”無手”予選~それぞれの思惑~
「
皇族、王族だけの特別観覧席で、我が事のように皇帝ダオがタイチの【武道】を自慢していた。
「有用と言わざるを得ないが。逆を言えば、本人の”適性”以外の強さ。私は
それを異を唱える痩せぎすで、眼鏡をかけた和装の男性。
西欧の列国”
「グハハハハ! ”
豪快に笑う筋骨隆々の大男、常人の二人分の座席に腰掛ける金髪のたてがみ。
極東の島国”
「田舎者と言うな、アレク殿。同じく”四瑞”の加護を受けるワシらまで田舎者になるだろがい! しかし、
アレクセイと同じく筋骨隆々だが、背丈が少年ほどしかない
技術と工業と資源の国、常夏の南国”タルワール”の国王、グリム・ドヴェルグ。
__『続いて、流浪の新人! テスラ選手とは違った意味での未知!
「名ぁは、うちの国なのに、格好は”タルワール”風ですなぁ。お顔付きは”チービー”やろか? よお分かれへん選手やわあ」
「ほんまやねぇ。なかなか強そな感じやけど、聞いたことも無い名前やん」
研究肌、学者肌の将軍ヒデアキに成り代わり、”ダーフォ”の政務のほとんどを執り行っている姫君、”女王”コバヤカワ・サヨと、特級
__『それでは____”
「相手が誰であれ。
タイチに窮地を救われ、他国で最初に【武道】を見たであろう”ヤンルーブォ”の姫、ロゼ・レオニダスが過剰な期待を寄せていた。
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ー
「ロゼが、いたくタイチを気に入っている理由が分かったぞ。迷惑を掛けたことも有るが、俺が全盛期でも【武道】に勝てるか分からないからな。是非、俺の国に欲しい! それこそロゼを嫁にくれても良いくらいだ!」
「まあ!? お父様ったら、うふふ」
「アレク殿! 【
父、アレクセイの発言をまんざらでもない様子のロゼを見て、タイチを、【武道】を受け入れようと考えていたグリムが出遅れたことを焦っていた。
__「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」
「獅子身中の虫。”武器”を持たなくても、攻撃が出来る【仙術】を持たなくても。その身1つで、人が殺せる【武道】。暗殺などの危険が増すのが何故、分からぬ。田舎者だな」
「お父はんは、ちと臆病と思えますが、まあ危険やわ。”武器”に、仙力の高まりに注意しはるだけやなく、所作まで気ぃ付けるのは難儀ですえ」
「サヨはんが、そう言うなら従いまひょ。個人的には、シロちゃんは珍しいモンは好っきやけどね」
否定派である”ダーフォ”の親子が、タイチとミツトラの戦いに沸く観衆の声を聞きながら、【武道】の危険性を説いている中、”九尾”のシロは中立といったところであろうか。
「
普段と違う”無手”での観衆達の歓声を聞きつけたのか、ちらほらと観衆の数が増えていくことに、タイチを招聘した皇帝ダオだけが、独り満足気だった。
観衆の歓声が観衆を呼び、集まった歓声が更に観衆を呼び、全盛期の”無手”が取り戻されていくことに、童心に帰ったように満足気に見つめているのだった。
ーーーーーー
「ダオ殿よ。娘のシーが政務もせずに”
「フーのことか。順当に行けば継承権3位なのだが、
テスラとの戦いとは打って変わって、【
当初、正体に気付かれぬように施していた【隠蔽】がタイチとの戦いにより、勝つために回す余剰の仙力が無いと示すように効果を弱めた結果だった。
「”
「あら!? タイチ様も対極ですが、紳士な御方でしたわね。ねえ、サヨ様。”特別”でいて”特別”な人でしたわよね」
__『場外! 勝者!! コレエダ・タイチ!!!!!』
__「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」
「ほら! 今だって
「……そやねぇ、ロゼはん。おほほ。ほんま、そやねぇ。おほほほほ。どこぞの
ロゼは遺恨を忘れて、純粋にタイチの人間性を褒めているのかもしれなかったが、策謀渦巻く国の政務を取り仕切っているサヨには嫌味にしか聞こえていなかったのだろう。
一触即発の空気の二人に気を取られたのか、【
ーーーーーー
『タイチではなく、チュイなる男にシーの予選の相手をさせろと言うのか?』
『俺に敗れて本選に出られなくても
「俺の教えた【武道】で勝てるはずだ。持って産まれた、恵まれた”体格”。充分な【身体強化】、癒しではないが
この世界で初めての”弟子”となるチュイを励ます。
『それならばシーを説得出来ようが……。勝てるのか? シーは白虎の【仙術】の”適性”は無くとも強いぞ』
『極端な
「正直、この【武道】に関してなら、チュイの方が才能が有るはずだ。だから、
「タイチ……」
緊張でガチガチだったチュイの瞳に”炎”が、”戦士”が宿る。
「『勝つのは____チュイだ!!!』」
__『予選の最終戦! 我が国が誇る”
この国が、この世界が初めて記憶し、記録する”
”
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