第6話:誰の絆が最も強い? ♯ポンルーム伝言ゲーム

 ついにシロルーム全体コラボの当日になってしまった。


 しかも、期生対抗の対決ということでチーム戦だった。

 負けたら当然だけど罰ゲーム……。




「うぅぅ……、大丈夫かな……?」




 伝言ゲームということだけど、本当に上手く伝えることができるのか、僕のせいで負けないか……と、今から不安でしかなかった。




「体調が悪くなったから今日はお休みにさせてもらおうかな……」




 なんだが頭がふらふらする気がする。

 うん、きっと一日しっかり寝て休まないとダメだね。


 僕がベッドへと向かおうとした瞬間にキャスコードの通知音が鳴る。



 ピコピコ……。



 えっと、誰からかな……。ココネから?



『どうしたの?』


ココネ:『ユキくん、配信の準備はできてますか?』


『えっと、それだけど、僕やっぱり――』


ココネ:『もちろん休むなんて言わないですよね?』


『うっ……』


ココネ:『最近なかったけど、やっぱり大人数の時は緊張しますか?』


『……うん。それもあるけど、やっぱりチーム戦っていうのがね。みんなに迷惑をかけちゃうんじゃないかなって――』


ココネ:『大丈夫ですよ。誰も迷惑なんて思っていませんから。それに三期生は私たち四人で初めて全員が揃うんですよ? 一人でも欠けたら三期生じゃありませんからね。だから、三期生の絆を見せつけるのにユキくんが欠けたらダメなんですよ!』


『そっか……。うん、そうだよね。わかったよ。僕、頑張るからね』


ココネ:『その意気ですよ! でも、本当に体調が悪いなら言ってくださいね。そのときは無理したらダメです!』


『大丈夫……。みんながいるから頑張るよ……』




◇◇◇

『《♯ポンルーム伝言ゲーム》誰の絆が最強か?《シロルーム》』

1.6万人が待機中 20XX/07/14 20:00に公開予定

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【コメント】

:ついに始まった

:ちゃんと伝わるのか?

:全く違うものをいいそうw




コウ :『みなさん、こみー。ボクはシロルーム一期生の海星コウだよ。今日はフウちゃんと二人でゲームの進行をさせてもらうよ』


フウ :『こ、こんぽこー。お、恐れ多くもコウ先輩と一緒に進行を担当させてもらうことになりました、四期生の狸川フウ、ポコ。そ、その、尊敬する先輩と一緒に進行することになって凄く緊張してるポコが、頑張るポコ』


コウ :『はい、よくできました』


フウ :『えへへっ……』




 頭を撫でる仕草をされたフウは嬉しそうに笑みを浮かべていた。




アカネ:『コウは渡さないぞ!』


エミリ:『フウは四期生よ!』




 進行の途中に声を挟んでくる人がいるけど、もちろんコウはバッサリと切り捨てる。




コウ :『外野あかねはまだ喋らないでね。ルール説明のあとに順番に紹介していくから』


フウ :『えっと、エミリも邪魔したらだめポコよ。四期生は暴走ポン組じゃないことをみせるポコよ』




【コメント】

:さすがコウパイセンがいるとスムーズにいくな

:ぽんぽこも中々

:安心して見てられる




コウ :『それじゃあ、早速ルール説明をフウちゃんにしてもらうね』


フウ :『は、はいポコ。えとえと……、今回する伝言ゲームは出題された内容をその名前を使わずにチーム全員に伝えるゲーム……ポコ。伝え方は毎回変わって、指定した方法で伝えてもらうポコ。【カタカナのみ】【英語のみ】【名詞のみ】【擬音のみ】とか色々な条件を出していくポコ。それで出題者一人の方に伝えてもらって、残り三人の方に回答してもらうポコ』


コウ :『うん、ありがとう。正解したら三点。あと条件を満たしてない伝え方があったらアウト宣言していくよ。一回アウトで減点一。三回アウトで終了になるからね。回答者は開始の合図をした後は気をつけてよ。それじゃあ、順番に名前と意気込みを言ってもらおうかな。まずは一期生チーム。アカネ、お願いね』




 一期生のアバターを表示させる。




アカネ:『やっほー! 宇宙一の美少女、語彙力つよつよアイドルこと美空アカネだよー。今日は私の語彙力で草を燃やしていくからよろしくねー』


ユージ:『ちょい待つっす!? 俺っちは味方のはずっすよ!?』


ユキヤ:『ふっ、真緒ユキヤだ。我が勝つことは決まっているので、適当に草を持ってハンデを背負ってやる』


ユージ:『は、ハンデって酷くないっすか!? 俺っちも頑張るっすよ!?』




 必死にユージが訂正しているが、それもコウは容赦なく切り捨てる。




コウ :『はい、時間が押してるからユージくんの自己紹介はそれでいいかな?』


フウ :『こ、コウ先輩!?』




 フウは隣で驚いていたが、コウはニコニコと微笑んでいた。




ユージ:『ちょい、だめっすよ!? 俺っちは――』


アカネ:『草っす。今日は燃えるために頑張る――』


ユージ;『――っす。って、なんで俺の声真似をしてるんっすか!?』


コウ :『はい、一期生チームでしたー』


フウ :『ぱちぱち……』


ユージ:『ちょっち待つっす。俺はまだ――』




 容赦なく一期生の面々の音が消されていた。




コウ :『チームワーク抜群のメンバーでしたね』


フウ :『あ、あははっ……。ものすごく個性的な方たち……ポコね』


コウ :『最初の頃は纏めるのが大変だったのよ……。まぁ、フウちゃんなら分かってくれると思うけど――』




 コウが遠い目を見せる。

 おそらく元々は今フウの置かれている、周りがポンで暴走している……という状況だったのだろう。




フウ :『た、大変ポコ……』


コウ :『頑張ってね。ボクの代わりに』


フウ :『こ、コウ先輩の代わりは無理ポコー!?』


コウ :『ふふっ、それじゃあ次は二期生チームね』




 二期生のアバターが表示される。




オンプ:『はぅぅー、二期生の姫野オンプなのですよー。精一杯ボケられるようにがんばるのですよー』


タイガ:『なにっ!? ボケたら良いのか? 貴虎タイガだ! ボケるってどうするんだ?』


ツララ:『……貴方は普通にしていると良いのよ。氷水ツララ……。適当にやるわ』


タイガ:『んっ、普通で良いのか!?』


タマキ:『にゃっふー、こんにゃー、にゃーにゃー。挨拶だけでもこれだけの語彙がある最強の猫、猫ノ瀬タマキなのにゃ。今日はユキくんをけちょんけちょんにやっつけて、みんなに涙目上目遣いのユキくんを披露するのにゃ。よろしくなのにゃ』


タイガ:『挨拶を増やしたら良いのか?』


コウ :『はい、二期生のみんな、ありがとう。安定感が凄いね。一番落ち着いてる気がするよ』


フウ :『……羨ましいポコ。あまり暴走してなくて』


コウ :『ある意味一番カオスなんだけどね』


フウ :『……?? どういう意味ポコ??』


コウ :『まだこれはフウちゃんには早いわね。あまり暴走はしないポンだと思ってくれたら良いわよ』


フウ :『良くわからないけど、わかったポコ!』


コウ :『さて、それじゃあ、次にいきましょうか。大本命。シロルームで一番絆が強いのは……と言われたら真っ先に上がるのがこちら。三期生、いきますね!?』




 ついに僕たちの名前が言われてしまう。

 すこし緊張しながら僕はミュートを解除していた。



『え、えとえと……、あの……』


ココネ:『あっ、まずは私が自己紹介しますよ。ユキくんは深呼吸でもして落ち着いてください』


『う、うん……、ありがとう……』


ユイ :『うみゅ。早速、三期生の絆を見せつけてるの。ユイも混ざるの』


ココネ:『じ、時間がないですよ。ほらっ、ユイちゃんもしっかりしてください』


ユイ :『うみゅー、残念』


ココネ:『では、改めて、シロルーム三期生の真心ココネですよ。今日は三期生を纏めて頑張って行きたいと思います』


ユイ :『ママなの』


ココネ:『ママじゃないですよー。それじゃあ、次はカグラさん、お願いしますね』


カグラ:『全く、相変わらずね。私は神宮寺カグラよ。でも、三期生にはユキのことなら全て分かるココネとゲーム最強のユイ。そして、最強の――』


ユイ:『ポン姫』


カグラ『――である私がいるのよ。段ボール一つ抱えても余裕ね。って、ユイ、何勝手に話しているのよ!』


ユイ :『大したことじゃないの。本当のことを言ったの。あと、ゆいは羊なの。数字を数えて寝るのがお仕事なの。今日もすぐに寝たいと思うの』


ユキ :『ゆ、ユイ、寝たらダメだよ!? わ、わふっ。そ、その、僕はえと……、段ボールです。えとえと、喋るのは苦手だから足引っ張っちゃうと思うけど、が、頑張りますね』


ココネ:『ユキくんは段ボールじゃなくて、ユキくんですよ。それに今日は動かないので隠れられないですよ』


ユキ :『あうあう……。その、僕以外のみんな、頑張って……』


コウ :『はい、ということで三期生、段ボールと愉快な仲間たちでした』


フウ :『やっぱりあまり暴走してないポコね……』


コウ :『まぁ、三期生はどちらかといえばオフになったときに暴れまくるからね。ココママが』


フウ :『うぅぅ……、次が心配ポコ……』


コウ :『大丈夫よ。それじゃあ四期生、お願いね』


ルル :『みんな、こんるるー。ユキ先輩の一番弟子、天瀬ルルだよ。今日はぼくとユキ先輩の絆を見せつけるために徹底的に間違えていきたいと思います。よろしくねー』


エミリ:『(ぽこぽこ……)』


イツキ:『はーい、お姉さんは姉川イツキよ。今日もみんなを辱めていきたいと思うからよろしくねー』


フウ :『はぁ……、やっぱり……』


コウ :『ポンとすぐ分かるね。さすがポンポコ組』


フウ :『ポン組ポコ……。ち、違うポコ。普通に四期生ポコよ!』


エミリ:『ちょ、ちょっと待って。エミリはまだ自己紹介を――』




 慌てて話すエミリだが、そのままミュートにされてしまった。

 画面の向こうでいつものように台パンをしてるエミリを想像して、フウは苦笑を浮かべていた。




コウ :『それじゃあ、そろそろゲームを始めていくね』


フウ :『まずは一期生から……ポコね。コウ先輩も混ざるポコ?』


コウ :『えぇ、そうなるわね。今回のお題はフウちゃんが考えてくれた物でおねがいね』


フウ :『ま、任せるポコ。とっておきのものを考えてきたポコ』


コウ :『それは楽しみね。それじゃあ、回答者の発表をお願いね』


フウ :『わかったポコ。回答者はアカネ先輩ポコ。お代は直接アカネ先輩に送るポコ』



[鍋を名詞のみで伝える]



フウ :『まずは簡単なところを選んでみたポコ。それじゃあ、スタートポコ!』




◇■◇




アカネ:『ふははははっ、来たぞ来たぞ、私の時代が!!』




 自信たっぷりのアカネが笑い声を上げていた。

 しかし、その様子を見てコウは慌て出す。




コウ :『アカネ!? もう始まってるのよ!?』


アカネ:『へっ?』


フウ :『一期生チーム、アウトポコ』


コウ :『はぁ……、言ったでしょ? 開始の合図をしたら気をつけてって』


ユージ:『草しか生えないっすね』




 ユージのその言葉にアカネは少しピクッとしていた。

 そして――。




アカネ:『草! 炎! 草! 肉、汁。土器!』


ユージ:『ちょっ!? 俺っち、燃やされてないっすか!? しかも思いっきり絞られて』


ユキヤ:『うむ、草は良く燃えるからな』


ユージ:『理由になってないっすよ!?』


コウ :『えっと、草ってもしかして何かの野菜?』


アカネ:『葱、白菜、白滝、ユージ、炎』


ユージ:『やっぱり、隠れて俺っちを燃やしてるっすよ!?』


ユキヤ:『ユージを食材にしたもの……、闇の儀式か?』


コウ :『えっと、葱と白菜を使うもの……』


ユージ:『俺っちは食材じゃないっす!!』




 具材の名前を言うだけで予想できる今回は用意した問題の中でも比較的簡単な方だった。

 ただ、一期生……、主にアカネによってそれは変な方向へと進んでいく。




コウ :『火を使うと炭ができるよ? ユージさんを炭に……』


ユージ:『もういいっす。俺っちだけでも真面目に考えるっす』


ユキヤ:『ユージ……、草……、燃える……、炭……、はっ!? 暗黒物質か!!』


コウ :『それだね! うん、ボクが料理をするとアカネがいつも言ってたよ! 「コウの料理は暗黒物質ができあがるから私が作る」って』


ユージ:『えっと、絶対に違うと思うっすけど?? 普通に俺っち以外は具材名って考えると鍋とかじゃないっすか?』


コウ :『そんなことないかな。アカネがボクに向けて食材名で言ってきてるんだから、失敗したものを言ってるはずだよ』


ユキヤ:『うむ、相手は暴走特急だ。まともな答え方をするはずがない』


アカネ:『わ、私だってまともな回答をすることもあるんだよ!?』


フウ :『えとえと、二回目のアウトポコ』




 フウが無情に宣言するとアカネは悔しそうに口を噛みしめて、それ以上何も言わなくなっていた。




ユージ:『今回はもっとシンプルなやつじゃないっすか? ほらっ、美空がそこまで言ってるんっすよ?』


コウ :『うーん、普通に考えたら鍋だと思うけど……』


ユキヤ:『ユージが燃えてるもんな』


ユージ:『だから俺っちは関係ないっすよ!? きっと鍋っすよ!!』


フウ :『えっと、では、回答は[鍋っすよ]ってことでよろしいポコか?』


ユージ:『全く良くないっすよ!?』


コウ :『えっと、フウちゃん。回答は[鍋]でお願いね』


フウ :『はい。では正解は……』




 フウは少し口を閉ざして、意味深な間を開ける。

 これはコウから頼まれていたことだった。




フウ :『正解です! おめでとうございます!! ぱちぱちぱち……』




 フウの拍手が響き渡る。




ユキヤ:『我が間違えるはずなかろう』


ユージ:『思いっきり暗黒物質って言ってたっすよね?』


アカネ:『本当に私を何だと思ってるの!?』


コウ :『普段の行動のせいでしょ?』


アカネ:『うぐっ……』


フウ :『ということで、一期生チームのポイントは一点でした』

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