第21話「繋がり」
「お金、ないんですよ。材料とか買うお金が」
俺は白雪先輩の言葉に疑問を抱きながらも、どうして自分がお弁当を作ってこないかを答える。
あまり言いたくない言葉ではあるのだけど、多分誤魔化してもこの人には通じない気がした。
だから正直に打ち明ける。
しかし――。
「……つまらない嘘をつかれるほど、私って信用がないのかしら」
「えっ?」
「別に、なんでもないわ」
明らかに何かあるような態度でそっぽを向く白雪先輩。
どうやら俺は彼女の機嫌を損ねてしまったようだ。
おかしいな、俺はちゃんと正直に答えたはずなのに。
確かに俺はバイトを掛け持ちしているおかげでお金は結構入ってくる。
そして、本当にたまにではあるけど賞金が入ってくる事もあるんだ。
だけど、家賃や水光熱費、授業料にお金は消えるし、残ったお金のほとんどは使うべきところに使ってる。
だから手元に残るお金なんてほとんどない。
とはいえ先程の様子を見るに、白雪先輩は俺にお金が入っている事は知っているようだ。
それも、バイト代だけじゃない事も。
……あれ、そういえば白雪先輩の名前って――。
「――ふぶき、冬月君は嘘をついてるわけじゃないよ? 彼の事情はふぶきも知ってるよね?」
考え事をしていると、隣にいる春野先輩がフォローをしてくれた。
その言葉を聞き、俺は昨日の事を思い出して確信をする。
昨日春野先輩が言っていた『ふぶき』という女の子は、まず間違いなく白雪先輩の事だ。
彼女がコンテストなどをよく見に行く熱心な人だったというのはとても意外だけど、そうなれば彼女が俺の事を知っていた事もわかる。
美優さんのお店で働くようになってから俺は、どうしても他のメンバーがコンテストに出られない時にだけ代わりにコンテストに出る事があった。
とはいっても回数で言えば一桁なのだけど、コンテストを頻繁に見に行っているという白雪先輩なら俺を見た事があっても不思議じゃない。
一応これでも、今のところは全て優勝しているからね。
まぁでも、美優さんにつきっきりで教えてもらっているのと、お店を代表して出る以上そう簡単に負けるわけにもいかない。
それに、美優さんはバイトの俺が出る事には難色を示しているため、大した大会には出させてもらっていないだろうから優勝するのも当然といえば当然なのだけど。
他のメンバーは大きな大会で優勝してきているらしいし、そこまで大きくないような大会でたった数回優勝しただけでは調子に乗る事もできない。
むしろもっと頑張らないといけないと思っているくらいだよ。
――まぁそれはそうと、どうやら春野先輩だけでなく白雪先輩まで俺のお金の使い先を知っているようなのだけど、生徒会の情報網はどうなっているのだろうか?
全校生徒の事を事細かに調べ上げているのかな?
それともあれかな、春野先輩がスト――いや、やっぱりなんでもない。
まだちゃんと付き合ってるとはいえないような関係だけど、それでも春野先輩は俺の彼女になる。
彼女の事をさすがにそんな風に思ってはいけないと思う。
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