負けが許されぬ【戦い】

 ”無手”、”仙術”、”武器”それぞれで細かいルールは違うが大体は同じだ。



 参加者の頭上に直径一メートル程の光る”球体”が出現し、試合中に割れれば敗北になる。

 ”球体”は参加者の生命力を大きさで表し、仙力シィェンリーを光量で表しており、直接的な破壊は基本的に不可能で禁止だという。

 怪我を負えば小さくなり、使った仙力を光が弱まる。

 治すのも補充も任意で選べるが、限界を超えた場合に割れることで敗北を示すそうだ。




 球体は死者が出ないようにするための救命装置と、勝敗を分かりやすくするためのモノで有るそうだ。






 ーーーーーー






「補足として仙力補充は【神技シェンジー】1回分までだ。それ以上だと、。よって、タイチにも1試合で【神技】は1回までの【縛り】を守ってもらう。それはシーも同じで、他の参加者もだ」


「【神技】を使うのが1回だけの話で。結果、使った仙力が【神技】数十回分でも。球体も会場の結界も全て”媒介”による【神技】で創られているから、2度掛けの【神技】を使われるとタイチが【不死】を破った時と同じになるからね」


 皇帝ダオの説明に、ホンからの補足が入る。


 相反する【神技】同士なら、より強く、より多くの仙力が込められているほうが打ち勝つ。

 聞いた話を総合すると複数の”媒介”を使って、球体や結界を創っているようだが二回分の【必殺神技】を込められては死者が出てしまう為だろう。




「最終的に何試合するのかは分からないが、毎回の試合で【神技】を使われたらが何個あっても足りないのでは?」






 __「……説明してなかったの? 貴女達」


「「「ひっ!??」」」


 最後に憑いた精霊ジンリンのホンが俺の発言から説明不足を察し、リウやガンちゃん、シンに鋭い非難の眼を向けていた。




「タ、タ、タイチさん! 覚えていますか!? 2級妖魔ヤオモの”まだら蜂蛇フォンシェ゛ァ”の仙石シィェンシーで仙力を回復したことを!!」


 弾けるようにホンの非難を、を回避するために、我先にと説明する為に精霊達が押し掛けてきた。


「タイチ様! 実は【神技】の仙力は2級の仙石で物足りなくて、1級で少し過剰、特級は充分過ぎる程に過剰なんだよ!!!」


「タ、タタ、タ、タイチさん!!! 1級や特級の仙石の利点は飲み込めるほどです!! 質の問題ですね!」




 __「あ゛あ゛ぁん!!! 今はは関係ないでしょう! ……再教育お仕置きね」



「ふぎゃああああぁぁぁあああ!?? 何でボクだけ!? 何でボクだけなんですかぁぁ!??」


「そうですよぉ! かわいそうじゃないないですかぁ!!」


 ホンの叱責に泣き叫ぶシンが、ジィェンに抱きしめられながら慰められていた。




「ふぎぃ……ふ…………ママぁムーチン……」


 慰められながら、寝入ってしまった……。






 ーーーーーー






「そういった訳で仙力の補充、”媒介”の消費については気にすることはない。”媒介”の最大の利点は適性の【仙術シィェンシュ】を使えることにあるからな」


 さすがは為政者、一連の騒動に全く動じないで説明を続けていた。



「例えば、フェイ・ランはシーよりも仙力を有しているが、どの系統の【神技】を使うことが出来ぬ。その代わりなのか全ての【仙術】を【精霊技ジンリンジー】まで使えるがな」


「タイチ師父シーフー。逆に【神技】を使えても仙力が足りない人も居ます。そういう人が仙石で回復しながら【神技】を使う場合も有ります。基本的に時間が掛かるので、実践的では無いですけどね」


 俺よりも主人公しているフェイ・ランの弱点、俺より劣っている所を知って、内心ほくそ笑んでいた。






「…………ちなみにですが。私も”いかずち”は使えますよ。タイチ師父シーフー


 俺の些細な優越感を察したのか、負けじと粉々にしてくるだと!!?






 ーーーーーー

 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー


 ーー


 ー






 ムーダンの中央付近に位置する傭兵受付に、先に向かっていたチィェン達と合流するために移動する。


 宮廷を出てバスに乗り、電車に乗り、またバスに乗る

 前世でのサラリーマンのような移動に、何処か懐かしさを感じていた。






「あ! タイチ! こっちだゾ! 愛しのトウコツは、ココだゾ!!!」


「タイチ様、この受付のチィェンが、しっかりと大会への参加受付を済ませておきましたよ」


「すまなかったな、チィェン。手続きなんかの雑事を任せてしまって」


 戯言を言っているトウコツを無視して、俺のために雑用をしてくれたチィェンを労う。




「これくらい何のことはありませんよ! しっかりと”無手”____の全ての部門に参加受付しました!」


「待て!?? 俺が参加するのは”無手”だけじゃなかったのか!!?」






 ーーーーーー






 ”極真武ジーヂェンウー”は国同士の代理戦争の意味合いが有るが、市勢の一般人にとっては”祭り”のようなモノ。

 こういった”祭り”に付きものの”賭博”も存在している。




「タイチ様が”無手”に参加するのは皇帝様からの≪指名依頼≫で≪強制依頼≫ですが。もったいないじゃないですか!? 現在、タイチ様は”無手”で1,5倍。”武器”で4倍。”仙術”に至っては、なな何と! 12倍ですよ!?? 12倍!!!」


 当然のように参加が予想される実力者達は、すでに賭け率オッズが存在している。

 日本の”競馬”のように始まる瞬間まで賭けられるが、外国の”ブックマーク”と呼ばれるで配当金が貰える方式。




を3等分して、全部門に賭けておきました! チヒヒ! ”無手”は確実なので! チーヒヒ!! 他の部門でも優勝すれば____チィーーヒヒヒヒヒヒ!!!」


 うわ~~、目が凄い”金”マークだし、凄い笑い声と笑顔だしで___




 ___ドン引きである……。






 ーーーーーー






「はあぁぁあぁ……。八百長を禁止するために参加者と親しい関係者は賭けられないわ。それは大会用の【神技】に盛り込まれてる。【ルール縛り】だから隠れて賭けることも出来ない。受付といっても、親しいと判断されなかったのね」


 賭博によってもルールが存在し、参加者は自分自身にしか賭けられなかったり、そもそも”賭け”に参加することさえ禁止しているモノも有る。

 この大会では【神技】による厳正な判断によって関係者は、そもそもさえ抱かせないようだ。




「はあぁぁあぁ……。……チィェンと言ったわね。タイチが”青龍流れ”と”白虎強化”の適性なのは知ってるわよね? ”仙術”が”朱雀放出”有利。”武器”が”玄武武器”と”朱雀威力”有利なのは、ご存知?」


「チヒヒ! はい! ホン様! ですから”無手”は楽勝でも他部門で不利だと考えられて、この倍率なのでしょうね! ですが、情報が古いのでしょう! チヒヒ! 今では玄武の精霊シン様朱雀の精霊ホン様が憑いて___



 __「私とシンは”補助”出来ないわよ?」



 ___……へっ!????」


 満面の笑みだったチィェンが凍り付く。



 ____「を競う大会よ? 外部の手助けは禁止に決まっているでしょう」



「チヒ? チチチチチチチ!! …………アババババ!!???」


 喜色満面だったのが、蒼白になり、冷や汗が溢れ出し、口から泡を吹き始めていた。



 ______「皇帝からタイチに特別な”縛り”を貰ってるし、”無手”ですら怪しいモノね。






「あぁ~~あ。下手すりゃあ、だよ」


「!!??? タ、タタ、タ、タイチ様ぁぁぁぁああぁあぁぁ!!!!?」


 ガンちゃんの無神経な一言で髪を振り乱しながら俺に縋り付いてくるチィェン。




「お労わしや、チィェン殿……」


「ツァィちゃん……チィェンちゃんを見ないであげて欲しいお……」


「タイチ様! どうか!! どうかぁあ!!!」


 俺に縋り付くチィェンの爪が肉に喰い込み、非常に痛い。




「自業自得です。やはり無駄遣いは駄目ですね。堅実に行かないと」


「リウさん、放っておきましょう。タイチさぁんで、お金儲けしようとした罰ですよぉ」


「せめて! せめて”無手”で優勝してください!! でないと、生活が!!! 生活がぁぁああぁぁあぁあ!!!??」


 凄まじい力と執念を感じ、すれば良いのでは? と考える。




「凄い執念だゾ。ウチの【呪い】に勝るとも劣らないナ!」


「なんでもしますからぁ! なんでも、しますからぁぁああぁ!! どれか1つでも優勝してください!!!」






 大会が迫って来ていた……。






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