これからの章
これからの日
あれから十年。
世界は少しずつ変わりつつあった。
死んだと思われていた勇者たちであったが、魔王は彼らを木に変化させて生かしていた。そんな彼らは生き返り、家族のもとへと帰っていく。
「タツマキお兄ちゃん……」
「カムイ。すまなかったな。長い間帰ってこれなくて。でもようやく帰ってきたよ」
「お兄ちゃん……」
カムイは涙を流しながらタツマキに抱きついた。タツマキは懐かしさを噛み締め、カムイの頭を撫でた。
「カムイ。お前は自慢の弟だよ」
ーールナ王国王宮
王は死んだ。そして今日、新たな王がルナ王国には誕生した。
彼女は腰に剣を提げつつ、玉座の前へつくなり言った。
「私はルナ王国国王、リーフィア。これよりこの国の王になる。もう二度と同じ過ちを繰り返さぬよう、アズマ国、他にも多くの国と協力し、世界の平和を実現させる」
リーフィアは剣を抜き、掲げながら言った。
「皆よ。私の背中を頼り、ついてこい」
王宮にいた勇者たちは喝采をあげる。
その中で、アンヌは隣で壁に寄りかかっている女性に声をかけた。
「ロンギヌス。とうとうあいつが国王になったな」
「正直驚いている。私はリーフィアを敵だと思っていた。だがそれは違ったみたいだな。全ての元凶は倒され、今世界は一つになる時が来た。私はリーフィアについていくよ。アンヌはどうする?」
「当然。勇者機関がなくなった今、この国を護る月光騎士団の騎士長として、使命を全うするのみ」
「護ろう。ようやく平和になり始めた、この美しい世界を」
ーーアズマ国王宮
玉座に座るノヴァは、帰ってきたかつての同級生、コウタロウを前に笑みをこぼしていた。
「コウタロウ……」
「ノヴァ。悔やむ必要なんてなかったんだよ。だってほら、生きているんだよ。コウタロウは」
「ああ。俺たちのしてきたことに、少なからず意味はあったんだな」
そう言うと、ノヴァは「宴会だ」そう叫び、国中大騒ぎ。
今日という日、記念日となり、これからも吟われ続ける日となるだろう。
ーー天界
「ラファエル、アイスエル、ドクエル。あなた方を束縛していた輪廻転生を解きます」
ムーンは三人へ手をかざすと、三人を束縛していた輪廻転生は解かれた。
「「「ムーン様。申し訳ございませんでした。我々のせいで、多くの者が死に、恐怖に陥りました」」」
「確かにそうですね。ですが可能性を見た気がします。この世界に生きる者たちは、この程度では屈しないと。この程度では敗北しないと。あなたたち彼らに負けぬよう、是非とも強くありなさい」
ーー魔王樹
既にそこに魔王はおらず。既にそこに森はあらず。一面に広がる草原の中に、一つ大きな樹がそこには立っていた。その樹を見つめる一人の女性。
「あれから十年。時間というものは速いものだな」
女性はかつての思い出に浸っていた。
女性は振り返り、去ろうとしたその時、一人の少年に出会った。女性は驚きつつ、その少年に話しかけた。
「君はどうしてここに?」
「何というか、自分でも分からないんです。いつの間にか足はここに進んでいたんです」
「君、名前は?」
「マオ……。何でかな。その名前が、僕の頭の中に残っているです。それにその名前と一緒に僕の頭に根強く残っている名前があったんです」
その少年の言葉に、彼女は思わず涙をこぼしていた。少年は動揺し、彼女の顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか?」
「うん……。大丈夫……大丈夫だよ……」
それでも彼女の涙は止まらず、けれど彼女は悲しい気持ちは抱いていなかった。彼女は涙をぬぐい、立ち上がって少年へ手を差し伸ばして言った。
「私はムーンアイ。よろしくね。マオ」
それでも勇者は助けに来ない。 総督琉 @soutokuryu
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