最英EX 最弱勇者の学園譚! ~1時限目~

【前書き】

 どうも皆さま、『最弱勇者の英雄譚』作者のハルレッドです。

 本日をもちまして、『最弱勇者の英雄譚』は連載開始から1ヶ月となりました!

 本当にありがとうございます!&これからもよろしくお願いします。


 さて、そんな訳で本日お送りするのは特別編。

 俗に言う『学パロ』というヤツです。

 ……いいじゃん、やりたかったんだよ。

 某鬼斬るヤツとか、某ゼロのヤツも学パロしてるから! 俺もやりたかったんだよう……。


 と、そんな訳で今回は本編とは完全別時空かつ終始ギャグの最英学パロ!

 どうかお楽しみいただければ幸いです!

 あ、もしそういうのが嫌いな方がいらしたら、申し訳ないですが明日の本編更新をお待ちくだされ。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「ここが、か……」


 一人の少年が眼前に聳え立つ物を見上げながら、そう口にする。

 彼の目の前にあるのは一つの建物。

 荘厳にして、若々しい雰囲気の零れるいたって普通の学び舎。

 青春の息吹が漂う、その名も『小中高一貫最英学園』である!!!


 彼、天宮晴馬は今年で高校2年生。

 元は六音時高校という学校に通っていたのだが、2年生生活開始1ヶ月で何故か唐突な転校を余儀なくされる。

 そして、新たに通うことになった学校こそが、この小中高一貫最英学園なのだ。(名前長い)


「まさか……ここに通うことになるとはな……」


 そう、実はこの小(以下略)は市内、いや県内、いや国内でも有数のエリート学校。

 なんせ『最も英でる学園、略して最英学園』とか言われているくらいなのだ。

 はっきり言ってハルマは何故自分がここに転校することになったのか、全く理解出来ていない。

 なんか朝起きたらここに行くことになってた。

 ……何か良からぬ事件の臭いがしないでもないハルマだったが、適当にそういうことに首を突っ込むとそのまま斬られかねないので放置しておくことに。

 触らぬ神に祟りなし、である。


「じゃあ、行くか!」


 さて、若干怖いし緊張もするが、だからっていつまでも校舎前で立っている訳にもいかない。

 そろそろ用務員の人も変な目で見始めている。

 未だ心臓の高鳴りは収まらないが、ハルマは意を決して校舎に入っていくことにした。




 ―教室前―

「……着いたな」


 校舎に入った後なんかしらのそれっぽい手続きを済ませ、ハルマは教室前まで到着。

 そういう手続きにはもちろん経験のないハルマだったが、担任のブリカエル・セシル・フォリス先生がいろいろとサポートしてくれたおかげで、そこまで苦労はしなかった。

 ……今思い出してみるとすげえ名前だな、外国人かよ。


 とまあ、それはともかく。

 とりあえずハルマは、後は先生が「今日は転校生を紹介します、ではどうぞー」と言うのを待つだけになった。


 流石にこの状況になれば嫌でも緊張はする。

 ハルマの心拍数はどんどん上昇し、冷や汗も流れていた。

 そして、ついに時は訪れる!!!


「では、次に転校生を紹介します。どうぞ」


「――ッ! はい!」


 思わずドアを開ける前から返事をしてしまったが、そこは置いておいて。

 落ち着いてドアを開け、教室に入り、これまた落ち着いて教室を眺める。

 すると、そこには期待に似た感情を込めた目でこちらを見る高校生たちが居た。


「それじゃあ、自己紹介を」


「あ、はい! えっと、俺は――」


 さて、まずはファーストアクション。

 つまりは第一印象、ここでグッと好印象を掴んでおきたい。

 だからこそ、無難で、在り来たりで、されど地味ではない自己紹介を――!


「俺は元六音時高校生徒会長代理、天宮晴馬!」


「……」


「……は、え、あれ?」


 ……ところが、ハルマの口から出てきた自己紹介は『無難』とは程遠いものだった。


 ――あれえええええ!?!?!?! なんで!?!?!?!?!?!?


 自分の意思とは無関係に零れ出てきた自己紹介。

 それはまるで果て無き世界からの因果のように、この瞬間のみハルマの身体を支配して今の言葉を言わせたのだ。

 おまけに、ご丁寧におかしなポーズまで用意されている親切設計なのだから、泣けてくる。


 ……もちろん、教室は一瞬で静まり返った。

 沈黙&静寂、死にたくなるくらい辛い空間。


 ――もういっそ殺してくれ……。


 学園生活開始10分で自殺願望が芽生えてきたハルマだったが……。

 そんな雰囲気を一気にぶっ壊した者が居た。


「うん、これからよろしくね、天宮晴馬くん」


「!?」


「あ、私は学級委員のホムラ・フォルリアスって言うの。覚えてくれると嬉しいです」


「あ、はい! もちろん! これからもよろしく!!!」


 気まずい雰囲気を一気に軽くしたのはホムラと名乗る女生徒。

 またまた名前すげえな、とハルマは思いつつも、今はその言葉に死ぬほど感謝しかなかった。


「えーと、それじゃあ天宮くんはホムラの横の席に」


「あ、はい」


 さて、ようやく空気が軽くなったのでハルマは席へ移動。

 ホムラの隣の席であることに死ぬほど感謝しながら、移動したのだった。

 ホント、他の人だったら気まずさで死んでいる。


「失礼します……」


「『失礼します』って自分の席なのに。……ふふ、貴方って面白い人ね」


「あれは……その……意図的にやった訳じゃ……」


『じゃあなんだ? 身体が勝手に動いたとでも?』


「ん?」


 その時、ホムラとは違う声がハルマの耳に響く。

 なんだろうか……この直接脳に響かせているかのような声は……。


『……ん? もしかして、お前僕の声が分かるのか?』


「え? 何、どこ?」


「? どうしたの、ハルマ?」


 ホムラにこの声は聞こえていないようだ。

 やはり変な聞こえ方からしてハルマにだけ聞こえてる声なのだろう。

 しかし、その声の主が全然見つからない。

 まさかテレパシー? 遠くから話しかけられている?

 と、その時――


「ムー、キュー!」


「あ、ダメよジバちゃん。勝手に出てきたら」


「え?」


 またまた、違う声……というより鳴き声がホムラの方から聞こえてきた。

 やけに可愛いその動物的な鳴き声はもちろんホムラの声ではなく、ホムラの頭の上に乗っかっている……。


「は?」


 スライム……っぽい生き物が出している声だった。


「……え? なにそれ?」


「ああ、ごめんなさいね。この子、ウチで買ってるネコのジバっていう子なんだけど。たまに勝手に付いて来ちゃうのよね……」


「ネコ!? え、それネコなの!? どっからどう見てもスライムにしか見えないんだけど!?」


「え? 何言ってるのよ、どうみてネコじゃない」


「……」


 果たしてそれはハルマの目が幻覚を見ているのか。

 その青く半透明で、液体と固体の中間みたいな、丸いこんにゃくみたいな生き物をホムラは『ネコ』だと言っている。

 そしてそれを他の生徒は誰も指摘しない。


 ――……あれ? もしかして俺の知ってるネコって『ネコ』じゃないのか?


 訳が分からない空間に自らの常識を疑い始めるハルマ。

 そして、その疑惑はまさかの人物によってさらに深まることになる。


『まったく……、何をそんな当たり前のことで悩んでるんだ? 僕はどっからどう見てもネコじゃないか』


「……は?」


『やあ、初めまして。僕はこの子に飼われているネコのジバ。これからよろしく』


「……」


 脳内ボイスinネコ(スライム)。

 さっきの自己紹介の件といい、ハルマは本気で自分の頭がトチ狂ったのではないかと思い始めた。


「病院……行くべきかなぁ……」


『何で?』


「お前の言葉が理解出来るという意味不明な状況に陥ったから」


『別に病院行く必要なくない? 何の問題があるのさ、言葉が多く分かるなんて得しかないと思うんだけど?』


「楽観的すぎない? この状況で俺喜べるほど前向きじゃないんだけど」


『変な奴だなぁー。ネコの言葉が分かって何の問題があるのさ』


 問題しかないのだが。

 と、ハルマは思ったが……段々と思考を放棄し始めてきていた。

 多分これ以上考えても答えは出ない。

 とりあえず帰りに病院に行くことにして、もう現状は訳の分からない状態に身を任せることにした。


「……お前、ジバって名前でネコはマズいと思うんだけど」


『突然話変わったな、そんなこと言われても僕の名前つけたのは僕じゃないし。提案しようにもホムラちゃんに僕の言葉は届かないからしょうがないね。どっかの有名なネコと名前が似てても僕のせいではない』


「……」


 なんでコイツこんなに楽観的なんだろうか。

 恐れという感情が存在しないのか? というかそもそもコイツは本当に感情があるのか? そういう生き物なのか?


「……どうしたのハルマ、さっきからずっとジバちゃん相手に話したりして……」


「え? あ、いや……」


「ジバちゃんもハルマが何言ってるのか分かるの? 逐一返事してたけど」


「ムキュキュ、ムッキュー!」


 しまった。

 ついちゃんと声に出して返事をしてしまった!

 結果、周りからはネコと会話する奴に見えてしまっている!!!

(一応周りの人間もジバ公の鳴き声は聞こえているが)


 ――……ああ、もう俺の学園生活終わったかもしれない。


 ハルマの学園生活はいきなりクライマックスだった。




 ―放課後―

「それじゃあ、天宮に学校を案内してやってくれ。頼むぞ、ホムラ」


「はい!」


 さて、死ぬほど気まずい授業もようやく終了。

 こっからはホムラに案内されながら、学校案内の時間だ。


「それじゃ、付いて来てね」


「うん」


 あれだけの奇行を犯したのに、ホムラは未だハルマを変な目で見たりはしていない。

 許容範囲広すぎないか、神かなんかなのか。


『そこがホムラちゃんの良いところの一つさ、あの子には差別なんて概念存在しないんだよ』


(すげえな、純粋に)


『でしょ?』


 もう当たり前のように話しかけてくるジバ公に脳内で返事をするハルマ。

 これでもちゃんと成立するので、わざわざ口に出して返事をする必要はない。

 ……もう、これ以上はそろそろキツイんだ。


「ふふ、凄いわねハルマ。たった1日でジバちゃんと凄く仲良しになるなんて。この子、人見知りが凄いのよ? まあネコとしては普通なのかもしれないけどね」


「ムキュー」


「ははは……」


 ネコ、ネコか。

 おかしいなぁ……、普通ネコって「ニャー」って鳴くんじゃなかったっけかなぁ……。

(まあ鳴き声以前にもいろいろあるが)

「ムキュー」なんて鳴くネコ見たことないんだけどなぁ……。

(しかもやたらと声が可愛いのがまた)


「さてと……着いたわよ。ここが図書室ね」


「ほうほう」


 さて、まず最初は図書室。

 目の前には立派な両開きドアがあり、この奥に図書室があるのだろう。


「よいしょっと……。……どう? 凄いでしょう?」


「いや……いやいやいや!」


「?」


「おかしくない!?」


 凄いでしょう?とホムラは我が事のように誇っているが……。

 凄いとかの領域じゃない!!!


 その図書室は吹き抜けになっているのだが……下から見上げると高すぎて上の方が霞んで見えないのだ。

 そう、見えない。見えないくらい高い。

 一体何を考えているのか!? 灯台か何かにでもするつもりなのか!?


「高すぎるでしょう!? 何でこんなに馬鹿高いの!?」


「いや、なんか本をどんどん増やしていったら置き場がなくなって……。でも、横には広げられないから、縦に広げればいいんじゃない? って結論になったらしくて……」


「それでこれ!? どんだけだよ!!! ここ本何冊あるの!?」


「そうね……、確か少なくても1億くらいはあったと思う」


「――!」


 絶句。

 もう訳が分からない。

 なんだ? 国立図書館でも作るつもりなのか?

 いや、1億冊はもう世界立レベルか……。


「……なんで? どうしてこうなった? なんで1億冊なんてことになってしまった?」


「さあ? 噂だと、3年前に卒業したガダルカナルっていう超頭いい先輩が関わってるらしいけど」


「……そっか」


 だからって1億冊は……と思ったけども。

 もういいやと諦めるハルマ。

 ダメだ、逐一ツッコミを入れていたら体力がもたない……。

 と、その時。


「こりゃ、図書室では静かにせんか。勉強をしている者もあるんじゃぞ」


「あ、すみません。セニカ先生」


 背後から女性の声が聞こえてきた。

 話の内容からして多分図書室司書の先生だろう。

 いくらこの図書室がヤバいからと言っても、セニカ先生の言い分はもっともだ。

 ようやくまともな会話が出来るとハルマは思い、謝りながら振り返る。


「すみません……、ついこの図書室のヤバさに驚い――」


「……ん? どうしたんじゃ?」


「ハルマ?」


「先生っていうか……小学生じゃねえか!!!」


「――ッ!」


 振り返った先に居たのは……ハルマよりも身長の低い女性……というか女の子。

 どう見ても目の前の少女は10歳くらいであり、大人であるはずがない。

 もういろいろ疲れてきたハルマだったが……これはボケ以上にいろいろ問題がある気がするので、しっかりとツッコミを入れることにした。

 と、思ったら……。


「ダメよハルマ!」


「!?」


「これには凄く凄ーく深い訳があるらしいの。だからそれは触れちゃダメ、いい? 約束して?」


「あ、はい」


 急なガチトーン。

 それはそれは凄まじく、多分これ以上続けたら一気に『ギャグ』から『シリアス』にシフトチェンジしてしまうだろう。

 なので、そこには触れないでおくことにした。

 なんかヤバい事情があって、10歳くらいの彼女がセニカ先生として働いているのだろう。

 うん、それ以上は触れてはいけない。




 ―食堂―

 さて……たった一部屋で(正確にはジバにゃんこもあるが)疲れ切ったハルマ。

 もうこれ以上は限界なので、とりあえず食堂で腹ごしらえすることにした。

 疲れすぎて脳の栄養が足りない。


「お? お前は確か転校生の……。俺はこの食堂の料理人のレオだ! 覚えていってくれよ! それで? 何食っていくんだ?」


「……」


「ん? どうした?」


「いや、なんでも、慣れましたもう」


「?」


 豪快な雰囲気と共に気さくに話しかけてくる食堂の料理人レオ。

 もう疲れたハルマはツッコミを放棄したが……彼も彼でヤバかった。

 ……どう見ても狼なのだ。

 だが、誰もツッコまないし、もうこれ以上はハルマも疲れたのでスルーすることにした。

 あれだ、スライムがネコなんだし、狼が人でも問題ないんだろう。

 多分。


「えっと、じゃあラーメンで」


「あいよ! ちょっと待ってな! 2分で作るから!」


「早!? カップラーメンより早いじゃないですか! 大丈夫なんです!? それ!?」


「おう、もちろんだ!」


 2分とかインスタント過ぎないか? カップ麺すら3分かかるというのに。

 一体どういう技術で作ってるんだろうか……。

 もしかして魔術とか使ってるのか?


「ほら、完成だ!」


「いや……」


「?」


「これ、なめろうじゃねえか!!!!!」


「え?」


 さて、ホントに2分で出来た料理。

 ところがお盆に置かれたのはラーメンではありませんでした。

 それは……なめろうだったのです。


「なんで!? 俺ラーメン頼んだよね!?」


「え?」


「『え?』じゃねえよ!!!」


「……ハルマ、無駄よ」


「……ホムラ?」


「この食堂はね、何を頼んでもなめろうしか出てこないの。だからもう諦めなさい……」


「はあ!?」


 それじゃあメニューの意味ないじゃないか!!!

 食堂が、食堂として成り立っていない!!!


「もう! この学校どうなってるんだよーーー!!!!!!!!!!!」


 常識の存在しない狂気の学校、最英学園。

 しかしハルマは確かにこの学園の生徒となったのだ。



 ……と、そんな訳で。

 こうして天宮晴馬のトチ狂った学園生活は始まったのだった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



【後書き雑談トピックス】

 久々に不条理系ギャグ書けて楽しかった。

 なお今後も毎月18日に、この学パロは更新していく予定です。

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