は何気に尋ねた。それに田中は笑いながら答える。

 「そうだなぁ。渋谷や六本木はお嬢ちゃんみたいな女子高生やら若い奴がいっぱいだったな。新宿とかは俺らみたいなおっさんでいっぱいだ」

 「何それ?」

 「はははっ。東京はデカいから、年齢層で遊ぶ所が違うって話だ」

 「ふーん・・・まぁ、大きいのは解るわ。この辺は私達の狩場だったから」

 「狩場って・・・この辺は結構、ヤバい魔物が出るんだろ?」

 「ドラゴンとかね。あいつらは車列を襲わないの?」

 「あぁ、あいつらは賢いからな。こっちが半端じゃない武装をしている事を知っているから手出ししない。大体、襲ってくるのは知能の低い奴等ばかりだ」

 紗季は確かにその通りだと思った。トラックの車列の前後には装甲車がおり、40ミリグレネードランチャーや50口径重機関銃を搭載している。トラックにも運転席の上にはターレットが装着され、そこには軽機関銃が装備されている。これだけの武装があれば、ドラゴンだって、殺せる。

 「魔物よりも怖いのはむしろ人間さ。それと異世界人」

 異世界人とはエルフやドワーフと言った異世界で人間並に知能を有した種族の事だ。意思疎通が可能な事から人間は彼らを異世界人として、人間と同等としている。

 「異世界人?」

 紗季は不思議そうに尋ねる。

 「ははは。エルフは人間と上手くやってるから、そうでも無いが、ドワーフとか、ゴブリンって、人間から迫害を受けた奴等は生きる為にこうした車列を襲って来るのさ。あいつら、小さい割りに頭はそこそこイイだろ?人間の武器とかも器用に扱いやがるからな」

 「銃を使うって事?」

 「あぁ・・・無論、奪った奴だから、弾薬とかは不足気味であまり多くは無いがね・・・使われると厄介だよ。こっちだって、ただのトラックだ。防弾ってわけじゃない」

 「嫌な話ね。ここで蜂の巣なんて嫌よ」

 紗季とシャルナはトラックの扉を見て、嫌そうな表情をする。するとシャルナは思い出したように言う。

 「ゴブリンは頭が悪いですけど、我々、エルフなどの女を捕まえると・・・その・・・陵辱するとか聞きました」

 それに紗季が露骨に嫌そうな顔をする。

 「何それ?気持ち悪い」

 「そうですね。だから、エルフはゴブリンを嫌います。彼等には理性ってのがありませんから」

 「異世界でも嫌われ者って事ね」

 それを聞いて田中は大笑いをする。

 「あぁ、ゴブリンは最悪だな。あいつら、人間も食うらしいしな。女はレイプされながら食われるとか言われてるぜ」

 「ほんっとに嫌だ。皆殺しにしたい」

 紗季は怒りを露わに自動小銃を握り直す。

 

 高速道路が使えない為、国道1号線を走り、倒壊を免れた数少ない橋、多摩川大橋の手前まで迫った。その時だった。突如、銃声が鳴り響く。戦闘の装甲車に火花が散った。

 田中はそれが襲撃だと感じ取り、紗季に怒鳴る。

 「襲撃だ!出番だぞ」

 紗季は咄嗟に天井の扉を開いて、座席の上に立ち、目の前にある62式軽機関銃のコッキングハンドルを引っ張る。ベルトに連なる弾薬が銃に吸い込まれた。

 「トラックの窓に装甲板を提げる」

 田中がハンドルの下のレバーを引っ張ると、窓の上に跳ね上がっていた装甲板が下がり、窓を覆う。視界は装甲板に一本の線のように開かれた部分だけだ。視界が狭くなり、トラックの速度が落ちる。

 紗季は火点を探る。すると彼女の頭を矢が掠める。

 「マジかっ」

 紗季は慌てて、ケプラー製のヘルメットを被る。見上げれば、ビルの屋上などに人影が見えた。それはまるで子どものように小さい。そして、半裸で緑の肌。

 「ゴブリンかよっ」

 吐き捨てるように言う紗季。それは田中達にも聞こえた。

 「とにかくここを抜ける。あいつらに車に追い付ける足は無い」

 田中は懸命にハンドルを回した。

 紗季は軽機関銃を動かし、射撃を始める。

 それぞれのトラックから反撃が始まる。

 装甲車の50口径重機関銃は建物の壁さら貫き、集まって来たゴブリンの身体を挽肉にした。だが、ゴブリンの数はかなり多く、少数ながら、自動小銃などの銃器も手にしていた。

 銃弾がトラックに穴を開ける。だが、それで簡単に停まるわけじゃない。

 激しい銃撃が次々とゴブリンの死体を作り上げる。だが、それでも奴等は諦めない。手に斧や弓を持ち、襲い掛かって来る。半端じゃない繁殖力で数で襲い掛かるのが奴等の戦術だ。縄張り意識が強く、基本的にドラゴンなどに捕食されるだけの生き物だから、普段はあまり気にしないが、当初は人間にとって、天敵であった。

 紗季は懸命に軽機関銃を撃つが、すでにオンボロなのか、20発程度を撃つとジャムった。その度にコッキングハンドルを引いたりして、不発弾を外すのが手間だった。

 「もう!シャルナ、私の銃を取って、こいつ、役に立たない!」

 紗季がそう車内に叫んだ時、突如、紗季の真横に何かが飛び降りて来た。

 

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