第103話「運命の日」
慶長十九年七月三日。
大坂城の本丸にある天守を望める小高い丘の上の開けた場所、そこに無造作に転がる十数体の
赤く染まった地はまるで地獄にあるという血の池の様であり、そこに立つ白無地の着物を纏った慶一郎の姿はまるで、血の池に咲く
血の赤、着物の白、そして手元で鈍く
慶一郎の立ち姿は儚い程に透明で、丘を照らす西陽がそれを際立たせた。
死屍に囲まれる慶一郎の眼からは一筋の涙が伝い、その涙が慶一郎の周囲に転がる死屍が単なる
「…
慶一郎は天を仰いで呟いた。
それは、周囲に転がっている死屍達がまだ生きていた頃に仕えていた
「………やはりお前は
西陽が沈みかけた頃、不意に慶一郎へ声を掛けた者がいた。それは
実力的には慶一郎が負ける相手ではないと思いながらも、喜助は慶一郎が自ら殺される事を選ぶ事を危惧していた。それ故に慶一郎がこの場で刺客に襲われている事を知るとすぐにここへ駆けつけた。
「
「まだ、か。そのまだとやらがいまにならねえで欲しいがな……」
「…人はいつか必ず死にます。それは誰もが避ける事を許されず、誰もが予測出来ない事です。そして、そのいつかを迎えた
喜助は黙って頷いた。
慶一郎と喜助、まだ明かしていない
夜を目指す様にして歩く二人の行く先には豊臣の本拠地である大坂城があった。
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