第9話 君は俺の運命の相手 ~永遠の恋人 ~

ある日の学校帰り ――――





彼に逢いたい


声を聴きたい


愛し合いたい


だけど


彼とは逢えない


連絡も繋ぐ事も出来ない





≪速渡に逢いたいよ……≫





私は海に立ち寄る。




「速渡…元気にしてるかな? 私の事……思い出してくれたかな? それとも…もう思い出してくれないのかな?」




私は記憶喪失になる前の速渡との会話が蘇る。




『…もし…何があっても俺の事を信じて欲しい……俺も唯那を信じているから』




私は涙が溢れた。







ねえ…


速渡…




私は


あなたを



いつまで


待ち続ければ



良いの……?



このまま


さよならなの……?







私の携帯に

見掛けない番号から着信が入る。



「はい」

「ねえ…君の名前……何?」


「えっ!? 新しいナンパですか? ていうか変な嫌がらせとかイタズラは辞めて下さい。失礼します」


「俺、ナンパ嫌い」





ドキン



≪そう言えば……初めて会った時、速渡と似たような会話したな……≫



「じゃあ何ですか?」


「……今……人探していて……もし君が俺の知ってる人ならイタズラでも嫌がらせでもないって言えるから質問に答えて欲しい」



「………………」



「君の……名前……教えて?」


「……唯那…岬…唯那……」


「……俺…速渡……悠木…速渡……」




ドキン



「……えっ…? ……速渡…?」

「……唯那……ごめん……」

「えっ?どうして謝るの?」

「好きな女(ひと)忘れた事が…悔しくて…辛い思いさせたから…」


「速渡…でも…また思い出してくれたんでしょう?……だったら……」




次の瞬間 ――――




「速渡ーーー」



電話口から聞こえる速渡を呼ぶ女の人の声。





ズキン……



≪…女の人…≫



「そっか……そういう事か……」

「えっ?……唯那……?」

「それじゃ」



私は電話を切った。




「……唯那……」




次の日、再び海に立ち寄る。




「速渡…新しい彼女つくったんだね……」



「ねえねえ」




声をかけられ振り向く私。




「悠木君?」



そこにはクラスメイトの悠木君の姿があった。



「誰かと待ち合わせ?」

「違うよ……考え事してた……」

「そっか……偶々、海辺にある人影に気付いて声掛けた」

「自殺するとでも思った?」



「まさか!」

「でも…分からないでしょう?」

「…そうだね…だけど…俺はしないって確信してるから」

「えっ?」



「それより…また逢えるって確信がある気持ちって凄い事だと思わない?」

「えっ!?」

「もしその確信が本当になったら奇跡だし運命だと思わない?」

「…そう…かもね…」



私は顔を反らし海を眺める。




≪……そういえば……今、思えば……速渡とは……そんな出逢いだった気がする……≫




「俺…幼い時、凄い仲良しの女の子がいて……出会って別れての繰り返しで、凄い偶然が人生に何回かあると彼女とは運命なのかな?って…考えてた」


「えっ? それは凄い偶然でも本当の運命としか言いようがないね。それで、その彼女とはどうなったの?」


「付き合ったよ」

「へぇー、凄い」

「だけど…今は…どうかな?」

「えっ?」


「空白の時間があるから、二人の想いにも空白が出来てしまって時間を埋めなきゃと思っているんだ」


「そうなんだね」


「今、先に進めなくて時間が止まったままだから、もう一度勝負賭けてみようかな?と思って」


「じゃあ、その彼女に早く想い伝えた方が良いよ。待ってるかもよ。じゃあ、私は帰るね」




私は帰り始める。





次の瞬間 ―――――




グイッと背後から抱きしめられた。



「えっ? ちょ、ちょっと…悠木君…何? 辞め…」


「辞めない」



眼鏡を外す悠木君の姿が視界に飛び込んだ。



「今の俺が本当の俺だから。俺は、唯那だけの運命の相手なんだよ」




ドキン



「えっ? 悠…木…君…?」



悠木君は私を背後から抱きしめたまま、私の左手を掴み、悠木君は私の小指に自分の小指を二人の視界に入るように目の前で絡めた。




ドキン



「…また…逢えるよね……君は幼い時の俺に……そう言って……俺は……君に……きっと…逢えるよ……そう言った……」




ドキン



「俺達は…指切りしたように何回も繰り返して出会っているんだよ……唯那…。…だから……唯那は…俺の傍にいて良いんだよ」


「……速渡……」


「昨日の電話から聴こえた声は俺の母親」


「えっ?」


「勘違いしたんだろうなって思ったから。俺、唯那の事忘れた事が本当に悔しくて、その後、すぐに引っ越しちゃって……」



私達は向き合う。




「唯那の学校が転入先だって知ったから眼鏡掛けて違う俺で来たら、まさかの同じクラスで……」


「……速渡は…知っていたんだね…」


「転入した時は…記憶も戻ってて何度も話をしようって思ったけど、下手に行動起こす事は出来なくて…」


「…そうだったんだね…」


「唯那……改めて言う。俺と付き合って欲しい」


「…速渡…うん…」



私達はキスをした。



「学校では…眼鏡掛けて違う俺だけど…今後どうした方が良い?」


「えっ?」


「素の俺で行った方が良い? それとも…眼鏡の俺が良い?」


「速渡は?」


「俺は、どちらでも良いけど……でも正直な所……眼鏡掛けて登校しないと……唯那は不安になるかもしれない……唯那も俺の存在知ってるでしょう?」




確かにカッコイイしモテていた速渡だ。



「それは……」


「俺は唯那以外の彼女も女友達もいらない。正直、二人の時間さえあれば良いって思うから二人きり以外は極力眼鏡掛けて行動したいと思うから……もう……離れたくないから俺」



私達はまた新たにスタートした。


私達二人きり以外は眼鏡を掛けて行動すると。



































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MI・SA・KI ~ 永遠の恋人 ~(仮タイトル) ハル @haru4649

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