第58話 なんだか久しぶり?

「おはようございます、って大丈夫ですか?」

「……大丈夫です……」

「なんか眠そうだねー?」

「ちょっとすることがありまして……」


 出来る限り睡眠時間を削らないようにしていたのだけど、どうしてもあと少しあと少しと伸びてしまった。


「あと10分くらいしかありませんけど、少し眠ってはどうですか?」

「……そうですね」

「授業中に寝ちゃいそうだしねー」

「ホームルーム前に起こさせてもらうので少し休んでください」

「……すみません、おねがいします」



\\\



「わ、ほんとにすぐねてるしー……」

「まぁ、いろいろあるんでしょ。星那はあんまりかまわない」


 海斗くんはすぐに眠って、動かなくなってしまった。


「何やってたんだろ?」

「(星那は配信見ていないの?)」

「え、今週見てないや。宙音のことがあったからー。もしかして、そっちで何か忙しかったりするの?」


 自動でアンケートの結果が出るわけでもない。今までも海斗くんが全部やっていたんだろう。先月もそうだったのかもしれない。その時は全然意識もしていなかったのでわからないけれど。


「あー、そういえば、カイトにありがとって言うの忘れてた」

「どうかしたの?」

「ほら、宙音がカイトの妹のカナちゃんにお世話になったみたいでー」


 海菜ちゃん。

 私はまだ会ったこともない。海斗くんは以前にあまり似ていないと言っていたけれど、どうなのだろう? 私も仲良くなれたりするのだろうか?


「そういえばさー」

「なによ?」

「今週って大会じゃなかったー?」

「……大会といえば大会だけど、小さい大会だから。近くの県の高校との練習試合みたいなものよ」


 そう、今週はそれがある。テスト期間とずれていたのは良かったけれど、うみくんの配信と被っている。しかも、月に1回しかない来月の配信ゲームの発表の日。


 発表と同時に、そのゲーム配信の一回目となる。それが視聴者参加型のものだった時は是非参加したい。特に1回目は、そのゲームを用意する期間がないこともあって、倍率が低い気がするので、今回も配信に張り付いていたかった。


 本当は大会なんてさぼりたいところだけど、まさか『推しのVtuberの配信があるので休みます』なんて言えない。


「大変だねー」

「他人事ね」

「応援いこっかー?」

「いいわよ、大した規模じゃないし。星那がきても私がどこにいるかわからないんじゃない?」

「手振ってくれれば分かるよー?」

「そんなことするわけないでしょ。あ、私ちょっとお手洗い行ってくるから」

「りょーかいー」



¥¥¥



「あ、カイト、起きた?」

「すみません、ありがとうございます」

「まだおこしてないよー」

「……そうでしたか」

「あと1分くらいだからもう一回は寝れないかもだけどー」

「いえ、ちょっと眠気はましになりました」

「そっかー」


 星那さんが一度、廊下の方に目を移した後、耳元に口を寄せてくる。


「(今週の土曜、暇だったら初華の応援行かない?)」

「(初華さんのですか?)」

「(大会あるんだってー。初華は応援とか恥ずかしがって、来ないでって言うけど、あんまり嫌がってるわけじゃなさそうだしー、内緒で応援行かない?)」

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