第5話 旅立ち

 正体を明かしたミョルムは改めて、話を始めた。

 「どこから話した方があんたには理解が出来るか・・・まずは世界樹かね」

 「せかいじゅってなんだ?」

 「世界樹は神々の木と呼ばれる世界の根幹を成す大木だ。枯れる事も折れる事も無く、世界を形作る為に根を生やしているとされる。その根は幾つもの世界に伸びているともされ、世界樹を登れば別の世界にも行けるとされている」

 「それが世界樹ね。その根が私の世界にも根を張っていたわけ?」

 「そうなるな」

 「面倒な話ね。その厄介な木のせいで世界はこうなったと?」

 「違う。いや・・・違わないか。世界樹は多くの世界と繋がる。その為、繋がっていた世界の一つであるお前等の世界が影響を受けて、引き寄せられたのだ」

 「なるほど・・・それで竜との関係は?」

 「私にもわからない。竜が何故、どうやって、世界樹と繋がったのかわな。ただ、占いでそう見えたからそう話しただけだ。竜の考えまでは知らない」

 「役に立たないわね」

 「すまんね。こっちも万能じゃないんだ。ただ、その竜を討たないとこの異常な状況は改善されないどころか・・・いつか崩壊する」

 「崩壊?」

 「当たり前だろ?まったく理の違う世界が強引に重ねられているんだ。保てるわけがない。やがて互いに干渉し過ぎて、自壊を始める。そうなれば、誰にも止められないまま、世界は消滅するだろう」

 「簡単に言うわね。それで・・・それをさせない為にその竜を私に殺せって?」

 「そうだ」

 紗季は呆れたように嘆息する。

 「その話は自衛隊とかにはしたの?」

 「したさ。だが、信じて貰えなかった」

 「まぁ・・・今の自衛隊は魔物退治と現状維持に手いっぱいだし・・・そんなファンタジーな話をどこまで信じられるか」

 「ふん・・・すでに状況はお前等の言うファンタジーだろうに。まぁ、彼等なりに検証はしたようだが・・・世界樹を見付ける事が出来なかったとも言っていたな」

 「へぇ・・・自衛隊が調べて見付けられないような代物なら・・・眉唾もんね」

 「ふん・・・仮に信じなかったとして・・・世界が消滅するのも時間の問題」

 ミョルムの言葉にシャルナは怯えたように涙ぐむ。

 「紗季さん!巫女様の仰る事は本当です。このままでは世界が無くなってしまいますよ。何とかしないと」

 それを見た紗季は胡散臭そうにミョルムを見る。

 「まぁ・・・面白い話だけど・・・その世界樹は関西の何処にあるの?」

 「それは解らん。私の力でも大雑把な位置ぐらいしか解らぬ」

 「はぁ・・・大きな木なんでしょ?それに竜がくっついているなら・・・解らないわけがないでしょ?」

 「その辺は何とも言えん。ただ、その辺も含めて、探し出すしかないだろ」

 「簡単に言うわね。どうやって探し出せと?」

 「竜だ。同じ竜ならば、知っている可能性もある。竜から聞き出しながら、探し出せ。その為にも竜を狩れる者でないと・・・」

 「だから・・・私なのね」

 「うむ。一目でお前が竜を狩れる者と解ったからな」

 紗季は再び、嘆息する。

 「旅をするにも金は要るし・・・関西となれば、簡単には行けないわよ」

 「その辺もあんたなら何とかするだろ?根性がありそうだし」

 「勝手な話ね・・・。解ったわ。どうせ、家も失って、流浪の身だからね。気ままに旅するのも悪くは無いわ」

 「出来れば、急いで欲しいけどね」

 「間に合わなかったら、この世界の運命がそこまでだっただけよ」

 紗季は立ち上がる。

 「さて・・・そこまで頼むなら、出すもん出すな」

 紗季は再び、拳銃をミョルムに突き付ける。

 「強盗かい?」

 「報酬を受け取るのさ」

 紗季はニヤリと笑う。それにミョルムは嘆息する。

 「解ったよ。少ないけど、旅支度に使ってくれ」

 ミョルムは金貨の入った革袋を机の上に置いた。すでに紙幣などは価値を失い、現在は金貨と銀貨、偽造の難しい貨幣だけが用いられている。

 「結構、入ってるわね。これだけあれば、1年は何もしなくても食べていけるわ」

 「ふん。銃器や弾丸を買うなら、それでも足りないぐらいだろ?」

 「解ってるじゃない。まぁ、仕事は請け負ったわ。ダメでも恨まないでね」

 「ふん・・・その時は一緒にあの世だよ」

 紗季は革袋を背嚢に入れて、最後にカップのお茶を飲み干した。

 「まぁ・・・いっちょ、頑張ってくるから」

 紗季とシャルナは扉から出て行った。

 残されたミョルムは疲れたように嘆息をする。

 「あんな子に任せて良かったのかねぇ・・・後悔しそうだよ」

 

 紗季はシャルナは街で旅支度を整えた。

 必要なのは野営具に携帯食料、予備弾丸。そして、銃の整備だった。

 街には銃砲店がある。ここで銃の整備をしてくれる。ただし、完璧に出来るかは難しい事もある。

 店の店主は紗季が渡したバーレットM95対物ライフル銃を眺めながら言う。

 「お嬢ちゃん。こんなすげぇ物を持ち込まれても・・・何ともならんよ」

 それを聞いた紗季はイラっとする。

 「なんでよ?」

 「そりゃ・・・元々、数が少ない銃だしな。国内で部品を作ってたわけじゃないからな。銃身が摩耗しているけど・・・アメリカから取り寄せってわけだが・・・そんなのいつになるか解らんぞ」

 「そ、そう・・・解ったわ。預けておくから、直しておいて頂戴」

 「あぁ、まぁ、発注しておく。だけど、銃はどうするんだ?こんな化け物銃はここにないぞ?」

 「そいつで良いわ」

 紗季は店に置かれている六四式自動小銃の狙撃型を指差す。

 「あぁ、そいつか。整備は完全だからな」

 「あと、シャルナ用にそっちもね」

 傍らにあったMP5A5短機関銃を手にする。

 「あぁ、それか。整備はしてあるけど、元はSIT用で連射機能が無いぞ?それにそいつもドイツ製だから・・・整備は手間が掛かるしな」

 「構わないわ。どうせ、自衛用だしね」

 紗季は二丁と予備マガジンなどを買って、店を後にした。


 紗季とシャルナは旅支度を終える。

 紗季はいつも通り、高校の制服姿だが、シャルナはジャケットにハーフパンツ。そして、マントを羽織っていた。

 「旅支度は出来わね。銃は・・・心許ないけど・・・まぁ、良いわ」

 紗季は新たに手に入れた自動小銃を肩に提げた。大きな背嚢を背負った二人は街の外へと歩き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る