第5話:反省会配信
『《♯犬拾いました》昨日の反省。雑談枠 《雪城ユキ/シロルーム三期生》』
1.2万人が待機中 20XX/05/06 20:00に公開予定
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時間は20時5分前。
すでにかなりの待機者がいるので、思わず緊張で体が強張ってしまう。
――何かやり忘れたことはないかな?
意味もなくカタッターを開き、しっかり予告配信を投稿できているか確認していた。
雪城ユキ@シロルーム三期生 @yuki_yukishiro 4時間前
本日、20時からライブ配信します。わふー ♯犬拾いました
@247 ↺3,571 ♡1,472
とんでもない数の反応があり、すでに追い切れていない。
そして、ライブの方もまだ段ボールしか出ていないのに、コメント欄が盛り上がりをみせていた。
【コメント】
:待機
:わふー
:今日は一人なのか?
:間に合った
:待機
:今日こそ拾う
:今日も段ボールか
:でも、文字が違うな
:『反省中』wwwwww
:wwwwww
:草
担当さんが新しく用意した段ボール。そこには『反省中』の言葉が書かれていた。
きっとユキくんなら使えると思いますよ、といわれながら渡されたそれを早速使ってみたら、かなり盛り上がってくれている。
自分で準備できると大きいのだけど、こればっかりは仕方ないので担当さんにお願いしている。
しかも今は配信前に流れるミニアニメのようなものを準備してくれているようだった。
シロルームでは三万人を超えたら、その記念配信としてミニアニメを公開することになっている。
と言いつつ、初配信と同時に準備を初めてくれているのだが、僕の場合は予想を超える伸びをしていたのでそれが全然間に合わないらしい。
もう十万人記念配信時にお披露目する3Dアバターも準備を始めてるといっていた。そっちは気が早いとも思うが、担当さんは今度は間に合わないなんてことにはしません! と息まいていた。
だからこそ、今回の段ボール文字替えはあくまでも応急手段。
しかし、それだけのことで盛り上がってくれている。
ただ、盛り上がれば盛り上がるほど、僕の緊張感は高まっていく。
――うぅ……、やっぱり二回目でも慣れないな……。
何を話すか、一応
しっかりとその都度対応する必要があるわけだ。
大きくため息を吐いて、精神を落ち着ける。
すると、そのタイミングでコメント欄にスパナのマークが見える。
【コメント】
真心ココネ🔧:ユキくん、頑張ってー
神宮寺カグラ🔧:私が来てやったぞ
羊沢ユイ🔧:うにゅー、眠い
:三期生勢揃いw
:またコラボあるか?w
三期生全員が応援に来てくれている。
彼女たちもこのあと自分の配信を控えているはずなのに。
小さく微笑むと覚悟を決めて配信をスタートさせる。
『わ、わふぅ……、こんばんは。ゆ、雪城ユキです。き、今日もひ、拾いにきてくれてありがとぅ…』
ゆっくり顔を上げて、辛うじて耳が見えるくらいで挨拶をする。挨拶の仕方も担当さんと考えて作り出した。
【コメント】
:わふー
:わふー
:わふー
真心ココネ🔧:わふー
:わふぅ
:また隠れてるwww
:俺が拾う!
:待て、俺が先だ!
:可愛すぎる
開始と同時に流れるようにコメントの速度が上がる。
それを見つつ、顔だけを段ボールから出していた。
『えとえと、今日はその……あの……、昨日の配信について反省会をしたいと……、ううん、したくはないけど、その……、担当さんがやれって言うから、仕方なく、嫌々、やりたいと思います……』
それを言い終えるとサッと段ボールの中に隠れる。
【コメント】
:ユキくん、見えたと思ったら隠れたw
:本当に嫌そうw
:わふー
:昨日は伝説を作ったもんねww
:wwww
:草しか生えない
『と、とにかく昨日は何がダメだったのか、皆さんからもコメントを書いてもらえませんか? ぼ、僕としては頑張ったの……ですけど』
もう一度ゆっくりと顔を出す。
流石に配信中は緊張からか体が小刻みに震える。
【コメント】
:何が……っていうか全部?
:全てが伝説だったのでよかったよ
:一つになんて絞れないよー
:今日はチャットが見えないね
『ふふっ、今日はちゃんと消しておいたよ』
自信たっぷりに答える。
すると、そのタイミングで通知音がなる。
ピコッ!
『あぁ!? 通知音を消し忘れてる!?!?」
【コメント】
:wwww
:早速一つ
:誰からー?
:俺のことか
:なんだ、俺のことか
:おまえらwww
羊沢ユイ🔧:読んでー!
『え、えっと、ちょっと待ってね。あれっ? ユイからだ。読んだら良いんだね? なになに、[ユキくんの今日のパンツは……]って、わわっ、な、何言わせようとするの、ユイ……』
顔を真っ赤にして、段ボールへと隠れる。
【コメント】
:ユイちゃん、GJ
:かわいい
:惜しい
羊沢ユイ🔧:b
『はぁ……、はぁ……、と、とりあえず通知音は消したからね。もう邪魔はできないよ』
ユイならばこの後、何度かやってきてもおかしくない。
そう考えて先に手を打っておく。
『そ、それじゃあ、僕から反省点を言うね』
一応自分なりにまとめた反省点。それが書かれたメモ帳を表示する。
ただ、キャスコードを消すことばかり意識していて、メモ帳が表示されたままになっていることには全然気づいていなかった。
【コメント】
:カンペだ
:カンペ見えてるよ
:せんせー、ユキくんがズルしてますー
:ココママー、ユキくんがズルしてるよー
真心ココネ🔧:ママじゃないです
『わわっ、ど、どうしてわかるの!?』
驚きの声をあげてしまう。
【コメント】
:見えてる
:w
:積極的に反省点を増やすスタイルw
『あっ……』
慌ててメモ帳の表示を消す。
この消す動作はミスをしすぎてだいぶ慣れてきた。
『と、とにかく僕なりにダメだった部分をまとめてきたから読み上げるね。えっとまずは[プロフィールを準備してなかったこと]かな』
担当さんが大急ぎで準備してくれたやつで、そのおかげでなんとかなったが、からかわれるネタにもなってしまった。
【コメント】
:えっ!?w
:あれ、ユキくんが準備したやつじゃないんだw
:どおりでわふぅ、なんてセリフがあったのかw
:担当さんのコメントがあったもんね
『し、仕方ないよ。ぼ、僕、配信なんてするの初めてで、いきなりライブでしかもトリだなんて……、うぅ……』
今考えても涙が出てきてしまう。
他の人だったらもっと上手くまとめられたんじゃないかって考えずにはいられなかった。
『でもでも、あれはココママやユイも悪いんだからね!? 二人が完璧な放送をするから……』
【コメント】
神宮寺カグラ🔧:あれっ、私は?
:ポンコツはポンコツを知るw
:www
:人のせいにw
『で、でも、他に問題はないよね? ぼ、僕なりには頑張ったし……』
【コメント】
:はぁ?
:はぁ?
:問題しかないんだが?
真心ココネ🔧:ユキくん、正座(ニコッ
ココネから怖いコメントがくる。これは素直に聞いておくべきだろう。
『は、はい、ココママ……』
その場で正座をする。ただ、やり慣れてないせいですぐに足がピリピリと痛み出す。
『うぅぅぅ……ま、まだしないとダメ……?』
【コメント】
真心ココネ🔧:放送終了までね
:鬼だ
:悪魔だ
羊沢ユイ🔧:延長は?
:羊の悪魔もいる
実際にしているところは見えないのだから無理にする必要はないのではないか、と思うけどなぜか素直に正座し続ける。
『あうぅ……、ご、ごめんなさい。もう……むり……』
パタッ。
慣れない正座に足が限界になり、そのまま倒れてしまう。そして、痺れてまともに動けなかった。ただ、倒れた状態でも喋ることは続けていく。
『あぅぅ……、いたたたっ。え、えっと、他にすること……、あっ、そうだ。もう一つ、なんか僕のチャンネルにバグが発生してチャンネル登録者数がおかしいことになってるので、運営さんに連絡しないと……』
【コメント】
:ユキくんの脳内がバグw
:www
:チャンネル登録者数が多いから疑うw
真心ココネ🔧:そういえばユキくん、もう収益化申請できるんじゃないの?
『しゅう……えきか?』
ココネのコメントを見た瞬間に動きが固まってしまう。
MeeTubeではある一定の条件を満たすと動画の収益化が可能となる。
その条件は動画の総再生時間が4,000時間とチャンネル登録者数が1,000人以上。
一つ目の動画総再生時間は一つ目の動画で悠にクリアしている。延長された結果、一時間の動画が既に十万再生を超えている。
チャンネル登録者ももうじき五万人超えそうだ。
『そ、そういえばできる……かも?』
条件はすでに達成している。あとは申し込むだけ。
【コメント】
:スパチャの用意しないと
:収益化、興味なさそうw
真心ココネ🔧:収益化通ったら記念配信だね
『え゛っ!?』
――記念配信? 何の記念? 罰ゲーム?
コメントに頭が全く追いつかない。
そこにさらに追い討ちをかけることを言われる。
【コメント】
:配信一回で記念配信にたどり着く犬。いや段ボールw
:記念配信楽しみ
羊沢ユイ🔧:うみゅー、3万人記念配信……。5万人記念配信も……
『ちょ、ちょっと待って。そんなにたくさん記念配信なんてできないよ? だ、だからお気に入り登録者は増えなくて良いよ。増えなくていいんだからねっ!?』
【コメント】
:あっ、加速したw
:www
:5万人超えたよw
:3万人記念と収益化記念と5万人記念配信楽しみw
『あぅ……、な、何で増えるの? バグなの? そ、そうだよね。それにこう何度も記念配信をする必要はない……よね?』
【コメント】
:チャンネル登録者数は嘘つかないよ?w
:バグを疑わない犬w
真心ココネ🔧:担当さんから[記念配信はしてください]だって
:担当きたw
:記念配信決定おめ!
『うぅぅ、わ、わかりました。内容、考えます……』
――記念ということもあって、いつもの放送だとダメだろう。ただいつも、と言えるほど配信もしていないのでそれほど気にしなくていいだろうか?
【コメント】
:配信オメw
:草
:筋トレ枠は?w
神宮寺カグラ🔧:私もすぐに追いついてみせるわ
:カグラ様草
:カグラ様草
真心ココネ🔧:私とのコラボが記念枠でも良いかもね。一緒にお祝いしましょう?
『うぅ、そ、それも合わせて考えるよ……』
【コメント】
羊沢ユイ🔧:うにゅ、オフコラボ……
真心ココネ🔧:それもいいね
『え゛!? お、オフ!?』
流石に直接会ってしまうと性別がバレてしまう。それだけは何としても防がないと、待っているのは大炎上なのだから。
『と、とりあえず収益化の申請はしておくよ……。あとオフはなしで……。そ、それとで、できたらコラボもなしにしたいな……』
【コメント】
真心ココネ🔧:ユキくんとのコラボは10日の20時から私の枠でやりますよ。皆さん、来てくださいね
:ユキくん、まだ抵抗してるw
:強制されてて草
:www
『うぅぅぅ、わ、わかったよ。男は度胸、女は愛嬌っていうもんね。度胸で乗りきるよ』
何気なく言った言葉でコメント欄がざわつきだす。
【コメント】
:ユキくん、それ違うw
:それだとユキくんが男にww
:www
:ユキくんは愛嬌
:度胸もユキくんには大事じゃない?
:でもユキくんは女の子だ?
『あぅあぅ……、そ、それはその……、ぼ、僕はその……もちろん男ではない……ですよ?』
自分のミスに気づいて、大慌てで訂正をする。
【コメント】
:なぜ疑問w
:ユキくん、またテンパってる
:ママの出番だよ
真心ココネ🔧:ママじゃないですよ
羊沢ユイ🔧:こんなに可愛い子が男の子のはずがない
神宮寺カグラ🔧:……どうせいつものテンパってるだけよ。深く考えるだけ無駄よ
:↑知ってた
:カグラ様がフォローしてて草
:ユキくん可愛いよ
『えっ、あっ、ありがとうございます? で、でも、僕は可愛くはないですよ? 僕よりココママやユイやカグラさんの方が可愛いですし』
カグラに助け舟を出してもらった僕は心の中でお礼を言いながら、これ幸いにと全力でのっかる。
【コメント】
:可愛いw
:ユキくんは可愛さと愛嬌でできてるよ
:ありえない男疑惑に草
:ユキくんのことを一番わかってるのは実はカグラ様なのか
神宮寺カグラ🔧:当然のことよ
:ポンコツ同士、息が合うんだろうね
:反省会で反省点を増やすの草
『うぅ……、ごめんなさい。僕、どうしても人見知りで、テンパってしまうと何話して良いかわからなくなってしまって……』
【コメント】
:ええんやでw
:ちゃんと謝れてえらいね
:なんだ、俺か
:俺だな
:同志よ
:↑お前たち人見知りすぎ。俺もだが
:大丈夫、俺たちはユキくんのことを信じてるよ
羊沢ユイ🔧:パンツの色は?
『うっ、ぐすっ……、み、みんなありがとう。えっと、パンツの色はく……。っ!?!? ゆ、ユイ、何言わせようとしてるの!?』
【コメント】
:惜しいw
:惜しいw
:く……、黒か!?
羊沢ユイ🔧:ぶいっ
:まさかここまで狙ってたのかw
:草
真心ココネ🔧:こらっ、ユイ。人前でそんなこと聞いたらダメ!
神宮寺カグラ🔧:ユキも女の子はそんなこと言ったらダメよ!
『はぁ……はぁ……、わ、わかったよ……。これは次の反省点として書いておくね。か、書き切れるかな……。新しいノート買わないと……』
【コメント】
:既に一冊使い切ってて草
:前回も今回も暴走してるもんね
:時間がw
『えっ、あっ、本当だ!? い、犬好きの皆さん、今日もありがとうございまし――』
この放送は終了しました。
『《♯犬拾いました》昨日の反省。雑談枠 《雪城ユキ/シロルーム三期生》』
2.4万人が視聴 0分前に公開済み
⤴8,734 ⤵14 ➦共有 ≡₊保存 …
チャンネル名:Yuki Room.雪城ユキ
チャンネル登録者数5.3万人
◇◇◇
【コメント】
:途切れてて草
:w
:w
:最後の最後まで反省点を増やしていく犬
:↑段ボールだろ!
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