第138話 代表の秘密……の一部
ゼノは言葉を選びながら、しかし、それをセスに
「私以外のメンバーは会社のオーディションに合格してから1年でデビューしましたよね? だから、知らなくても無理はないのですが、今の会社の
セスはポカーンと開いていた口を慌てて閉じる。
「代表が創業者じゃない⁈ 創立年月日と初代代表ってホームページに載せているぞ。社名の変更や
「仲が悪かったそうです」
「はぁ?」
「親子関係は最悪だったらしい。『らしい』と言うのは代表から聞いただけで事実かどうか分からないからですが、社名も変えて初代と名乗っているくらいですから、本当に犬猿の仲だったのでしょうね」
長身のゼノは肩をすくめて見せた。
「いや、まったく意味が分からない。仲が悪いのに会社を継いだ? 継がせた? そんな事あるのか?」
「うーん、その辺の事情は知りませんが、代表に聞いてみれば良いのでは? きっと、答えてくれますよ」
「……頭が混乱して来た」
「ハハ! セスは一人で考えているから、どんどん難しい迷路に迷い込むんですよ。聞いてみれば、なーんだなんて事、たくさんありますよ。代表が
口が半開きになったままのセスを残し、ゼノは、おやすみーと出て行った。
セスはベッドに倒れ込む。
(頭を整理しなければ寝られそうにない。あいつは嘘を言っていなかった。シャットダウンしただけと言うのも本当か……)
ゼノが嘘を言ったとは思えなかった。
(あいつから、イム・ユンジュ医師の首を絞めたと聞いた時(第2章第118話参照)嘘を感じなかった。チェ・ジオンの事件でパク・ユンホが警察調書にない事実を知っていたのも、単にパク・ユンホの人脈のおかげか? )
寝返りを打ち、天井を見上げる。
(葬儀には軍服もいた。警察関係者もいたかもしれない。パクの顔の広さは葬儀の時、自分の目で確認したじゃないか。代表の父親と顔見知りでもおかしくはない。年齢的にも同年代のはずだ。代表の兵歴と親子関係も本人に聞けばいい)
ギュッと目を閉じた。
(ゼノの言う通り、俺は1人で騒いでいた。代表にもトラブルにも、ただ聞けばいい……それで解決だ……でも、なぜだろう何かが引っ掛かる……何かが……)
セスは浅い眠りの中、夢を見る。
真っ白い何もない部屋。いや、部屋なのかさえ分からない。ただ白くて広い空間を歩いている。
誰かを呼んでみる。何も聞こえない。叫んでも叫んでも自分の声も聞こえない。
ここはどこだ。俺の体は? 俺の声は?
吸い込んでもいないのに、真っ白い空間が体の穴という穴から入ってくる。
苦しい。全部吸い込むなんて無理だ。俺には無理だー……
ゼノはベッドで自室の天井を見上げながら、物思いにふけっていた。
セスが納得をしたか不安だった。トラブルの事になると冷静でいられなくなるそれは『愛』だと思うが、セスは『同志』と言うのだから仕方がない。
(嘘は
それぞれの長い夜が更けていく。
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