第40話「幼女との関係」
「い、いいの?」
春野先輩は俺の言葉を聞いて期待したような目でこちらを見てくる。
半分冗談で言ったつもりだったのだけど、こんな目を向けられると冗談にはできない。
「えっと、さすがに今は無理ですけど、今度二人だけの時でよければ」
「逃げた」
「いや美優さん、逃げてませんよ。本当に二人きりの時だったらしますので」
今はしない事を伝えると美優さんが速攻でツッコんできたため、二人だけの時ならする意思がある事を伝える。
だけど美優さんから向けられたのは疑いの目だった。
「男だったら彼女の期待にはすぐに応えないと」
「ところ構わずいちゃつくような人間は駄目だと思います。俺は場をわきまえているのですよ」
「むっ、私に歯向かうなんて珍しい」
歯向かったわけじゃないけど、確かに美優さん相手に言い返すのは珍しいかもしれない。
意見がぶつかる事自体がそうそうなかったからだ。
「んっ……!」
美優さんと話していると、まなが再び服を引っ張ってきた。
頬を膨らませている事からケーキを早く食べさせろと怒っているようだ。
とりあえずここはまなを優先しておこう。
俺は物言いたげな美優さんと、残念そうにシュンとしてしまった春野先輩を横目にまなの口へとケーキを入れ続けた。
やがて、まなのケーキは全てお皿の上から無くなる。
まなはまだ物足りないのか、自分のケーキがなくなるとその隣にある俺のケーキを物欲しそうな目で見つめた。
「こっちも食べる?」
「んっ……いい。にぃにの……。ねんね……」
どうやらまなは俺の分だから食べないと言っているみたいだ。
そして俺と向き合うように体制を変えて体を預けてきた。
ケーキを食べて眠たくなったから寝るとの事らしい。
「俺はいいから食べていいよ?」
「んっ……いい」
「食べてすぐに眠ると体に悪いよ?」
「ねんね……」
会話になっているのかなってないのか微妙な感じでまなは目を閉じる。
こうなったら俺の言う事でもまなは聞かない。
無理に起こそうとすればとてつもなく機嫌が悪くなって泣き喚くくらいだ。
実際過去に起こした時は泣き喚かれた後数時間機嫌が直らなかった。
「その子、本当に冬月君に懐いてるんだね」
スヤスヤと寝息を立てるまなの寝顔を覗き見ながら、母性にありふれてそうな表情で春野先輩が声をかけてきた。
この表情を見るに子供の事が好きなんだろう。
「まぁ、色々ありますからね」
「色々って?」
「えっと、それは……」
まなとの事を聞かれ俺は思わず言い淀んでしまう。
話しても大丈夫なのかな?
でも、知ると春野先輩が気を重くするかもしれないし……。
「話しておいたほうがいいと思うよ、その子の事は」
俺が悩む様子を見せると、すかさず美優さんが口を挟んできた。
当然この人は俺とまなの関係を知っている。
そんな美優さんの判断としては、早めに春野先輩には話しておいたほうがいいとの事らしい。
うん、まぁ先延ばしにするよりは今話しておいたほうがいいか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます