第446話 男子会
「なんだ。全然、違うじゃん」
ジョンはそう言いつつも2つのサンドイッチを、美味しそうに食べ続ける。
「そうですか?」
ゼノとノエルも、セスのサンドイッチを食べてみる。
「ノエル、違いが分かりますか?」
「うーん、どちらも美味しいとしか……」
「ですよね。バターとベーコンの塩気と……」
テオもセスのサンドイッチを食べるが、美味しいとしか表現のしようがなかった。
「トラブルとセスのサンドイッチは同じ……どうして? 同じ味を作るなんて、どうして気が合うの? トラブルと何なの⁈」
「玉子サンドなんて、どれも同じだろ」
セスはテオの視線を無視して、トラブルのサンドイッチを口に入れる。
何も言わないセスにジャンが痺れを切らした。
「全然、違うじゃん。分かんない?」
「ジョン、我々には同じモノにしか感じませんが、どう違うのですか?」
「ゼノ、本当に分かんないの?」
「はい。分かりません」
「もー、皆んな味オンチなんだからー。グルメの僕が解説します!」
ジョンは立ち上がり、2つのサンドイッチを手に持つ。
「まずは、こちら。僕達がいつも食べている我らがセスのサンドイッチですがー、これはバターとマヨネーズが塗られています」
「トラブルのにも塗られているよ?」
テオが口を挟む。
「それは、マーガリン! 最後まで聞いて!」
「ジョン、手短に頼みますよ」
「だから、黙ってて! セスのサンドイッチはバターで、かつ、塩コショウで味付けがされています」
テオは、トラブルのもと、言いそうになるが我慢をした。
「次にトラブルのサンドイッチは、マーガリンに少しのマヨネーズと塩と……ここがポイントですが、ブラックペッパーなんですねー」
鼻高々に言うジョンに、ノエルら3人は首を傾げて見せる。
「分かんない⁈ だからー、セスのは塩ベースで、トラブルのはコショウベースなんです!」
ノエルら3人の首は反対側に傾く。
「分かんないの⁈」
「だってさ、セスのにもコショウは入ってるじゃん。ねぇ? セス」
ノエルに言われて、セスは「ジョン、惜しい」と目を細める。
「あいつのスクランブルエッグは、マヨネーズを混ぜて焼いているな。で、黒コショウでアクセントを付けている。俺のはただの塩コショウ焼きだ。バターとマーガリンを嗅ぎ分けたのは、さすが……だ」
「今、豚って言おうとしたでしょー!」
「褒めたんだろ!」
セスは、そう言いながらサンドイッチに手を伸ばす。
「セスー、トラブルのばかり食べてるよね」
ノエルが笑う。
「ああ。人が作った食いもんは美味い」
「トラブルが、でしょ?」
「あいつのは美味いぞ」
「セスが認めるなんて珍しいー」
「黙れ」
「怖〜」
「さあ、そろそろ出発ですよ」
ゼノ合図で全員が席を立つ。
セスは皿を洗いながら、テオを呼び止めた。
「テオ、トランクを確認した方がイイぞ。ノエルが何かやらかしてる」
「え、うん。ノエル、詰めておいてくれたんだよね?」
「もー、セス。余計な事をー。うん、詰めたよ。適当にね」
「ありがと?……チェックしとこ」
テオは部屋に戻り、自分のトランクを開く。
そして、目を見開いた。
「何これー!」
トランクの中は、テオの部屋に飾られていたファンからプレゼントされたぬいぐるみ達がパンパンに詰められていた。
「ノエルー!」
テオは叫びながら、ぬいぐるみを放り出す。
「あーあー、パリのホテルで大笑いしようと思ってたのにー」
「ノエルのバカー! どうして、こんなー!」
「ちゃんと必要なモノも入ってるよー」
「信じてたのにー」
「ごめーん。面白かったでしょ?」
「面白くなーい!」
「ごめんってばー。あ、そろそろ着替えた方がイイんじゃん?」
「げ、ヤバッ。空港ファッション考えなくちゃ」
「お詫びに一緒に考えてあげる。候補は?」
「候補は15パターンに絞られています」
「15って! 絞られてないよ!」
「ひ〜ん、一緒に考えてよー」
「もー」
ノエルは床に座り、クローゼットを
「ねぇ、テオ? トラブルとは上手く行ったの?」
「うん。すごく上手く行ったんだけど、あのね、ノエルに聞けってトラブルが……」
「え、僕に? 僕に何を聞けって?」
「それがね、1回目は少しイッたって言うんだけど、2回目はイカなかったって言われて、その理由を恥ずかしいからノエルに聞けって言われたんだよ」
「えー? ていうか、テオ、2回もしたの?」
「ううん。1回目は少しで、2回目にイッて、3回目に一緒にイッたの」
「全然、意味が分かんないんだけど」
「なんでだよー」
「そのイッたのは、テオがイッたって事?」
「へ? どのイッた?」
「だからー……ダメだ。時間切れ。飛行機の中で聞くよ」
「えー、人に聞かれたら恥ずかしいよー」
「早く、服を決めなよー」
「うん。今、8パターンまでに絞られた」
「絞られてないって!急ぎなよー!」
「うーん、じゃあ、これとこれ。どっちがイイ?」
「パリだからね。花の都って感じで、こっち」
「そうか! やっぱり花柄にする!」
「あー、また、余計な事を言っちゃったよ〜」
ノエルが頭を抱えていると、ゼノが呼びに来た。
「2人とも、マネージャーが来ましたよ。行きますよ」
「はーい」
「あ、マネージャー。このゴミを先に捨てて来て下さい」
「この量は、何ですか! しかもハエがー!」
ゼノはマネージャーをスルーして、戸締りを済ませた。
メンバー達が宿舎を出ると、駐車場の前にはファンの人だかりが出来ている。
手を降り、歓声に応えながら車に乗り込む。
追いかけて来るファンにノエルは窓を開けて「危ないよー」と、笑顔で声を掛けた。
後ろに流れる金切声を聞きながら窓を閉め、テオに言った。
「テオ、帰って来た時は4、5人だったんでしょ? セーフだったね」
「うん、こんなに人がいたら、帰って来られなかったよー」
約1時間で空港に着き、宿舎の前の数倍の人数のファンとマスコミに挨拶をする。
エールフランスの専用ラウンジに入り、メンバー達だけになると、ノエルはトラブルの話を聞きたがった。
「で? もう一度、話してみて」
「う、うん。あのね……」
テオは皆の視線を気にしながら、トラブルの為に控えめに話をした。
最初は聞こえないフリをしていたセスとゼノが、身を乗り出して来る。
ジョンに至っては「それで?」と、先を聞きたがった。
「あの、皆んな、トラブルには内緒ね。皆んなに話した事……」
「もちろんです。女性に恥をかかせる様なマネはしませんよ」
「うん、ゼノ、ありがとう。ジョンもね?」
「分かった! でも、よく分からないから、もう1回詳しく話してー」
「ジョン……ダメだよ。ノエルに聞けって言われたんだから、ノエルだけ分かってくれればイイの」
セスは鼻で笑って皆の輪から外れ、スマホをいじり始める。
「ノエルー、トラブルはどうして不機嫌になったのかなぁ。少しだけだったけど」
「あのね、1回目の『少しイッた』はテオの為に遠慮して言ってくれたんだよ。で、2回目は、あまり良くなくてテオがトラブルに合わせてなかったんじゃない? 強引だったとか?」
「え、あー……痛いから濡らしてって言われたけど……その、よく分かんなくて……」
ジョンは「濡らして⁈ イヤー! エッチー!」と、顔を隠してソファーで悶絶する。
そんなジョンを軽く無視して、ノエルは話を戻した。
「トラブルは、嫌だなぁって思いながらシてたんだよ。あとさ、いちいちトラブルに聞いたの?『イッた?』って」
「うん。その質問やめてって言われた」
「だよねー。女の子は答えにくいよ。彼氏を傷付けない様にとか、気を使うし。引いちゃうよー」
「そうなの⁈ 教えておいてよー」
「女の子が、しっかり濡れていると気持ち良さ倍増だよ」
「あ、それは思った。今朝、2人でイッたんだけど、昨日の何倍も良かったし、感動した」
「え! 今朝⁈」
「うん、今朝。え? 何?」
テオは皆の視線を一身に集めた理由が分からないとメンバー達を見回した。
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