第103話 カモフラージュ作戦
「テ、テオ、なんてこと言うんだよ」
ノエルは動揺して2人の間に割って入る。
「セス、テオは本気じゃないよ。今は少し興奮して心にもない事を言ってしまったんだよ。ね、テオ、そうだよね?」
テオは答えない。唇を震わせて黙ったままセスを見ている。
セスもまた、ジッとテオを見ていた。
「はい、2人とも終わり」
ゼノがポンと手を鳴らした。
「セス、事件の裏を調べて、それを一人で胸の内に閉まっておけますか? どんな事実でも耐える自信があるのですか?」
セスは黙り込む。
ゼノは続けた。
「私もセスの言う通り、トラブルにはまだ秘密があって代表はそれを隠していると感じます。知りたいと思うし教えてほしいとも思う。パズルのピースが足りないままは気持ちが悪いですからね。でも、それがいいと飾る人もいるとは思いませんか? セス、セスはアーチストです。パズルが抜けている方がいいという感性を否定は出来ないですよね?」
セスは無言で
「テオ、人はどんどん欲張りになって行きますよ。2人でいれば、それが幸せだと思っていても普通にデートしているカップルを見れば
「実体験だな、ゼノ」
セスはボソッと言う。
「ゼノ、ゼノって今は彼女いないよね?」
ノエルは、代表がスタッフを説得した話を聞きたがった。
「ええ、デビューしたての頃に付き合っていた彼女の話ですよ。2人でコンビニにも行けないし、ピザが届いても私が玄関に出るわけには行きませんでしたからね。ずっと我慢させていて、結局、普通の仕事の人がいいとフラれました。大好きだったんですけどね」
「ぼ、僕、トラブルを諦められないよ……ねぇ、皆んな、手伝ってよ。僕とトラブルのカモフラージュになって。コンビニもデートも皆んなといれば怪しまれないでしょ?」
「テオとトラブルが、いい雰囲気になったら僕達、どうすればいいのさ」
「その時は、後ろ向いてて」
「いやだよ〜」
ノエルは髪をかき上げる。
「それ! いいアイデアですよ! 私も夜中にゴム買って来いとセスに電話すればフラれなかったのかも」と、ゼノが乗る。
「そんな電話、ガン無視だけどな」
セスは眉に力を込める。
ノエルは「そんなの上手く行くわけないよー」と、頭を抱えた。
「いや、いや、皆で協力すれば何とか出来ますって」
「やってみよー!」と、ジョンの掛け声に「おー!」と、テオとゼノがノリノリの笑顔で手を挙げた。
ノエルは「夜中に買って来いは、やめてね」と、テオに
「ノエル、ゴムって何?」
ノエルは目を見開き、セスに、この子、どうしようと、視線で問いかける。
セスは顔を
「テオの性教育もゼノに任せた」
「そこはトラブルに任せますよ……」
遠い目をするゼノを尻目に、テオは元気に指を立てた。
「よし、時は来た! トラブルに告白して来る!」
「え!付き合い始めたんじゃないの⁈」
「ううん、まだ」
ダァーと、力が抜けるメンバー達。
控え室の外では代表がドアに寄りかかり、声を殺して笑っていた。
そこに心電図のゼリーとティッシュを持ったトラブルが「?」顔で近づく。
手話で、何をしているのです?と、聞く。
代表は「ノックして入れよ」と、半笑いで立ち去った。
トラブルは「?」顔のままノックをする。
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