第20話「温度差」
生徒会室に着くと長机を挟んで俺たちはそれぞれ席に着く。
春野先輩は少しだけ離れたところに生徒会長用の机と椅子があるのに、どうやら使うつもりはないらしい。
顔を赤らめながらもニコニコ笑顔で俺の隣に腰を下ろして幸せそうだ。
逆に白雪先輩と翔太の雰囲気はよくない。
白雪先輩は明らかに不機嫌そうだし、翔太はそんな白雪先輩と一つ席を開けて座ってるけど、それでもかなり気まずそうだ。
女の子を相手にたじろぐ翔太は滅多に見る事ができない。
そんな相手、美優さんくらいだと思っていた。
というか、いつも生徒会で翔太は大丈夫なのかな?
あまりにも仲が悪そうな雰囲気にさすがに心配になってくる。
「今日
目の前で黒いオーラを纏っている二人を見ていると、春野先輩が小首を傾げながら俺の顔を覗き込んできた。
あざとい――と思ったけど、おそらく先輩は素でやってるんだろうな。
かわいいしいい匂いがするしで、ちょっと気持ちが高ぶった。
ちなみにどうして今日も俺がパン一つだという事を知っているのかについてはツッコまない。
この人はこういう人、そう思っていたほうが気が楽だ。
「…………」
「いや、あの、白雪先輩……? そんな睨まなくても何もしませんよ……?」
気が付けばジッと白雪先輩が俺の顔を見ていたため、念のため言葉にしておく。
さすがに殺気のような恐ろしく怖い物は感じなかったけど、翔太の件で怒っていたからか雰囲気は怖い。
いったい何を考えて俺の顔を見つめているのか……。
「失礼ね、ただ見てただけじゃない。それよりもなんでお弁当作ってこないの?」
「えっと……?」
「パン一つなんて栄養が偏るし、それだと量が足りないんじゃないかしら? 女の子でももう少し食べるわよ。それに、あなたなら料理をすれば凄くおいしい物を作れるんだし、お弁当を作ってきたほうがいいじゃない」
確かに先輩が言ってる事はごもっともなんだけど、お弁当を作るための材料を買うお金が俺にはないんだよな……。
こういうところをズバズバ言ってくるのは噂通りという事なのかな。
ただ、ちょっと待ってほしい。
なんで俺が料理できる事を白雪先輩が知っているのだろうか?
春野先輩か翔太――翔太はないね。
こんな雰囲気で俺の話題を翔太が白雪先輩にするとは思えない。
となると昨日の事を春野先輩が自慢したのだろうか?
でも、なんだか俺の料理の実力を知っているような口ぶりだったし、それも違うように思えるんだよな……。
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