第140話「女として男に…」
「父はまるで自らの
「そうか…
「…
「
「そうか…」
(
諒は結核を患っていた。
漁師である諒の夫、
死ぬ間際まで気力で病を抑え込んでいた諒の最期を看取った象山は、意識を失う直前まで笑顔を絶やさなかったその
約束とは、象山が諒と初めて逢ったあの日に
琉球王国では日本同様に権力者へ土地を与えて管理させる制度があり、その場所に集落がある事は土地の管理者すら知らなかったが、領地分配による取り決めでは諒の生まれ育った集落がある土地は国によって定められた管理者が存在していた。
だが、重明は陸が琉球から旅立ったあの日、見送りに行かずに当時の琉球王である
当時の琉球本島に於いて王朝の庇護下にある首里城周辺の統治は見事なものだったが、王朝の管理が行き届かない地域では略奪や民同士の小競り合いが絶えず発生していた。しかし、烈士として名を知らぬ者がいない重明とその一族、更には重明に次ぐ二代目烈士となる象山という比類なき武を持つ者の管理下にある土地に暮らす者へ略奪などを行う事、それは即ち、比類なき武を持つ者へ対する宣戦布告に等しかった。その為、この日を境にしてその土地は首里城周辺以外では異例とも云える程に平和な地域となり、その平和は重明がこの世を去っている現在も維持されている。
「……ジン、お前
象山と慶一郎のやり取りをただ黙って聞いていた
だが、慶一郎は何も答えなかった。否、儀間の言葉にどう応えるべきかを決め兼ねていたが故に答えられなかった。
「なぜ何も云わぬ?ジンというのは本名ではあるまい。ジンとは
「ふっ、信用しているに決まっている」
(お前ほどの男、か………ふふ、私はまた男に嫉妬している。私が
僅か数カ月という短期間で次々と出逢った男達、その男達による熱い想いが慶一郎に「自分が男であったならば…」という想いを抱かせていた。更に、この日出逢った男達に対しても、その男達の内の一人から聞かされた昔話にも、自分が女ではなく男であったならばどれ程によかったか、慶一郎は心底そう感じていた。
慶一郎は女でありながら男として生きてきた事を悔やんでいないが故に、
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