第159話 カン・ジフン現る
テオは息を殺してブラインドの隙間からトラックを見る。
トラックから男が降りて来た。
1階の灯りが付き、男の姿が浮かび上がる。
やはり、カン・ジフンだった。
(こんな時間にトラブルに何の用だろう……)
玄関ドアの音が聞こえ、カン・ジフンが笑顔になり、家に近付いて行く。
テオの視界から見えない位置に姿を消した。
(どうしよう……)
トラブルは後ろ手にドアを閉める。
カン・ジフンは、いつもの穏やかな笑顔で歩み寄って来た。
「こんな時間にごめんね。今、仕事帰りで近くを通ったから。ラインの返事が無いけど、会えるかなぁって」
『返事が無い時は、忙しいと思って下さい。今は友人が来ているので失礼します』
トラブルはスマホのメモで伝える。
「ごめんごめん。気を付けます。少し顔が見たかっただけだから、もう、帰るね」
『何かあったのですか?』
「ううん、何もないよ。最近、郊外の配達が増えたから明日もランチ出来ないよ」
『分かりました』
「じゃ、またね。おやすみ」
カン・ジフンは相変わらずの穏やかさで帰って行った。
トラブルは、ホッとため息を
2階に戻ると、テオはベッドに座り待っていた。
何も言わずに不安な顔を向けるテオにトラブルはベッドに入り、説明をした。
仕事の帰りで近くを通ったので寄っただけだそうです。
「連絡もなく来たの?」
いいえ。ラインが入っていましたが気付いたのは、さっきです。返事が無いときは忙しい時と言っておきました。
「僕の事は?」
友人が来ていると言いました。
「そうか。ねぇトラブル、カン・ジフンさんに危ない事された事ない?」
ないですけど?
「そうか。じゃいいけど」
何ですか?
「……カン・ジフンさんとなら、顔を隠さないで手を繋いで買い物に行ったり遊園地に行ったり出来るよ」
遊園地に行きたいのですか?
「そうでなくて。とても、いい人だからトラブルは彼との方が幸せになれるかも……」
あなたとベッドにいるのに?
「うん。変な事言ってると思うけど、あの、会社でトラブルとカン・ジフンさんを見かけると、お似合いだなぁなんて思うから」
嫉妬はしてくれないのですか?
「してます。思いっきりしています。でも、本当に、いい人そうだから……」
いい人を好きになるとは限りませんよ。それに、私にはカン・ジフンがいい人とは思えません。
「え、なんで⁈」
なぜか違和感を感じます。上手く説明出来ませんが……いい人と思った事もあるのですが、最近、なんだろう……考えがまとまったら言います。
「うん、教えて。でも、ずっとカン・ジフンさんの事を考えられていても嫌なんだけど」
……わがままですね。
「う、なんで意地悪ばかり言うの! そりゃあ、僕はわがままだけど、えーと、でも、意地悪ばかり言われるのは……うーんと、そんがい? ぞんざい? ざんがい?」
「そう、それです! 心外です!」
可愛いー。
「バカにしないで下さい! 年上だからって、まったく……トラブルは年上だよね?」
はい。ゼノと同い年です。
「5歳も上でしたかー……」
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