第21話「早雪の行方」
慶長十五年十一月十三日―――
この日、
潮は
「しかし、まさか
潮は当初、九度山を出てから早雪が預けられた人物の現在の家がある岡山へ行ったが、そこには早雪が預けられた人物の家は無かった。
当てが外れた潮は、岡山でその人物が京都へ移り住んだことを突き止めると急いで京都へ向かい、京都へ着くなりその人物の家を探し当て、その家を訪ねていた。
「ここか…頼もーう!誰か
潮は家の外から声をかけた。しかし、返事はなかった。
「むう…留守か?いや、念のためもう一度…頼もーう!!頼もーう!!!」
「こんな朝早くから何ですか!騒々しい!そんな大声を出さなくても聴こえています!」
再び潮が声をかけると家の中から不機嫌そうな女が、いかにも寝起きという
潮は誰かの元を訪ねる時、決まって早朝に訪ねることにしていた。それは、早朝という時間帯が他の時間帯に比べて留守の可能性が低いからである。
「これは申し訳ない。声をかけたものの返事がなかったもので。ここに
「えっ!?…
寝起きで応対したこの女こそ、潮が会いに来た早雪本人であった。
「あ…し、少々お待ちください!」
訪問者が既知の仲である潮とは知らず、ぞんざいな態度と身形で接してしまった早雪は慌てて家の中へ引っ込み、暫くすると身形を整えて再び現れた。
「お待たせしました。
「え…ああ、はい。わかりました。では、失礼します」
先程とは全く異なる丁寧で淑やかな早雪の態度に戸惑いつつも、潮は云われるが
そして、客間へ通された潮は早雪と向き合う様にして座った。
「あの…
「何でしょう、
「先程の事ですが…」
「無論、
潮は今回の訪問以前から数年に一度、九度山への
「前回と変わらない…それは私がまだまだ子供だと云いたいのですか?」
早雪はやや不機嫌そうな顔をしていた。
最後に潮と早雪が会ったのはこの時から約三年前であり、早雪はまだ十一歳だった。それから三年の月日が経ち、早雪もそれなりに成長していたつもりでいたが、そんな早雪に対して潮は変わらないと云った。それが早雪は気に入らなかった。
「いえ、その様な意味では決して…」
「ではどういう意味なのですか?私はこれでも女人として成長したつもりですが?」
「くっくっくっ…ガキが何云ってやがる」
慌てる潮と、その潮を問い
その笑い声で潮はやっとその男の存在に気がついた。
潮は小姓の頃に甚五郎の圧倒的な武に触れて以来、武芸を磨き続けてきた武芸に秀でた者である。その実力は武芸者として一流と云えた。
しかし、笑い声を発したその男は、潮に全く
「なっ!?
「お前の知らぬ間にだ、
「
早雪は自身をガキと云った男に対して抗議の言葉を投げ掛けた。
その男の名は
「ああ?ガキをガキと云って何が悪い。くっくっくっ…」
「くっ!この…」
「
潮が早雪を制止した。
そして、潮は又兵衛の方へ向き直り、改めて挨拶をした。
「
「おう!よく来たな。だが
「
早雪は繰り返される又兵衛の横柄な態度に腹を立てていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます