後輩6-9(東雲視点)
今回は一ノ瀬麗の使用人の東雲視点になります。
伊澤さんを送り、一ノ瀬家へと向かう。私は麗様の使用人なので毎日住み込みでお世話をしている。まあお世話といっても麗様はほぼ全ての事を自分でやってしまうので今となっては特に何もすることはない。
やることがあるとしたら、週に2、3回夜に麗様の愚痴を聞くくらいだ。
土曜日はほぼ必ずあるので今日もお茶の準備をしておこう。
今夜は特に楽しみだ。麗様が男の人とキスをするなんて初めて見た。一応伊澤様にはお礼ですとは言ったが、少なくとも麗様がお礼でキスをしてるところなんて一度も見たことない。しかも男となれば尚更だ。麗様はあれほどの美貌にもかかわらず、浮いた話が全くと言ってない。男女から幅広く告白は受けているが、ものの見事にすべて断っている。まあモデルの仕事をしているとろくでもない奴から軽い告白をよくされるので、全部断るのは当然といえば当然だ。でも恋愛系の話が全くないのはそれはそれで心配になってしまう。
麗様の部屋にノックをして部屋に入る。
「東雲、やけに機嫌が良さそうね」
「はい、今日はすごく楽しみにしてましたから。まさか麗様と恋バナができる日が来るとは」
「恋バナってさっきのキスのこと?あれは別に他意はないんだけど?」
「好き以外の意味はないと」
「違うって。お礼だって言っているでしょう」
「あのお礼は初めて見ましたよ。お礼なら札束握らせればいいじゃないですか」
「私のイメージどうなってんのよ。まあ初めてしたけど」
「ファーストキスですね」
「頬っぺたはノーカウントよ」
「まあ、そういうことにしておきましょう。そういえば、伊澤様から伝言を預かってますよ」
「え、何?」
「月曜日の昼休みに生徒会室に来て欲しいと」
「何の用かは聞いていないの?」
隠そうとはしているがかなり嬉しそうな顔をしている。
生徒会の勧誘なんだけどそれを言ったら何も面白くないしちょっとぼかそうかな。
「少しは聞いていますがそれは直接伊澤様から聞いた方が麗様も嬉しいんじゃないですか?」
「たしかにそうね。でも私、伊澤先輩から告白されても断るわよ」
「え、なぜですか?」
「まだ会ってからそんなに日はたっていないし、告白なんて受けられない」
すっかり告白だと思っている。
本当に麗様は可愛いな。
「でも、付き合ったら楽しそうよね。さすがに男の格好だと駄目だけど女の子の格好をしてもらえばデートしていても他からはただの友達に見えるし、二人で女性の格好でペアルックで遊べるし、撮影の時みたいに化粧をしてもらったりもできるわ。撮影のあととかも一緒にご飯とか行けるし」
付き合う気しかないように聞こえる。いつもの鉄仮面みたいな麗様はどこにいったんだろう。まあこっちの方が年相応の女の子という感じだが。
「そういえば、麗様の男のタイプってどんな人ですか?」
「そうね。ファッションセンスがよくて私と一緒に並んでも恥ずかしくない人ね。あと、常に努力をしてる人で一緒にいて楽しくて優しい人がいいわ」
「それ伊澤様のプロフィールですか?」
「え?」
麗様がフリーズをしたと思ったら顔が真っ赤になった。
「やっぱり伊澤様に告白されたら受けますよね」
「だから、断るって言ってるじゃない」
その後は、話を逸らしたかったのか仕事の話ばかりを聞かされた。
月曜日の昼間になり、そろそろ伊澤様と会っている頃かなと思っていたら、急に麗様から電話がきた。
「はい、なんでしょうか」
「東雲、私に何か言うことは無いかしら」
「伊澤様の用件が生徒会の勧誘ということでしょうか」
「やっぱり、知ってたんじゃない。土曜の話はなんだったのよ」
「すみません、可愛かったので黙ってました」
「あなたね」
「まあ生徒会の話だって悪くないと思いますけど」
「悪くないって何?」
「伊澤様と長く一緒にいれますよ。せっかく誘ってくれたのでせめてなんで誘ったのか聞いてみたらどうですか」
「たしかに、それもそうね」
期限も近いから、面識のある人には片っ端からお願いをしてるとは思うけど、そこは黙っておこう。
まあ、伊沢さんは天然の人たらしだしなんとかするだろう。
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