最英EX 最弱勇者の学園譚! ~4時限目~

【前書き】

 どうも皆さま、『最弱勇者の英雄譚』作者のハルレッドです。

 本日をもちまして、『最弱勇者の英雄譚』は連載開始から5ヶ月となりました!

 本当にありがとうございます!&これからもよろしくお願いします。


 てな訳で今回も毎月18日恒例の学パロ。

 ちなみに今回はショートショートですってよ。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



【思ってたんと違う】

「……さて」


 さあ、今日も狂気の学園『最英学園』のお勉強開始のお時間だ。

 まずは一時限目の国語。だがしかし、ハルマはもう既に嫌な予感しかしていなかった。


「この学校の事だ。どうせ、またなんか読めない異世界の字みたいなのを、平然と読ませようとしてくるに違いない……」


 もうこの数カ月の学園生活でこの学園の異常さはよーく理解したハルマ。一体どんな風に異常なのか具体例を挙げるなら、この学園には自称のネコの謎の生き物とか、異様にデカい図書館とか、なめろうしか出ない食堂とか、当たり前のように居座る獣人……などが存在する。(ちなみにまだ他にもある)

 まあ、ここまで変わりに変わった学校もそうはないだろう。


「……てか。こうやって、改めて思い出すとマジで頭痛くなるな。ホント、一体何がどうなってるんだか……」


 その辺り、確かにかなり気にはなるのだが……ハルマは敢えてそこは深く考えないようにしていた。何でって? そりゃこれ以上頭痛を酷くしたくないからに決まってる。実際、現状でもかなり酷いのだ。それなのに、こんな狂気を本格的に調べ始めたりなんかしたら……その時はもう確実に死ぬ気がする。


 ……と、まあこの学園は大体こんな感じなのだ。

 故にこうなってくるともう授業だって普通なはずがないだろう。


「……さあ、来るならどんと来やがれってんだ異世界文字! どうせ読めねえけど、その分正解出来なかった時の劣等感は薄い!」


 ちなみにそんな狂気に対して最近ハルマは一つの解決策を見つけていた。それがこれ、開き直ることである。

 もう狂気には狂気でしか対抗など出来ないのだ。故に狂気に堕ちる訳にも行かないハルマは、こうやってひたすら逃げるのが一番だと悟ったのだった。


「はい、それでは授業を始めまーす」


 と、ここで先生が教室に入ってきたので授業開始だ。

 さあどこからでも掛かってこい異世界文字!!!


「では、早速ですがまずは問題です」


 ――早速来た!


「一体、この字はなんと読むでしょうか?」


『蝋燭』『狗尾草』『海獺』


「……あれ?」


 ところがどっこい。

 あんなに迎え撃つ準備は万端だったのに、黒板に書かれたのは何でもない普通の漢字だった。だだし微妙に読めそうで読めない難しいヤツだが。


「……え、ちょ、待て!? おい! 今までのノリはどこいった!?」


「ノリ? なんのことです?」


「そんな!? 嘘だろぉ!?」


 根本的に読めない文字なら出来る開き直りも、これでは発動出来ないではないか。と、こんな風に『開き直り』すら許されないの狂気が最英学園の神髄である。

 ※ちなみに答えは後ほど。




【常識とは】

「……うーむ」


 数学のワークを前にうむむと首を傾げるハルマ。

 今、彼はなかなかの難題にぶつかっていた。


「……はてさて、一体どうしたものか。何で、何度計算してもA君の速度が時速3000キロを超えるんだ……?」


 難題とは何か、それは数学あるあるの一つ『絶対にあり得ない答え』だ。

 いろんなジャンルで起こりうるあるあるだが、特にこれは速度の問題でよく起きる事態。この手の問題では、このようによくA君のスピードがあり得ないくらい速くなったり遅くなったりするものなのである。

 ちなみに時速3000キロというと、大体戦闘用ジェット機くらいの速さがあるぞ!(マッハにすると約2.5)


「ダメだ! 俺の力じゃどうにも出来ん!」


 間違っているのは分かるのに、どこが違うのかは分からないこのモヤモヤ感。

 だが、賢明なるハルマはこういう時はどうするのが一番良いのかをよく理解している。それは――、


               △▼△▼△▼△ 


「ガダルカナル先輩! ここ教えてー!」


「おっと、誰かと思えばアメミヤ君か」


 向かったのは最英学園の『やべえOG』こと、ガダルカナル先輩。

 そう、結局こういう時は誰かに聞いて教えてもらうのが一番なのだ。まさに『聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥』というやつ、分からないまま一人で無理矢理頑張る方が絶対後々恥をかく。


「それで? 今日は一体どうしたんだい?」


「実はですね。どうしても、この問題が解けなくて……」


「ほうほう。どれ、少し拝見……って、なんだ。これなら簡単だよ」


「マジですか!」


「うん。ちょっと待っててね」


「はーい!」


 よしよし、これでもう一安心だ。後は彼女に解き方を教えてもらえれば、ハルマももうこの問題で苦戦することはない。

 勉強とは、決して自分だけの力で成し遂げるものと決まった訳ではないのだ。こうやって誰かの力を借りるのも、また立派なやり方である。替え玉とかはダメだが。


「……よし、解けたよ」


「おお、流石に早い! それでA君の速度は何キロでした?」


「うん、この問題のA君は約時速3000キロで歩いているね。……いやはや。なんとも足が速い少年だね」


「あはは、そうですね……って! 何だよ! 結局アンタも間違えるんかい!!!」


 と、ここでまさかの事態。

 問題を見た時はあんなに余裕そうな感じだったのに、返って来たのはなんとさっきハルマが何度も見たのと同じ時速3000キロだった。


「いやいやいや、おかしいでしょう!? 人間のスピードでどうして時速3000キロになるんですか!? A君サイボーグか何かなんですか!?」


「え? いや、普通にユウキならこれくらいは余裕で出せたのだけど……?」


「あの、これは現実世界の学パロ時空なんで。異世界の本編とごっちゃにするの止めてもらえます?」


 いや、まあ『本編』とか全く何のことだが分からないんですけども。

 ……てかよく分からない『本編』の方とはいえ、ユウキ時速3000キロも余裕なのか。マジで一体何がどうなっているんだろうか、伝承の勇者さんは……。




【必勝、暗記法!】

「ふー……。あー、歴史って覚える人がいっぱい居るから大変だなぁ……」


「ですねー」


 さて、現在はお昼休み。

 ハルマは今、最近本気でちょっとおかしなことになってきてしまったシャンプーと共に、今度の歴史のテストに備えて勉強中である。

 だが、どうやらハルマは偉人や用語がたくさん出てくるのもあって、少し苦戦気味のようだ。


「まあ、歴史はいろんな人や物事が密接かつ複雑に関わっていますからね。難しいのも無理はないですよ」


「……でも、そう言う割にはシャンプー毎回100点だよね? あれか? なんか暗記のコツとかあるの?」


「えっと。ええ、まあ一応ですけどね」


「え、あるの!? あの、良かったらちょっとそれ俺にも教えてくれない!?」


 なんと意外な事実、まさか暗記の仕方ににコツがあったとは。なるほど、やはり上位勢は勉強の仕方も効率的にやっているということか……。

 だが、これさえ教えてもらればハルマも今度からは100点……とまではいかなくても、結構な高得点が取れてしまうのではないのだろうか。そうすればもう今後は歴史に苦しむ必要はない!


「いいですよ。……で、私が歴史で偉人の方々を覚える時に使っている方法ですが――」


「うんうん!」


「それは……偉人とハルマ君の共通点を見つける、です」


「……、……はい?」


「例えば! 『この人はハルマ君と目の雰囲気が似てる』とか、『この人はハルマ君と身長が近い』とか『この人はハルマ君と左手人差し指の第一関節までの長さが同じ』とか! どんなに細かいことでも良いので何か一つ共通点を見つけるんです。そうすれば次からは、『あ、この人は指の人だ』とすぐに思い出せますよ!」


「……」


「こんな風に好きなものに絡めると案外簡単に覚えられるものなんです。……まあ、その、どの偉人の方も結局ハルマ君には遠く及ばないのですけどね」


「……そう、か。うん……」


 あの……何だろう。……怖い。マジで怖い。本当に、一体どうしてこの子はこうなってしまったのだろうか。もう普通に恐怖とかの領域を遥かに天元突破しているのだが。

 

「……」


「? どうしました、ハルマ君」


「いや、なんでも」


 どうやら、暗記は普通に頑張るがハルマに一番なようであった。




【こうすれば良いのに】

「よし! 次は理科だ! 俺はこの授業がやっぱり一番好きだなぁ」


『へー』


 さてさて、ハルマは次の授業に向けてルンルン気分で準備中だ。そんなハルマの様子が珍しかったのか、それをジバ公は少し気になると言いたげな雰囲気で見ていた。

 ……理科、それは恐らく多くの学生がまず一番に憧れを感じた科目だろう。理科の魅力と言えば、例えばそれは理科室に飾られている人体模型や人骨だったり、薬と薬を混ぜる実験だったり、さらには電気などの原理を学ぶために行う様々な工作などなど。理科は常に面白さに富んだ科目なのだ。

 故にハルマも理科の授業は単純に好きだった。


『それで? 今日は何の勉強すんの?』


「今日はね。なんと、イカの解剖をするんだってさ!」


『カイボー?』


 解剖……それは小学生の理科では(多分)出来ない、新たな領域に居たりし授業である。

 その目的は単純に、身体の構造を知る為『百聞は一見に如かず』を実現する分かりやすい授業。……なのだが、やはり既に死んでいるとはいえ『生き物を斬る』とはなかなか刺激的なものだ。

 故にこの授業は大体『凄い楽しみ派』か『超苦手派』の二択に分かれることが多く、学生によって評価は大きく変わるのが特徴である。なお、ハルマはもちろん言うまでもなく『凄い楽しみ派』だ。

(ちなみに作者は豚の目の解剖で気持ち悪くなったことアリ)


『ふーん、理科ってそんな授業もあるんだね。……でも、変なの』


「何が?」


『だって、解剖は身体の仕組みを知る為の授業なんだろ? なら自分の身体を切ればもっと効率良いのに』


「リスカかな? ……てか。え、何そのメンヘラ思考。ストレートに怖いんだけど……」


『え? いや、だって切り傷なんてすぐに治るじゃないか』


「誰もがお前みたいな化け物だと思うなよ、ジバ公」


『?』


 ……人間との常識のズレが酷い。知らないのかもしれないが、残念ながら人間はそんなすぐに傷は回復しないのですよ。

 てか、本当にコイツは一体何者なんだろうか。どっからどう見ても地球の生物だとは到底思えないのだが……。




【英語】

『ΓφΦλΛλΔ ΛυΦγΓλΔ ΦυΓυΛγΜμ ΒυΣμΔ』


「……」


「さて、ではこの英文分かる人ー!」


ああ……まあ、うん。なんとなく、なんとくは分かってはいたけども……。

やはり結局最後はこうなるんですか。いや、まあ悟ってはいましたけどもね?


「……結局、結局は異世界系文字出してくるのかよ!」


「え?」


「『え?』じゃねえ! それはどっからどう見ても英語じゃねえだろが!!!」


 予想外の変化球を投げてきたとしてもこっちの予想を裏切ることはしない。

 狂気に染まった恐怖の学園、『最英学園』。それは結局のところ、どこまで行っても最英学園のままなのでありました。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



【後書き雑談トピックス】

 前回は休んだので2か月ぶりの最英学園。

 それなのにメインヒロインに(あとついでに白昼の騎士にも)出番がないというのはいかがなものなのか。……だって、単純に出すタイミングがなかったんだもの。


 ……と、まあそんな話は置いておいて。

 前書きにも書いた通り、最英は1月18日からスタートですので、今日で5ゕ月目に突入です。まだ半分どころか3分の1にすら至っていない今作ですが、どうか今後とも読み進めて頂ければ非常にありがたい。僕としてもこうやってずっと読んでくれる方には、全力のエモさを提供していきたいと思っていますのでね。

 特に、まだプロット段階なので変わる可能性もありますが……今作の後半は長く読んでくださっている方ほど「おお……!」となるのではないか、と思っております。


 あ、あとこれは余談ですが。

 先日、第1部の一番最初に【再開の決意】という番外を投稿しました。タイミングと場所が変なので気づきにくかったかもしれませんが、良かったらそちらも読んで頂けたらありがたいのです。第1部を読むのにいろいろとあると思うので。

 ……いや、まあ欲を言えば全部読んで頂けるのが僕としては一番なんですけどもね。

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