(中)スカイ・ワールド・エクスプローラー!!

うなぎの

ムーンシャイン鉱山

大空での目覚めは最高です!

これぞSWEの醍醐味と言えるでしょう!

天空から見下ろす太陽と、霞よりも細やかな甘い雲の中での目覚め。

渡り鳥達のさえずりがきっとあなたに最高の一日の始まりを告げてくれます!

この世界でしか味わえない体験に

         あなたのパートナーと沢山の友人と挑戦しましょう!

                        

                      シャンデリアトラベラーズ



 彼はベッドのすぐ隣に設置されている丸窓から登る黄金の太陽に目を瞬かせながら、悲しくも湧き上がる好奇心に従えずにいた。


超ヌートリア級バトルクルーザーウォンバット。


教会最強の自衛艦ヌートリア級を文字通り超える、戦争のための船。


その物騒極まりない本来の目的とは裏腹に、ウォンバットの艦内はとても静かで、壁や柱に耳を当てたとしても聞こえてくるのは朝食の用意で食器などを意図せずぶつけあってしまう時の極々平和的な騒音だけだった。


「ぅん・・・おはようセイム君。起きたの?」


「おはようございます、ミズキさん」


「ごめんね、やっぱり床で寝たほうがよかったかな?」


セイムの体の上でふさふさと風もなくそよぐ真っ白な毛の塊は、同伴する双子に巨大な白猫タイプのスレイブに変えられてしまったプレイヤーの一人ミズキだ。


ミズキは、何度かセイムの上で体をもたもたと回転させ、それから部屋中を埋め尽くす勢いで放射的に伸びをした。


それから野獣のような犬歯をむき出しにしてあくびをした。


「ふぁ・・・。最近なんだかとっても眠いんだ」


「昨日は色々大変でしたから、僕の事はいいのでもう少し寝ていてください」


「うん。ありがとう、そうするよ・・・・」 


ゆっくりと丸さを増す毛玉に触れないように、セイムはそっと丸窓の縁についているつまみを操作した。


表面にすべり止めの加工を施された金属製のつまみは彼の予想通りに窓ガラスの遮光装置になっていた。



薄暗く静かな空間と共に束の間の安息が訪れる、そうかと思えば扉や壁を伝って賑やかな声が段々と近づいて、それはやはり彼の予測通りに部屋のすぐ前で停止した。


きっと起きなければならなくなる。


セイムはそう思った。


活き活きとして楽しそうに、はしゃぐくぐもった聞き覚えのある声がドアの向こうから聞こえてくる。


やめろって、押すんじゃねえ!

ええー!いいじゃん!ヤナギさんはやくぅ!

はやくはやく・・・!

押すな・・!いてて。マジで・・・マジでいてえんだぞ・・・!

えへへ。 

・・・早くあけて。

はぁ、全く。

大丈夫ですか?先輩?



「おはようございます」



部屋の扉を少し開けて顔を出したのは、ウォンバットの乗組員の一人ヤナギだ。


その後ろには彼の後輩であるテルの姿もあった。


ヤナギが少し照れた様子で何かを告げようとすると、彼を押しのけて一人の少女が部屋に侵入してくる。


その様子は、図々しく粗暴だった。


「・・・いってて」


「ミズキー!セイムー!おっきろー!」


セイムはだいぶ前からすでに起きていて、彼の上で丸くなるミズキは面倒くさそうにその場でもたもた回転して、顔だけを扉の方へ向けた。


なのでセイムも大変失礼だと思ったがそのままの姿勢で扉の方を、さらに言えば押しかけて来た人たちの隙間から覗くジゼルの姿をそっと見た。


「おきてるよ」


ミズキが金色の目をぎょろぎょろさせると、ヤナギが脇腹をさすりながら申し訳なさそうに言った。


「すみません、ミズキさん。こっち側しか部屋の空きが無くて。俺やト毬木さんとじゃ嫌っすもんね」


「大丈夫ヤナギ君、気にしないで」


「はい」


「ミズキー!!」


粗暴な侵入者のクウコは、軽く跳ねるとそのままセイムの上の白い毛の塊に飛び込んで顔を擦り付けた。


その様子は洗顔のようでもあった。


普段と少し違うクウコの態度からミズキは、彼女に訪れた変革を鋭敏に察知した。


「クウコ?どうしたの?」


顔をうずめたクウコは、むーっと唸って、さらに深く顔をうずめた。


「・・・私たちね、これから分かれて、何かするみたい」


顔こそよく似ているが、比較的物静かな雰囲気を放つのは双子のもう片方のカゼハだった。


カゼハは右目の包帯の場所を直して、やはり、ヤナギの脇腹をさり気なく突きながら部屋に潜り込んだ。


人のよさそうな青年は、双子の期待にきちんと応えるように再び悶絶した。


「そうなの?」


「うん。ミズキはね、私とアサギリさんと『世界樹の種』を集めてくるみたい。わたしとミズキじゃないと駄目なんだって」


「クウコは?」


「むぅー」「クウコはね。『レィルスパルタン』の所に行くんだって」


「誰と?」


「えとね。ト毬木さんと、シルドさんと、あのおじさんの4人」


「ふぅん、大丈夫そうだね」


「みじゅきー・・・・」


「クウコ。ちゃんとあの人たちの言う事聞くんだよ?」


「やだよーあの人達のために働くなんてぇ」


「邪魔がられるよりいいでしょ?」


「そぉだけどぉー。あっそだ!セイム!?」


「はい。ここに居ます」


セイムはミズキがベッドから落ちない程度に体を起こして返事をした。


「セイムはね、ジゼルと二人で『偏屈ジジイ』の説得だって!場所はね!」



『ムーンシャイン鉱山!』


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