勇者奪還作戦
三十七日目『息をつく暇もなく』
立ち尽くすリーフィア。
彼女がいる大広間へ、一人の勇者が駆け足で入っていった。
「国王様」
慌てて入ってきた彼女は、リーフィアとマリーを見つけた。
「なぜここに……リーフィア、何があった?」
「勇者を育成していた地下施設は、魔王とその配下の手によって…………壊滅した」
それを聞くや、彼女は槍を持っていた手から自然と力が抜ける。槍は音を立てて落ちた。
「ロンギヌス。私は疲れた。どこか休憩できる部屋を提供してはくれないか」
「良いが……後で話は聞かせてもらうぞ」
「ああ」
深いため息を吐く彼女は、剣を鞘に収めるやすぐにベッドへと寝転んだ。だが疲れがたまっていたが、どうにも眠れる気分ではなかった。
(私は……どうしてこんなにも弱い。あの時全てを失ったのに……でもドラキュスに生き返らせてもらったんだ。なのに私は、何も護れないまま…………)
リーフィアはベッドの中で小さく丸まっていた。
何も変えられない自分に、何も果たせない自分に、何も護れない自分の弱さを憎み、リーフィアは虚無感を感じていた。
眠れないまま夜が明け、リーフィアは重たい体を起こして玉座のある大広間へと向かう。
「リーフィア。ようやく来たか」
大広間には三十ほどの勇者が揃っており、彼らは皆子供ではなく十分に成長している歳であった。
そんな勇者たちの先頭に立つは、槍を持っているロンギヌス。
「ではリーフィア。地下施設で何があったのか、教えてくれ」
「ああ」
リーフィアは笑顔などできるはずもなく、終始暗い表情で地下施設で何があったのかを話していた。
勇者殺しが起きたこと、地下施設が魔王たちの手に堕ちていたこと、ラファエルが輪廻転生などという言葉を残して去ったこと、そしてマリー以外救えなかったということ。
「なるほど。そんなことがあったのか」
「なあロンギヌス。エドガーとサクラノはどこにいる?」
「ああ。彼らなら王宮近くの医療施設で今も療養中だ。まあ、もう既に動けるまでは回復しているがな」
「そうか」
リーフィアは考え込んでいる。
「なあリーフィア。もしかしてホムラとかいう魔族に拐われた勇者を奪還しようと考えているのか?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「いや。一応心当たりがある。魔族たちが隠れるであろう場所に」
その言葉に、リーフィアは顔をロンギヌスへと向けた。
「本当か?」
「ああ。とある村に、その神殿はある」
「神殿?」
「ああ。今我々が調査を進めている神殿。だが残念ながらその神殿は昨日より何者かが棲み始めたらしい。そのせいで二人、勇者が行方不明になっている」
リーフィアはふと思い浮かべた。
ーー魔族は他人に乗り移れる。
「リーフィア。どうかしたか?」
「いや。なんでもない。それで、何人の勇者が奪還作戦に協力してくれる?」
「全員と言いたいところだが、今は他の国との対立が激しくてな、大人数で行くというわけにはいかない。だから、私が行く」
勇者の中でも上位の勇者ーーロンギヌス。
彼女は一人で国を滅ぼせるほどの力を有している。
「心強いぜ。ロンギヌス」
「では私とリーフィアの二人で奪還しよう。少数精鋭、その方が速く終わる」
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