三十九日目『リーフィアの弱点』
勇者リーフィアは駆けていた。
拐われた勇者を探し、神殿の中をひたすらに駆け回る。
(どこだ……。どうしてどこにも私の生徒がいない?いや、まだ奥に繋がっているようだが……)
リーフィアは目の前にあった扉の前へと駆けた。だがその前に一人の男が立っていた。その男の顔を見るや、リーフィアは自ずと足を止めた。
「ニャーマル!?」
「リーフィア先生。仲間が魔族に拐われました。何とか俺一人でも逃げ出したのですが……出口も見つからず、迷子になってしまいました。先生……仲間を助けてください。拐われた仲間を」
「あ、ああ…………」
リーフィアは困惑していた。
ドラキュスの記憶の中には、確かに殺されたニャーマルの姿があった。
「お前は……本当にニャーマルか?」
「何を言っているんですか?俺は正真正銘ニャーマルですよ。逆にニャーマルじゃなかったら誰なんですか」
「そ、そうだよな。お前はニャーマルだよな」
「リーフィア先生。向こうに仲間がいます。早く向かいましょう」
ニャーマルが指差した方を振り向いた。リーフィアがニャーマルに背を向けた瞬間を狙い、ニャーマルは腕を鎌に変形させ、リーフィアの首を跳ねる。
その寸前でリーフィアは飛び、振り替えってニャーマルを見た。
「ニャーマル。その腕は何だ?」
「いえいえ。ただ、死んでもらえないかと」
リーフィアは剣を抜くと、ニャーマルへとかざした。
「先生。あなたに俺を殺せますか?」
「当たり前だ。今にでもお前の首を跳ねてやろうか」
「なら跳ねてくださいよ」
ニャーマルは一歩一歩リーフィアへと近づいていく。リーフィアは剣を握る手を震わし、ニャーマルの額へと剣が触れた瞬間に剣を下ろした。
その瞬間、ニャーマルは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「先生。やはりあなたの弱点は、大事に育ててきた生徒ですよ」
「そんなわけないだろ。弱点が生徒?ふざけるな。私の弱点は私の弱い心だ。私がもっと強ければ……」
リーフィアは全身に風を纏わせた。
「おや?戦う気になったか?」
「私じゃきっとお前を殺せない。だから、この体を風に託す」
リーフィアは眠りについた。それとともに、リーフィアの体は風に支配されていた。
「禁忌の術。そういえばサクラノとかいう小僧が使っていたな」
リーフィアの体はみるみる制御がつかなくなっており、次第に体は侵食されていく。
「勇者というのは愚かだな。結局、自身では何の決断も下せないんだから。はあ。まあ良いか。たとえ選択を放棄しようとも、結局俺に勝つことはできない」
ニャーマルの姿はみるみる変化していき、四足で腕を生やしたモンスターへと変化した。
「さてと。終わりにしようか。勇者リーフィア」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます