EX 星明りの記録

最英EX 最弱勇者の学園譚! ~5時限目~

【前書き】

 どうも皆さま、『最弱勇者の英雄譚』作者のハルレッドです。

 本日をもちまして、『最弱勇者の英雄譚』は連載開始から半年となりました!

 本当にありがとうございます!&これからもよろしくお願いします。


 てな訳で今回も毎月18日恒例の学パロ。

 先月に引き続き今回もショートショートですってよ。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




【海と言えば】

 さて、最近はすっかり暑くなり夏を感じるようになってきましたが、そんな時皆さんは一体どこへ行くだろうか?

 田舎のお婆ちゃんち? それともプール? はたまた家に引きこもり? ちなみに作者はもちろん引きこもり。……理由は聞くな、察してくれ。


 ……と、まあそんな作者の個人的な(悲しい)事情はどうでもいいとして。

 学生ハルマ達は(悲しい)作者とは違い、ちゃんと皆でこの夏にとある場所に訪れたのであった。

 それは――、


「着いた……! 海、だーーー!!!」


 そう、それは海。

 まさに夏の遊び場第1位と言っても過言ではない海に、ハルマ達はみんな(いつもの5人)でやって来たのである!


「よっしゃー! それじゃ、早速だけど遊ぼうー!!!」


『早!? 今着いたばっかりじゃねえか!』


「ふっ、ジバ公よ。時間とは常に限られしものなんだぜ? なら、その限りある時間は常に満遍なく使わないと損だろう?」


『いや、なんかカッコよさげに言ってるけど。要するに早く遊びたい、ってだけだろ?』


「ま、そうなんですけどねー!」


『……』


 と、流石は17歳児。

 まあなんとなく分かってはいたが、やはり広がる海を前にしハルマは興奮が隠せないようだ。

 既にハルマは水着に着替え、準備も疎かに遊ぶ気満々である。

 ……こいつ、本当に高校2年生か?


「まったく……。ハルマはしょうがないわね……。ま、でも今日は遊びに来たんだし、しょうがないっちゃしょうがないけどね」


「ええ、そうですよ! あれくらいはしゃぐのも無理はないです! ……ふふふ、海にはしゃぐハルマ君も可愛いですね……」


『……』


「……。……えっと、それじゃあ早速だけど、何をしようか? 遊ぶと言っても、いろいろと種類があるだろう? 皆は何で遊びたい?」


「はい! 俺スイカ割りしたい!」


『手挙げるのも早!?』


 まるで小学校の発表のようにピシッと手を挙げ、ハルマは自らの意見を発表する。

 それはまあなんとも綺麗な挙手であり、もしここが学校なら間違いなくハルマが指名されていたことだろう。

 がしかし……。


「すまない……。申し訳ないが、今回スイカの用意はしてないんだ。それはまた今度にしよう」


「そっか……」


 残念ながら意見は不採用。

 まあ、そもそものスイカがないのならそれもしょうがないことだ。スイカなしでスイカ割りは出来ない。


「他にないかな? 一応それなりには道具の用意はしているんだけど」


「そうだな……。あ、じゃあビーチバレーしようぜ! それか、もしくはビーチフラッグ!」


「ああ、それなら用意出来てるから大丈夫だ。ちょっと待ってね」


 ビーチバレーの意見を受け、大量の荷物を漁り出すソメイ。どうやらバレーボールの準備はしてきたようだ。

 てな訳で最初の遊びは無事にビーチバレーに決まった、のだが……。


『なあ、ハルマ』


「ん?」


 ここで、ジバ公に一つ。

 純粋な疑問がよぎる。それは――、


『別に問題がある訳じゃないんだけどさ。お前、何で提案するもの全部海に入らない遊びばっかりなんだ? せっかく海に来たのに』


「――!」


 そう、ジバ公の言う通り。

 ハルマの提案する遊びはスイカ割り、ビーチバレー、ビーチフラッグと、どれもが海の遊びではあれど、全て海には入らないものばかりなのだ。

 まあ別にそれに問題がある訳ではないのだが。せっかく海に来たのに、まるで入ろうとしない奴が居たら少し変に思ってもおかしくはないだろう。


「……」


『……え? えっと、何で黙るんだ?』


「……」


『……ま、まさかお前』


 ジバ公の質問に無表情で黙りこくるハルマ。

 だが、例え無表情であったとしても、その圧倒的な雰囲気までは隠しきれていなかった。それはそれは凄まじいものであり、(自称)猫のジバ公にさえ、ハルマがどういう心境なのかを一瞬で悟らせる。

 つまりどういうことなのかというと……、


『泳げない……のか?』


「――ッ!」


 と、まあ必然的にそういう答えを導きだしてしまう、のだが……。


「い、いや違うし! ほ、ほらあれだ! 俺はその……濡れると砂がくっついて気持ち悪いのが嫌なだけであって! 別に泳ぐことが出来ないとかそういう類のあれだはないっていうか!」


『……』


 必死で弁目する姿が逆に疑問を確信に変えてしまう。

 間違いない、どうやらハルマは泳ぐことが出来ないらしい。だから必死で海に入らないでいい遊びを提案したんだろう。

 ……まったく、何でじゃあ海に来たんだろうか。


「べ、別に! 俺がその気になれば泳ぐのとか楽勝だし!? そもそも人体は水に浮くものだし! 全ての生命は根源的に海から産まれしものだし!」


『……そうか』


 やたらと語尾が「し」ばかりになるハルマ。おまけに口も目も手もおろおろしており、本気でテンパっているのがよく分かる。

 どうやら泳ぐことが出来なくても、目を泳がせることは出来るらしい。


「だから、俺は泳げないとかそんなことは全然ないからね!」


『……あ、うん。よく分かった。疑って悪かったな』


「ああ、いや、分かれば良いんだ……」


『ただな、ハルマ』


「ん?」


『今度から言い訳はもう少し小声で言うようにしような』


「……え? どゆこと?」


『……みんな、今のお前のセリフ聞いてもう泳ぐ気満々になっちゃったみたいだぞ?』


「!?」


 ジバ公に指摘され、ハルマは慌てて背後を振り返る。

 するとそこにはジバ公の言った通り、既に海に入っているホムラ達の姿があった。……どうやらハルマの必死の言い訳を聞いて、本当は泳ぎたかったと勘違いされてしまったらしい。


「ほら、ハルマもジバちゃんと話してないでおいでよ! 泳ぎたかったんでしょう?」


「……あ、えっと……」


「ハルマ君! 冷たくて気持ちいいですよ!」


「……」


『……で? どうすんの、お前』


「……」


 この後、高校2年生ハルマは人生で最大の屈辱を味わう羽目になるのだが……。

 それはまた、別のお話。




【皆が一度はやること】

 夏のイベント、なんて言えばそう簡単に言い切れない程たくさん世の中には存在するだろう。

 だが、もっとも印象深いイベントと言われれば、それは案外皆すぐに出るのではないだろうか。特に学生ならよりその傾向は高いはずだ。

 それは即ち――、


「夏休み、到来!」


 そう、7月下旬から8月末にまで及ぶ長期休暇。

 夏休みである!!!


「来たよ、来たよ、来ましたよ! 夏休みですよ! これには流石のハルマさんもテンションが大盛り上がりですよ!」


 いつもすぐにテンションが上がるくせに、何が『流石』なのかは置いておいて。

 とりあえず夏休みなのだ。


 夏休みと言えば虫取ったり、海行ったり、山行ったり、夏祭りで鼻緒が切れて女子背負ったり、花火の音で愛の言葉がかき消されたり、合宿したり、混浴したり、臨時バイトでラブコメしたり、肝試ししたり、田舎に帰って幼馴染と再会したり、タイムリープしたり、異世界転生したり(ある意味これは既にしているが)、流れ星に願ったり、大冒険したりするもの。

 こんな風にまさに学生にとっては最強の黄金期であり、人生でもっとも浮かれるタイミングといっても過言ではないのである!


「いやー、ホント。夏休みを考案した奴は天才ですよ! マジで感謝感謝! ……コレさえなければな」


 と、急に表情が180°ひっくり返るハルマ。

 ……そう、こんな楽しい楽しい夏休みにももちろん苦行は潜んでいる。世の中良いことばかりの上手い話なんてそうそうないのだ。

 夏休みの苦行、それは即ち――


「……はあ。まったく今年も馬鹿みたいに大量にだしてきやがったなぁ、宿題……」


 そう、宿題である。

 これは夏休みという至福の時間に必ずセットでついてくる地獄であり、多くの者たちががこれのせいで多大な地獄を見てきた、まさに学生の天敵。

 かくいう作者も全然やらなかったせいで、過去に何度も地獄を見てきたもはや皆のトラウマなのであった。(まあそうなったのは自業自得なのだが)


「まったく……やる側の気持ちも少しは考えてほしいってもんだ。……ま、今年の俺はこの宿題に対抗する最高の手段を導き出しているのだがな!」


 と、山積みの宿題を前にニヤリと笑うハルマ。

 どうやら彼は事前にこの地獄への対抗策を考えていたらしい。


「ふっふっふ、見るがいい俺の思考の極致! これぞ名付けて『電光の宿題殺し』だーーー!!!」


 微妙にダサいネーミングと共に、ハルマはその手にシャーペンを取る。

 そして次に彼がとった行動は――!?


「えっと、この問題は……。確かα2乗+β2乗=(α+β)2乗-2αβだから……」


 ……普通に宿題に取り掛かること、だった。

 これは……一体……。


「つまり答えは8か。ふふふ、また一つ完成に近づいてしまった! どうだ、これが俺の最高の作戦! すなわち『夏休みの宿題初日で終わらせちゃえば後は凄え楽になるじゃん作戦』だ! これは今まで誰もやって来なかった天才的な発想だろう!」


 ……と、誰もが一度は思いつき、そしてどう考えても無理な事を悟りやらなかった作戦を自慢げに語るハルマ。

 まあ、確かに彼の言う通り、初日に全部終われば楽にはなるだが……。まあ、実際はそんな上手い事いくはずもなく……。



 ―3時間後―

「……あれ? ハルマ、夏休みの宿題今日で終わらせるんじゃなかったの?」


「あ、姉さん……。いや、その、ちょっと休憩を……」


「そう? まあ、あんまり無理しないようにね」


「……うん」


 全体の20分の1くらいやったところで、集中力は途切れてしまうのであった。

 まあ、だって40日定期的にやって良い感じに終わるように設定された量ですし。そりゃ1日で終わらせるなんて到底無理な話なのである……。




【疑問】

「射的やってかない? 良いものあるよー!」


「さあさあ! 金魚すくいやっていかないか! 元気のいいヤツばっかりだよ!」


「りんご飴いかがですかー! 甘くて美味しいですよー!」


「凄ーい! 夏祭りってこんなにたくさんいろんな店があるのね!」


「……ホムラ、夏祭り初めて来たの?」


「うん! 今までも来たいとは思っていたんだけどね!」


 なるほど。だから彼女の顔はこんなにもキラキラした表情を浮かべているのだろう。

 その笑顔と言ったらそれはそれは眩しいものであり、まるで小さな子供なんじゃないかと思う程純粋で無垢な笑顔がそこにはあった。


『いやー……。初めての場所にワクワクとドキドキが隠せないホムラちゃんも超絶可愛いっすねぇ……。なあ、ハルマもそう思うだろ?』


「ま、まあ可愛いのは確かに可愛いけど。……お前、ここに来て大丈夫なのか? ジバ公?」


『なんで?』


「いや、だってお前スライm――じゃなくて、その、猫じゃん。人が多い場所に猫連れて来るってちょっとどうなん?」


『別に大丈夫でしょ。僕は優秀だからはぐれたりなんかしないしね』


「……そうか」


 まあ、本当は全然違うところをハルマは心配しているのだが。

 だって、こいつ……どう見てもスライムだし。何故か学校では『猫』で通っているが、こんな人が多い場所だと最悪ハルマみたいに真の姿に気付く人も居たりするかもしれない。

 そうなるとちょっと面倒な気もするのだけど……。


 ――……誰も、気付いてないみたいだな……。


 どうやら、本当にその心配は必要なかったようだ。

 ……ホント、コイツ何者なんだろうか。もしかしたら本当にハルマの目と脳の方がおかしいのではないかと思う程に、何故かコイツは猫として周りに認識されている。

 見た目はどうみてもスライムなのに。


「……分からんなぁ」


『何が?』


「いや、別になんでも」


『?』


 ……ま、この話題に関してはもはや考えてもしょうがない気もしてはいるのだが。実際、どんなに考えても絶対に答えが出せる気がしないし。

 だって分かりすく例えるなら、これは『赤はなぜ赤なのか』と言われているようなもんなのだ。こんなの答えられる訳がないだろう。


「……世界にはまだまだ謎が溢れてるんだな」


 ハルマ、この日世界の神秘を痛感する。




【疑問のおまけ】

「はい! りんご飴500円ね!」


「ありがとうございます!」


『……ねえ、ハルマ』


「ん?」


『夏祭りって実際はぼったくりレベルでコスパ悪いのに、何でみんないろいろと買っちゃうんだろうね?』


「……さあ。……ホント、何でだろうな。他だったら絶対に500円のりんご飴なんて買わないのにな」


『だろ?』




【成長の悲劇】

「ハルマ君、見てください! さっき公園にカブトムシが居たんですよ!」


「……お、おう。そうか」


 満面の笑みでカブトムシを見せるシャンプーに対し、ハルマの表情は若干引きつり気味。だが、シャンプーはそんなハルマの様子には気づかない。


「誰かがうっかり逃がしたんでしょうか。まあ、私としてはとてもラッキーでしたが!」


「……シャンプー、虫好きなのか?」


「え? うーん……まあ、カブトムシとかクワガタみたいなタイプの虫なら好きですよ。カッコいいですし」


「そう……なんだ」


 と、そんなシャンプーの返答に、ハルマは虫かごでうごうごするカブトを横目に微妙な表情。どうやらハルマはシャンプーとは違い虫は苦手なようだ。


 ――おかしいな、昔はこんなことなかったのに……。


 少し寂しそうな顔をしながらハルマは過去を思い出す。

 そこには、平気でカブトどころかカマキリすら取りに行く小学生ハルマの姿があった。……どうしてだろう、あの時は虫なんてまったく怖くなかったのに。


「おお……! この子、ツノがとても立派でカッコい――あ、カゴの蓋が!!!」


「え!? ちょ、ぎゃああああああああああああ!?!?!?!?!」


「ハルマ君!?」


 なんで、今はこんなにこの子達が恐ろしく感じるのだろう……。




【どうか皆さんは計画的に】

「……ヤバい」


 真っ青に青ざめるハルマ。

 そんな彼の目の前に広がるのは大量の宿題、そして……。


「どうして、どうしてこうなった!?」


 無情にも8月31日と示すデジタルカレンダーがあった。


「ヤバいヤバいヤバイ! こ、これはもう伝説の8月32日を降臨させるしか……!」


「……自分の為だけに皆のトラウマを蘇らせないの。ほら、馬鹿なこと言ってないでさっさと宿題進めなさい。姉さんも少しは手伝ってあげるから」


「なんでこうなったのさ!? 本編じゃ俺、8月の序盤には宿題終わってたよね!? ねえ!?」


「……何の話?」


 どうか、皆さんは計画的に夏休みの宿題を進めるようにしてください。

 地獄を見るのは他ならぬ貴方ですからね。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



【後書き雑談トピックス】

 「7月に夏休みネタってちょっと早くない?」と思う方も居るかもしれませんが、8月は8月でちょっとやりたいことがあるので今月はこうしました。

 あと、特に言及していませんでしたが、この学パロ時空は鬱要素皆無の楽しい平和時空なので秋葉姉さんも普通に生きてます。良かったね、ハルマ。

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